泉の神様

 むかし、むかし。
 人気の無いノルン山脈の奥には、若返りの泉の異名を取る、澄んだ水が湧き出ておって、気楽な神様が管理していたそうな。

 泉の神様は、泉と同じフェルニルという名前で、見た目は若いけど今年で3245歳。ときどき人間たちが泉の力を求めてやって来るけれど、それ以外の時はヒマなので、ガーデニングをしたり釣りをしたり風の音を聞いたり、わりかしのんびりと暮らしていた。

 いつからか、泉には不思議な生物が棲み付くようになっていた。泉にはつきものの、水の魔獣のようだが、泉がとても澄んでいて、あまりに邪気がないので人畜無害な存在になってしまったらしい。ちなみに分類的には両生類なので、ちょっとぬるぬるしている。
 泉の神様は、どういうわけかこの生き物が気に入ったので、ペットにすることにした。

 泉の真ん中に突き出た岩は神様お気に入りの椅子なだけではなく、いちおう意識とかあって喋ることも出来る。何しろ泉が出来た時にいっしょに生まれた岩なので、神様よりも年上だ。四方それぞれに顔があって、名前はバズ(おしゃべり)、ログ(だんまり)、クラップ(にぎやか)、カーム(穏やか)と、いうらしい。とても分かり易い。
 花崗岩は上品で物静かだが、玄武岩は陽気でおしゃべりなのだそうだ。