…これは、古えの森の物語。町のむこうに広がる、とても深い森の言い伝えだ。

 そこは、ずっとむかし、この辺りを治めていた王様の城があった場所で、何百年もたつうちに、木々が生い茂り、道も消えてしまっていた。王様の名前はオーラーヴ。だから、その森は、いつのまにか「オーラーヴの森」と、そう呼ばれるようになっていた。
 王様がどうなったのか、お城の人たちがどうしていなくなったのか、誰も知らない。
 大きな戦争があったのかもしれないし、みんな引っ越してしまったのかもしれない。
 でも、町でいちばん年寄りな占い師のおばあさんは言っていた、その森には魔法がかけられていて、お城の人たちは、今も何百年の眠りの中にいるのだと。
 絡み合う木々は、とおいむかしの妖精の呪い。
 迷いの森を抜けて、誰かが城にたどりついたとき、魔法は解けて、城も人々も、長い眠りから目覚めるんだそうだ。
 でも妖精たちは、森に人間がやって来ることを喜ばない。
 だから、誰かが森の入り口でブーツを脱いだら、こっそりドングリを入れて、いたずらするんだ。馬のしっぽを引っ張ったり、食べ物をぬすんでいったり。
 森の奥に本当は何があるのか、誰もしらない。
 オーラーヴ王様が、どうして妖精たちに魔法をかけられたのか、誰にも分からない。
 うっそうと茂る濃い緑の森の奥で、お城は今も眠りについている。だれかが、そこにたどり着く日まで…