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第四十章

ラーのパピルス/ヌウのパピルスより


 ラバの呑食者を放逐するの章。勝利を得たるオシリス=ラー曰く、

1.「退け、不潔なる者よ、汝オシリスの忌み嫌う者よ。トトは汝の首を切り取れり、而して神々の群れが汝の屠殺上、汝に対し命ずることの一切を、我は実行せり。
 汝、オシリスの忌み嫌う者よ、汝は順風をもって進むネシェメトの船(※多分、"太陽の船"の夜バージョン/メセクテトの船)より退け。
 神々よ、汝らは聖なり。汝らは、オシリスの諸敵を真逆様に倒せり。ターウルの神々、喜悦して叫ぶ。
 汝退け、アヌ(※原初の水・ヌンのこと?)の呑食者よ、汝は下界に住めるハアスの神の嫌う者なり。
 我、汝を知る、汝は誰なるや、我は[この部分、欠損]なり。」


※トトが処刑人っていうのが新王国時代の解釈らしいです
※ターウルとハアスっていうのが、何処なんだか分かりません…。地下にある世界は12のエリアに分かれているので、その中のどこかかも。
※古代エジプトでは、相手の名を知ること、本質を正確に表現することは「支配する」と同等の意味を持っていた。


2.「おお、悪鬼よ、汝の顔を上げよ、我を食らうことなかれ。なぜなら、我は清き者なればなり。また、我は自ら来る時と共にあればなり。汝は我に来たらず、おお、汝、願われずして来たり、来る時の不可知なる者よ。
 我は汝の口の主なり。汝よ、退け。汝と、汝の志願も[ここの意味不明瞭]
 万歳、ハアスの石刀を持って、ホルスは汝の四肢を切断せり。汝を群れの中に滅さる。汝の結び目(?)は、ペとテプの都に住まう神々の群れの中に滅び去る。
 汝を殺す者は、ホルスの眼の形をせり。我は汝の進みつつあるとき、汝を追い返せり。
 我は汝の口の風("力ある言葉"のことだと思われる)にして、汝を征服せり。
 おお、罪を犯す者らと、強奪する者らとの呑食者よ、我は何ら罪は犯さぬ者なり。
 ゆえに、願わくば、我に対する攻撃文を記したる文書を我に引き渡せ。
 我は、主なる神々の前において何ら罪は犯さず。
 ゆえに、願わくば、汝の害を我に向けることなかれ。
 我は与う、願わくば、汝、我が命ずるところに従いて取れ。願わくば、我を掴み取ることなかれ、我を食らうことなかれ。
 我よ、生きよ、栄えよ、永遠なれ!」


▽意味解釈

前半は意味不明だが、後半になってくると、「あー、死者の審判か」…と、場面が分かってくる。オレは悪いことやってない、だから食わないで〜、という哀願の呪文のようだ。
ラバの呑食者と呼ばれているものは、おそらくアメミットかアポピスのことだろうと思われるが、アメミットであれば、トトやホルスに殺されることは無いだろうし、アポピスだとしたら、四肢がないので切断のしようがない^^;

そこで考えられる別の可能性として、ラバが時としてセト神の眷属として扱われたという事実。
ラバを惨殺することによって王(ホルス)の優位を象徴させる儀式があったのだという。

だが、この推測もやっぱり不完全で、セトは死者なんか食らわないし、オシリスに嫌われたる者ではない。
…やっぱり、いちばん可能性の高そうなのは、太陽の船や死者を食らおうとする大蛇、アポピスだろうか。エジプトの壁画では蛇に手足を描くこともあったようだし、悪者としては一番、説得力がありそうだ。



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