素材提供:【VAGRANCY】
西風の贈り物



或る晴れた日に




ある日 ある晴れた日に

思いついて電車に飛び乗った

目的地は分からない

ただ何処かへ行きたかった


見知らぬ町が過ぎてゆく

町はどんどん遠ざかり

灰色のビルは遠ざかり

かわりに山が膨らんでいく

近づいて来る緑の風の中で

空と大地が近づいてゆく


ある日 ある晴れた日に

小さなカバン一つだけ背負って

ちいさな冒険の旅に出た

久し振りに大地と話がしたかったから

町の地面は固すぎて

くだらない話はお嫌いらしい


やがて電車は何処かに着いた

そこは、何処でもない

何処だっていい場所だった

名前の無い小さな無人駅

色づく森だけが取り囲む


線路はどこまでも続いていく

遠く、はてしなく

砂漠だって見えるだろう

海にだって行けるだろう

雪の降る国にも、暑い国にも

望めば何処にでも


昼過ぎて雨が降りだした

だけどそんなことはどうでもよかった

真っ白な曇空を見上げて笑っていた

大地は笑顔を取り戻し

空はまた つまらないことで泣くのだろう


ある日 ある晴れた日に



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