音提供;「ふらふら工房」

カルナスの女




嵐がやって来たときに

彼女は真っ先に逃げ出した

太陽抱えて逃げ出した

けれども風は追いついて

すぐに彼女に聞いたとさ


”お前をどこから食ってやろう”


”夢から過去から心から”


彼女はすぐに答えたさ

彼女はいつでもそう言うさ



月の港に星の船

太陽抱えて夜の海

波の間に間にしらじらと

藍い火 朱い火 揺れていた

幽霊くらげの足を削って

太陽縛って夜の海

たった一人で漕ぎ出した

遠い東の地平線

島の向こうの灯台の

明かりが消えるその前に

風が吹いて船はくるくる

揺れて壊れて海の底

太陽沈んだ 海に沈んだ

それから世界は闇のまま



おばあさんは 窓辺で糸紡ぎ

くるくる回って 糸紡ぎ

糸車はからからと

くるくる回って 糸紡ぎ

そこへ女がやって来て

くるくる回して 糸をとり

窓からそのまま駆け出した

おばあさんは仰天して

火箸を持って追いかけた


”お前は一体、どこへ行く”


”北の果てから南のはてまで

一周してから戻ってくるわ”



それから女は走り続け

おばあさんも追いかけた

糸は世界をぐるりと結び

それでもやっぱり終わらなかった

いついつまでも走るだろう

糸の端っこがどこにあるのか

今じゃもう 誰にも分からない


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