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第四十二章

アニのパピルス


おお、錫杖の大地よ。聖なる形の白冠よ、船の休息所よ!
我は子供なり。偉大なる子供なり。いま汝に挨拶し奉る。屠殺の場は汝の知れるとおりに整い、而して汝は滅びんために来たれり。我はラーにして讃美され続けたる者、タマリスクの樹の内に済む神の結接なり。此の神は二重に美麗なるものにして我とともに在り。
我はラーなり、讃美され続けたる者なり。タマリスクの樹の内に住む神の結接なり。此の神は二重に美麗なるものにして我とともに在り。

(1)我が頭髪はヌンなり。
(2)我が顔はラーなり。
(3)我が目はハトホルなり。
(4)我が耳はウプウアウトなり。
(5)我が鼻は睡蓮の花を司る女神なり。 ※男性ならネフェルテム神かと思ったが女性型なので誰か不明
(6)我が唇はアヌビスなり。
(7)我が奥歯(臼歯)はセルケトなり。
(8)我が首はイシスなり。
(9)我が腕はメンデスの雄羊なり。
(10)我が息はネイトなり。
(11)我が背はセトなり。
(12)我が男根はオシリスなり。
(13)我が筋肉はケル=アハの主なり。
(14)我が胸は偉大なる彼の者なり。
(15)我が腹と背骨はセクメトなり。
(16)我が臀部と目はホルスなり。
(17)我が太ももとふくらはぎはヌトなり。
(18)我が足はプタハなり。
(19)我が爪先は生ける鷹たちなり。

我が身体は神のものなり、トトが庇護し新鮮に保つであろう。
我は日々出でくる太陽なり、我が両腕をもて引き返さざるものなり。
何者も我が両腕を捕らえるものは無し、いかなる生きた人間も、神も、精霊も、死せる者も・・・・

我は出現せし者、進行する者にしてその名は知られざるものなり。我は昨日なり、幾百万年を眺めたる者なり。我は永遠を統べる者なり。
我は進みゆく、天の聖なる審判者の道へと進みゆく。我はヘプリ神の如く認められたり、ウェレレト冠の主なり。

<以下、だいぶ長いので省略>



体の部位とともに神の名前を呼ぶところは、その神によって身体が保護されることを意味している。ミイラづくりの際にこの呪文が唱えられた、とも言われる。体の部位と守護神の組み合わせの参考として訳出したが、この組み合わせは実は同じ「アニのパピルス」の中でも挿絵部分(表の形式になっている)では呪文本体と異なっている。

※以下は「エジプトの死者の書」(河出書房新社)の訳から。
英語資料などで別の単語が充てられている場合には横に併記した

(1)髪 ヌン
(2)顔 ラー
(3)両目 ハトホル
(4)両耳 ウプウアウト
(5)口唇 アヌビス
(6)臼歯 セルケト
(7)門歯 イシス →「首」と訳している資料もある
(8)両腕 メンデスの雄羊
(9)首 ウアジェト →「肩」と訳している資料もある
(10)身体の残り多く メレト →「咽喉」と訳している資料もある
(11)まつ毛 ネイト →「肘から腕まで」と訳している資料もある
(12)脊柱 セト
(13)胸 ケル=アハ
(14)皮膚/肉 尊敬される偉大な神々
(15)腹と背中 セクメト
(16)臀部 ホルスの目の女神
(17)男根 オシリス
(18)腰 ヌト
(19)両足 プタハ
(20)五指 サフ
(21)爪先 生けるウラエウスたち

部位分け、守護神ともに、共通する部分もありつつ違う部分もある。挿絵部分と呪文部分が別々に伝承されていたのを一つのパピルスにそのまま書き写したからこうなったのだろうが、とにかくややこしい。取り敢えずは、「この手の身体の部位ごとの守護神は、何通りか知られている」くらいで認識しておけば良いかと思う。



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