チクタク

世界一高い樹の上で
僕は鳥を探していた
鳥の名前はチクタクという
黒い、尖った、
長くて硬いくちばしを持つ小鳥だ

鳥は、世界の中心にある
大時計から逃げ出した秒針
毎分60回
チクタク、チクタク動くことに
疲れて

ある日 とつぜん
翼が生えて逃げ出した

大時計はばらばらに壊れてしまった
世界の中心にある大時計
その日から
世界じゅうの時間がめちゃめちゃだ

僕は壊れた長針を持って
世界でいちばん高い樹に登った
そこだけ時間が早く過ぎて
…世界でいちばん早く過ぎて
チクタク鳥が
チクタク動いているかもしれないと
思ったから
僕の妹は世界一深い湖  こわれた時計の短針を持って
そこは時間がいちばんゆっくり過ぎて
…世界でいちばんゆっくり過ぎて
チクタク鳥は
チクタク鳴かずに羽根を休めているかもしれないと思った

時がまじりあったこの世界で
僕らは 見えない一秒一秒の中を旅していく