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divine


はじめての呪詛



生まれてはじめて人を憎むことを知ったのは、

あれは五月雨星の降る季節

それは輝く黄金色の星が

蒼い絶望の色に染まったときだった



雨に曇る西の空

ほのかに残る夕焼けが

かまどの残り火のようにうずくのは

埋め土の下でうずくのは



みんみんぜみが啼いていた

うらのこずえで啼いていた

大きな柿の木の下で

泥まみれの膝を抱えて聞いていた



死後の世界に永遠があるかどうかはわからないけれど

そこが天国にしろ 地獄にしろ

一緒の場所には行きたくない人がいた



誰かを嫌うということは、その人のことを真剣に思うこと

その意味では 好きも嫌いも変わらない

わたしはあの人を愛していたの

それとも憎んでいたのでしょうか



どきどきしながら

あのひとの名前を血で書いて、

なんどもなんども握りつぶした



神様、私は罪人ですか

あなたの咎を受けますか

そう思いながら 私はどの神様に祈ればいいのか知らないことに気がついた

神様はいつも

子供だから、と答えをはぐらかす



神様 子供は誰かを憎んではいけないですか

子供は誰かを殺したいほど恨んではいけませんか

子供なりの真剣な考えを

大人たちはいつも ちがう生き物のふりをしてあざ笑う



それから長い長い時が過ぎて

心の端がうずくのは

あのとき握りつぶした

わたしの心臓とあのひとの名前と

あのとき流した

わたしの血とあのひとの涙と



いま また五月雨星の季節がやってきて

堕ちた星は 二度と空へは戻れない




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