<第二章>

果ての島へ


 朝が来るたびに霧が押し寄せ、日が暮れると晴れてゆく。
 その奇妙な繰り返しが海流の変わる時に発生していることに気づいたのは、霧の海域に入ってから四日目のことだった。船は朝、霧の押し寄せれる時間帯には海流に逆らうようにして進んでいるが、夕方ごろになると流れはほぼ逆になる。魚たちは、その流れに乗って回遊しているらしかった。季節によって流れが変わる海ならあるが、一日のうちに変える海は珍しい。
 流れの変化が風を生み出し、ぶつかる流れの温度差で霧が生まれる。だが、流れが変わる原因は何なのだろう。
 海を眺め、日々の記録をつけながら、ルークは考え込んでいた。この航路の最後の目印である十三番目の島は、そろそろ見えてくるはずだった。霧の晴れる夜、星明りの下で方位を確かめ、遠望鏡で水平線を確認する。ほとんど凹凸のない平坦な海にはサンゴの森が広がり、昼間は奇妙に静まり返っているが、夜には魚たちが戻ってくる。
 時刻は、そろそろ夕刻。海流が変わり始めている。霧が晴れる時刻が迫りつつあるのだ。
 ルークは、船首に立って薄れてゆく霧の向こうに目を凝らしていた。距離と方角を間違えていなければ、そろそろ最後の島が近づいているはず。船の下から、ジャスパーが首をもたげた。ルークのほうを見、それから進行方向を指す。
 島だ、と言っているように思えた。
 風が吹いてくる。確かにそれは、土と木々の匂い。夕日が照らす西側の霧が薄ぼんやりと燃えるような色に輝き、一瞬、世界が燃え上がったかのような色に包まれたかと思うと、一陣の風とともに、唐突に行く手が開けた。
 そこには、小さな島が確かにあった。
 思っていたよりはるかに小さい、それでいて、どこか懐かしい―― 岩と木でできた、こぢんまりと海面に盛り上がる島が。
 「ルー君、あれ」
 「ああ」
ミズハに向かって頷いてみせる。
 十三番目の島。世界地図の端に描かれた”最果ての島”に、ついに辿り着いた。


 岩の塊が寄り添うようにしてできた島には、白い砂浜があった。
 ハーヴィ号は、その浜辺にゆっくりと停船する。ジャスパーは船の下から滑りだし、久しぶりの砂浜に気持ちよさそうに体を横たえる。ルークとミズハは、船を降りて浜辺を見回す。大型の生き物や人の気配も痕跡も全くない。浜辺の背後は切り立った崖になっているが、ところどころが段のようになっていて、上のほうまで登れそうだ。
 小さな島は、今までに通過してきた無人島とは少しばかり様子が違っていた。
 崖の途中には、たわわに果実をつけた木がしだれかかり、霧の残した湿り気を帯びた岩の間には、苔や草が生え、中には小さな花をつけているものもある。古い木の倒れた上にはキノコが生え、石の窪みには透明な水が溜まっている。人が住めそうな、というより、住んでいたように思わせる島なのだ。宵闇の迫る島を歩きながら、ルークは奇妙な感覚に囚われていった。
 ――確かにこの場所を知っている。
 「…ミズハ」
少し先を歩く少女に声をかける。
 「そこの、大きな木の影に岩穴が無い?」
ミズハは、指示された場所を覗きこむ。
 「あるよ」
ここはもう、岩の頂上に近い場所だ。岩には人工的に繰り抜かれたような穴がぽっかりと空いており、そこからは島全体が浜辺まで見下ろせた。穴の天井は高く、普通の人間なら背の高い大人でも立ったまま余裕で中に入れる。奥行きはハーヴィ号より無いくらい。
 「ルー君、ここに住んでいたの?」
 「多分…。」
ずっと昔、長年ここに住んだ感覚だけは残っている。岩の水を飲み、果実をもぎり、夜になると帰ってくる魚たちを浜辺で捕らえた。そんな暮らしをしていた一人の男が、かつて居た。その男は、確かに今も、自分の中にいる。
 岩の前に立って、浜辺を見下ろす。
 今はハーヴィ号があり、ジャスパーがごろごろしているその砂浜に、三十年前は、ハーヴィ号の先代にあたるフレール号が訪れ、グレイスとジョルジュが上陸していたのだろう。ただ、あまり細かいことは思い出せない。過去の自分と、今の自分とでは精神構造が違う。思考も異なる。たとえ断片的に記憶が残っていても、過去に体験したことの全てを再生できるわけではない。
 「いい島だよね」
ミズハは、大きく息を吸い込んで、伸びをする。
 「海の上もいいけど、ここも落ち着く感じ。」
 「うん。」
人が過ごすには陸が、土のある場所が必要だ。海鳥たちも羽根を休める時は巣のある島に戻る。ここは、広い海の上にぽつんと浮かぶ楽園なのだ。
 「今夜はここでキャンプしてみるか? 久しぶりの陸だし」
 「あ、面白そう! ハンモック持ってくるー。」
言うなり、ミズハは翼を生み出し、崖から一気に船まで舞い降りてゆく。ジャスパーが顔を上げ、ミズハと何か話してまた首を砂地につけた。どうやらジャスパーも、海の上で眠るよりは波打ち際の岸辺のほうが好きらしい。
 ルークは、振り返ってかつての仮宿だった岩穴を見上げた。
 ここで何十年も、たった一人で過ごしてきた。――孤独だったのか。だから、久しぶりに見た人間たちに付いて行こうと思ったのか…。
 自分の内側からの返事はない。だが、そう思うことにした。巨人の半身は、人とともに生きたかったのだと。


 翌朝、まだ日が昇らないうちから目を覚まさせたのは、奇妙な音と、ジャスパーの呼ぶ声からだった。
 ルークが目を開けるのと同時に、ミズハもハンモックから身を起こす。
 「何?」
 「海のほうだ」
浜辺を見下ろした二人は、思わず息を呑んだ。波が起きている。いや、波というより海全体が動いている。ジャスパーは、流されそうになる船を体で抑えながら二人のほうに向かって何かを叫んだ。
 「何だって?」
 「押し流されてる、って。…手伝わなきゃ!」
そう言って、ミズハは飛び立とうとする。その手をルークが掴んだ。
 「待て、手伝うったって、風で押し戻すわけにも行かないだろ」
 「でも…」
 「おれが行く。もうひとつの姿のほうで」
ミズハが意味を飲み込むのに、しばらく時間がかかった。
 「わかった」
ルークがしようとしていることに気づいたミズハは、翼を収めて彼の側に降り立つ。ルークは、さっきまで休んでいた敷き布まで戻り、体を横たえると外に向かって意識を集中させた。体から抜け出して、巨人の姿になるのは久しぶりだ。
 意識が体から抜け出すにつれて、視界が広がってゆく。
 霧に包まれる直前の、朝もやの海。背は島とほとんど同じ高さまで伸び、崖の上から遥か遠くまで見渡せる。流れは、島の向こうから浜辺に打ち寄せるようにして流れてくる。流されないようにするには、島の反対側の崖になっている側の窪みに係留するしかなさそうだ。
 ルークは、ジャスパーが体で抑えている船を両手で大事に持ち上げ、島の反対側へと歩いて行った。そこに船を降ろし、流されないことを確認してから振り返った時、彼は、さっきから聞こえている波音とは違う響きに気がついた。それは、目覚めを呼んだあの奇妙な音と同じものだ。滝が流れ落ちるような音。岩に打ち寄せる波ではなく、連続して岩に叩きつける流れ落ちる水の音だ。
 振り返ったルークは、霧の奥に目を凝らす。
 耳元に羽ばたきが聞こえ、肩先にミズハが降り立った。
 「どうしたの? 何かあった?」
ルークは、霧の奥を指差す。
 『音が聞こえるんだ』
言葉にはならないが、ミズハにも、なんとなく言いたいことが分かったらしい。
 「この音だね。何かが流れ落ちてる感じがする」
頷いて、足元の流れを見下ろす。魚たちが去ってゆく気配。霧が迫ってくる。海が流れ落ちているのだ。
 ――その時、言い伝えが蘇ってきた。

 ”かつて世界は平らで、海は世界の果てで流れ落ちていた”
 ”世界の端にあった、最果ての島”

まさか、と思いながら、ルークは流れてくる海のほうへ一歩、踏み出す。ミズハが飛び立ち、ルークの目の前に止まった。
 「一瞬だけ。この霧を吹き飛ばしてみる。たぶん、ほんの一瞬だけだと思うけど」
ルークは、ゆるゆるとした動作でうなづいた。今の姿なら、ルークが吹き飛ばされる心配はない。ミズハは大きく旋回し、空中に輪を描いた。羽ばたきと連動して、周囲に風の渦が生まれてゆく。一瞬の、叩きつけるような人工的な風ではない。生き物のように渦巻きながら、風は静かに波紋のように広がってゆく。まるで、ミズハ自身が小さな台風の中心になったかのようだ。
 霧が押しのけられてゆく。
 目の前に作られた風の回廊の先にルークが見たものは、交じり合う二つの海の境界線。
 『…滝だ』
意外なことに、彼方に見える大陸は、今ルークたちのいる海よりも「上」にあった。なだらかな傾斜を描き、何段もの岩の階段を滑り落ちて、海は「こちら側」へと滑り落ちている。その流れが風をつくり、ぶつかり合った流れが霧を生んでいる。
 確かにそこは、世界の果ての言い伝え通りだった。海は、滝となって流れ落ちている。ただし想像していた「滝」とは違い、こちら側が「下」だが。
 ミズハが羽ばたきをやめると同時に、霧の中に出来た回廊が閉じ始めた。ルークは島に横たわる自分の体のほうを見た。そろそろ、戻る頃合いだ。
 目を開けると、ちょうどミズハが舞い降りてくるところだった。
 「見えたか? この先の海」
 「うん。すごかったねー、どうなってるんだろう」
夜になると、流れが逆になる。ということは、砂時計のように海水が行き来しているのだろうか。それとも、逆にこちら側から海水が流れ落ちているのか。いずれにしても、ここから先は船で渡る事は出来そうにない。
 「さて、どうやって渡ろうか…」
腕組みをするルークの隣で、ミズハはハンモックにもたれかかっている。
 「向こう側に、陸が見えてたよね」
 「え? ああ。」
 「あれが今から行く大陸なんだよね」
 「多分ね」
 「意外と近かったね」
距離だけ見れば、それは確かにそうだ。
 ここからの距離は、およそ二十ケルテといったところ。霧さえ無ければ、以前ここに来たグレイスやジョルジュにも観測できていたはずの距離だ。ただし途中にある滝のせいで、船で真っ直ぐに海峡を突っ切ることは出来ない。それどころか、空でも飛べなければ渡ることは不可能だ。
 そう告げると、ミズハは意外そうな顔をした。
 「さっきみたいに、ルー君が船を持って運べばいいんじゃない?」
 「え…。」
 「ジャスパーも一緒に。駄目?」
考えたこともなかった。
 「…出来るとは、思う。」
 「じゃあ、それで決まり! あたし先導するよ。浅いとこ案内すればいいんだよね」
 「ああ。頼むよ。あんまり深いと、転んで酷い事になりそうだ」
死にはしないだろうが、船を落としたり、転んで壊したりしては帰れなくなってしまう。
 残る問題は、霧の深い昼間に海を渡るか、霧の晴れる夜間に渡るか、だった。昼間は海がこちらにむかって流れ落ちており、流れに逆らうように進まなくてはならないうえに足元が見えない。夜の方が、星明りで方向が分かり、流れに逆らわなくて済むぶん、進みやすいはずだった。暗闇の中を未知の海域に乗り出すことになるが、巨人の姿が目立ちにくいという利点はある。
 「ジャスパーにも話してみよう。あいつ、海の上を運ばれるのなんて嫌がるかもしれないけど」
浜辺に降りると、ルークはポケットから石を取り出し、海水に浸した。石の表面に青白い輝きが戻ってくる。それを見て、ジャスパーも浜辺に戻ってくる。
 「で? どうするか決まったのか」
石が海竜の言葉を翻訳する。
 「うん、今夜、向かいの大陸へ渡ろうと思うんだけど」
ルークは、さっきミズハと相談した内容を繰り返す。思ったとおり、ジャスパーは少し嫌そうな顔をした。
 「お前に運ばれる? この俺が?」
 「ごめん、でもそうしないと、ここから先は越えられそうにないんだ。海が何段かの滝になってる。少しだけ我慢してくれないかな」
 「ふん。まあ――いいけどさ」
ジャスパーは鼻をならし、不満気にそっぽを向いた。
 「ここに置いてけぼりよりはマシさ。けど、お前ら陸に上がるときは、どうせ俺のこと置いてくんだろ?」
 「え、…」
 「ごめんね、でも、そうしたいわけじゃないの。」
ミズハが取りなすように口を挟む。
 「できるだけ海から離れないようにいけばいいんだよ。あたしも、海が近いほうがいいな」
 「そうだな。あんまり内陸に入り込むと戻れなくなって危険だ。海岸近くを辿るよ。――それでいい? ジャスパー。」
再び鼻を鳴らし、ジャスパーは頭の先でルークをこづいた。海の匂いのする湿った鼻先と、ごつごつした皮膚の感触。
 「落としやがったら承知しないからな。」
 「分かってる。ぶじに海を渡れたら、よろしく頼むよ。」
太陽が水平線を離れ、島の周囲はすっかり霧で覆われている。対岸までの処理は、さっき一瞬だけ見た風景の記憶から割り出すしか無い。
 日暮れを待つ間、ルークは、大陸から続いていた滝状の流れを思い起こしていた。
 (そうか、流れ落ちてきたのか…)
海峡を隔てたレムリアにいたはずのルークが、かつてこの島にいた理由は、何のことはない。海を漂うものは、すべからくこちらがわに流されるという、ただそれだけだったのだ。


 夕闇の迫る頃、西の空にかかる霧がうっすらと赤く色づき、そして急速に暗紫へと冷めてゆく。ジャスパーが一声、甲高く合図の声を上げた。海の流れが変わり始めたのだ。
 既にハーヴィ号の準備は整っている。晴れてゆく霧の向こうに広がる夜空に向かって、半透明な体が伸びてゆく。波間にのそりと体を起こしたそれは、肉体を伴わない点を除けば、海の向こうに住む巨人そのもの。普段生活する上での本体であり、人工的に作られた器でもあるルークの体は、ハーヴィ号の中で眠っている。その船を片手で、もう片方の手でジャスパーを、そっと抱え上げる。
 「乱暴にするんじゃねーぞ!」
人間の姿の時は石の翻訳を借りなければわからないジャスパーの言葉が、今ははっきり理解できる。ジャスパーにしてみれば、他人に運ばれるのなど、生まれて間もない小さかった頃以来なのだ。

 目の前を、輝く鳥が通過していく。
 ミズハだ。翼をもつ人の姿ではなく、完全な海鳥の姿をしている。そのほうが周囲の変化がよく分かるのだと言っていた。
 『こっちだよ』
ミズハの言葉も、今はわかる。ルークは、鳥の導く方へ、ゆっくりと足を踏み出した。
 海の流れは逆転していた。
 といっても、朝ほどの激しさはない。島から大陸側へ逆流する流れは、大陸から島の方へ流れ落ちる勢いほど激しくはないらしい。そのおかげで、足元の段差が見えづらくなっている。
 『そこ、段差ある』
ミズハに指摘されてようやく、暗がりの中の岩の端に気がつく。そのまま歩いていたら、足を引っ掛けて転ぶところだ。
 抱えているジャスパーが、鼻を鳴らしてカル口をたたく。
 「気をつけろよ。俺はいいけど、船のほうはひっくり返したらお前の体もボチャンだぞ」
 『分かってるってば』
水の深さは、膝より少し上といったところ。こちら側の海も、それほど深くはない。
 ゆっくりと海を渡る巨人と鳥の姿を、霧と入れ替わるように降りてきた闇が覆ってゆく。海を渡る風が、闇の向こうの大陸の気配を連れてくる。星のきらめく夜空の下、陸地がもうすぐそこまで見えている。
 残る段差は、あと一つ。ルークは足を上げ、最後の岩の上に体を載せた。水が滴り落ちる。足元に、砂に沈み込むような感触がある。目の前は、浜辺だ。
 まずジャスパーを、続いてハーヴィ号を水面に下ろす。降ろされるや否や、ジャスパーは待ちかねたというように海水の中に体を伸ばすと、するりと船の下に滑りこんでいった。誘導の役目を終えたミズハも、一足先に船に戻っていく。ルークは、顔を上げて、目の前の浜とその背後に広がる鬱蒼とした森を眺めた。波の打ち寄せる浜辺、森の黒さ、その奥に息づく気配――。

 ”帰ってきた”

体の奥で、隠れていた過去の人格が疼いた。巨人は背をのけぞらせると、天にむかって一声、長々吠えた。その声は低く尾を引きながら風となって森をざわめきたたせ、大地に響き渡る。びっくりして、ジャスパーが首を擡げた。不審そうな顔でルークを見上げている。
 声の余韻が消えていくのを確かめるようにしばし森のほうを睥睨していた巨人の姿は、やがて薄れ、在るべき体へと戻っていった。

 体に戻ると、目の前に身支度を整えたミズハの顔があった。
 「気分悪くない? 大丈夫?」
 「ああ、心配ない」
ルークは、寝台の上に体を起こした。窓から見えるのは、さっきまで巨人の姿で見ていた森だ。だが、同じものを見ていても、あの姿の時と今では感じるものが違う。ルークの目に映るのは、鬱蒼として奥の見えない暗がりでしかない。
 ジャスパーは船を岸には近づけず、やや沖合に止めていた。デッキに出ると、ジャスパーは何か言いたそうにルークのほうに顔を近づけた。
 「なんであんなことをしたのか、って言ってる」
 「あんなこと?」
 「さっき吠えたでしょ」
 「ああ…」
分からない、としか言いようがない。
 過去、”双頭の巨人”の半身であったときの人格。今ではほとんど表に出てくることはないが、かつては、巨人の姿になった時はその人格のほうが支配力が強かった。そのせいで、ミズハを危険な目に遭わせたこともある。今は表に出てくることは滅多にないが、消えてしまったわけではない。
 「面倒なことにならないといいけど、だって。」
ミズハの通訳とともに、ジャスパーは海水の中に姿を消す。確かに、この大陸に他の巨人たちが今も住んでいるとしたら、彼らに向かって挨拶したようなものだ。ルークは、ほとんど何も見えない闇の中に目を凝らした。そこには、幾つもの気配が蠢いているような気がした。動揺しているもの、冷静なもの、気にも留めていないもの。ここは、――かつて巨人たちが暮らした地。
 「とにかく、日が昇らないと何も出来ない。今夜は、ここで夜の明けるのを待とう」
海の上ならば、寝ている最中にいきなり攻撃を仕掛けられる可能性は少ない。何かが近づいてきても、ここなら直ぐに逃げられる。
 そうして、”呪われた大陸”での最初の晩は過ぎていった。
 聞こえてくるものは聞き慣れた波の音だけ。意外なほど静かで、穏やかな夜だった。


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