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第十七章

アニのパピルス、ネブセニのパピルスより


2014/03/30 追記
このページ自体は2005年に作成したものですが、色々あって調べなおすついでに以下のリンク先に書き直しました。その際、英訳(「The Ancient Egyptian BOOK OF THE DEAD」R.O.Faulkner)を参照して、異なる部分を補足しています。関連するブログエントリはこちら

青字部分は旧来の訳(大正時代の邦訳)から改訂されている部分を英訳から拾いました。

なお、日本のWeb上では「メジェド」が一個の神のように扱われていますが、実際は神名ではなく、心臓を食べるといった記述も古代エジプトのソースの中にはありません。勘違いが伝言ゲームされてエジプト展以降の日本で誕生した、最新のエジプト神話です。


この章は長い上に難解ですが、読み方が分かれば無問題。
最初の部分は、「オシリス(死者)となったxxxさんは、自らの休息の港(死者は船に乗って死後の世界へ行くので、その入り口)に達したるのちに言う、"人は各自、この世にあるうちに(死者の国の中に入らないうちに)、これらの呪文を唱えなさい。それはいいことです。唱えればアトゥム(原初の神、神々の父)のすべての言葉は、実現されるでしょう"」と、いう意味です。
そこから始まって、呪文/説明、呪文/説明、という繰り返しが続いています。

最初の「」の中が呪文です。その後に続く「しからば、これは何ぞや」が「これは何を意味するのか」という意味ですので、意味の解説(元になる神話)になります。神話ネタの解説になっているため、あるていどエジプト神話の分かる人には「ああ、もしかして、あの話?」と、想像がつくかもしれません。で、もちろん、現存しないため何を指しているのか分からない神話もあったりします。

では本文をドーゾ。


以下は、美しきアメンテト(西の国=死者の世界)にある、光栄なる下界を出でて、また、此れに入る事、また、彼(即ち死者)を慰むべき種々の形状にて、日中出現の事、また碁を弄び、室内に座する事、また活ける物として出現する事等の讃美及び頌徳の始なり。

オシリスなる書記生アニ、自ら休息の港に達したる後に曰う――、
人、おのおの、この世にある間に、この文句を読誦するは、その人にとりて福なり。もし、然らんには、アトゥムの凡ての言葉は実現されるればなり。

*** 注 死者の国に入る前の朗誦が始まります。 ***

「我は昇りつつあるアトゥムの神なり。我は唯一のものなり。我はヌウに於いて存在するに至れり。我は[欠損]元首にて、元始に昇れるラーなり。」
然らば、此れは誰ぞや。
曰く、元始めにステン・ヘネン(ヘラクレオポリス)の都において昇り、その昇る時に王の如く立てられたるラーなり。シュウ神の諸々の柱は、其尚ケメンヌ(ヘルモポリス)に住みて、高所に在りし時には、未だ想像せられざりき。

「我は大なる神にして、自ら己を生める者なり。ヌウ、即ち神として、その諸々の名を神々の群<エンネアド>に列(つら)ねし者をさえ、我は生めり。」
然らば、此れは誰ぞや。
曰く、ラーなり。ラーはその四肢の諸々の名の創造者にて、其の名はラーの随従者たる神々の形において、現在するに至れり。

「我は、神々の中に逐斥せらるることなき者なり。」
然らば、此れは何ぞや。
曰く、此は其の太陽面中に住むアトゥムなり。我は他者の云う如く、此れは天の東方地平線に昇りつつあるラーなり。

「我は昨日なり、我は今日を知る。」
然らば、此れは何ぞや。
曰く、此れは其の太陽面中に住むアトゥムなり。我は他者の云ふ如く、此れは天の東方地平線に登りつつあるラーなり。

「我は昨日なり、我は今日を知る。」
然らば此れは何ぞや。
昨日はオシリスなり。今日はラーがネブゥ・エル・チェル(オシリス)の諸敵を滅ぼし、また君主として元首としてその子、ホルスを立てんとする日のラーなり。或いは、他者の云うが如く、我らが死者オシリスと、その父ラーとの邂逅の祭日を記念し、また神々の戦いがアメンテトの主オシリスを主将として闘われたる日のラーなり。

*この部分、呪文欠落?*
然らば、此れは何ぞや。
曰く、アメンテトなり。換言すれば、オシリスがセト=アメンテト(下界の山)にて、主将たりし日に神々の霊魂の創造せるものなり。或は、他者の云うが如く、ラーが我等に与えたるものはアメンテトなり。ラーは如何なる神の来(きた)る時も起き、而して、之と戦いを為す。

「我は其処に住する偉大なる神を知る。」
然らば、此れは誰ぞや。
曰く、オシリスなり、或いは他者の云うが如く、ラーはその名なり。或いは、ラーの男根 にて、之によりてラーは自ら己を己に一致せしむ。

「我はベンヌ鳥にて、アンヌ(ヘリオポリス)に在る者なり。而して我は今あるもの、及び後あらんとするものの書巻の監督者なり。」
然らば、此れは誰ぞや。
曰く、オシリスなり。或いは、他者の云うが如く、オシリスの死体なり。或いは、他者の云うが如く、オシリスの汚物 なり。今あるもの、及び後にあらんとするものは、永遠及び無窮なり。永遠は、昼なり。而して無窮は夜なり。

「我は其の出現の時のアムス ミン神なり。願わくば、彼の二の羽毛が、我が為に我が頭上に置かれんことを。」
然らば、此れは誰ぞや。
アムス ミンはホルスなり、其の父の復讐者 守護者なり。而して其の出現は、其の誕生なり。其の頭上に在る羽毛は、イシスとネフティスの両神が、彼の保護者として、其処にあるため、出現せる時のものなり。而して、この両親は、彼の頭に缺(か)けたるものを供給す。或いは、他者の云うが如く、彼の二の目 偉大にして力強きウラエウスは、其の頭上にある、二の羽毛なり 彼の父アトゥムの額上にありしものなり

*** 注 ここでようやく死者の国に入ります。 ***

「オシリス=アニ、即ち凡ての聖なる供物の書記生は勝利を得て、其の場所に立つ。彼は其の都に至る。」
然らば、此れは何ぞや。
曰く、其の父、アトゥムの地平線なり。

「我は我が短所を悉く処分し、而して我は我が欠点を排斥せり。」
然らば、此れは何ぞや。
*この部分、説明欠損?*
それは臍の緒の切られるを意味する。

*ここの部分は英訳にはない
「曰く、オシリス即ち凡(すべ)ての神々の前に勝利を得たる書記生アニの肉体における、腐乱すべきものを切腹することなり。而して彼の欠点は、悉く除き去られたり。
然らば、此れは何ぞや。
曰く、オシリスの誕生日に彼を潔むることなり。
*ここまで

すべての悪は彼の体より取り去られる。
しからば、此れは何ぞや。

「我はステン=ヘネン(ヘラクレオポリス)にある、我が大いなる二の巣において、清められる。其れは、其処にある所の大いなる神の信者たちが、供物を為す日のことなり。」
然らば、此れは何ぞや。
「数百万年(※ヘフのことと思われる)」は一の巣の名前なり、「大いなる青き湖」は他の湖の名なり。一は天然ソーダの湖、他は硝石の池なり。或いは他者の云うが如く、「数百万年の遍歴者」は一方の名にして、「大いなる青き湖」は、他方の名なり。或いは、他者の云うが如く、「数百万年の父」は一方の名にして、「大いなる青き湖」は他方の名なり。さて、その中に住み給う大いなる神に関しては、即ちラー其のものなり。

英訳ではこうなっている→
「混沌の神」が一つの名なり、海が第二の名なり。それらはナトロンの湖と真実(マアト)の湖なり。或いは、他者の云うが如く「混沌の神の管理者」が一つの名にして、他方が「海」なり。あるいは「混沌の神の種」は「海」の別名なり。彼らの中にいる偉大なる神とは、すなわちラーそのものなり。



「我は路を通過す。我はマアティの池の主を知る。」
然らば此れは何ぞや。
曰く、其れはレースタウ(ロ・セタウ)なり。換言すれば、ナ・アルトフ(=何事も生ぜざりき場所)の南側にある下界なり。而して其れは、墳墓 オシリスの山 の北側の出入り口なり。

偖(さて)、マアティの池に関しては、其れはアブツ(アビドス)なり。或いは、他者の云うが如く、其れは、其の父アトゥムの旅行する途なり。アトゥムは神廟後にある神々の食物と滋養物とを産出するセケト・イアル(イアルの野)に赴くとき、旅行し給うなり。
偖(さて)、チェセルトの門はシュウの柱の門なり、ドゥアトの北門なり。或いは他者の云うが如く、其れは門の両扉にして、其れを経て、アトゥムの神は天の東方地平線に赴き給う時、通過し給うなり。

英訳ではこうなっている→
それは救済の島にしてアビュドスなり、また他者の言うようにわが父アトゥムが葦の原(セケト・イアル)に歩むときの道なり。我は暁の住人としてその島へゆき、聖なる門より出る。
しからばそれは何ぞや。
それは葦の原なり、神々の礼拝所を囲むようにしてある。聖なる門は、シュウ(大気の神)を支えるようにしてある。他者の言うに、その門は暗黒の世界に通じている。また他者にいわく、その門はわが父アトゥムが暁の空に上るために通過する門なり。


ここの部分のイラスト。
  ↑幾百万年の神       ↑大いなる青き湖         ↑レースタウ         ↑ウジャト

…と、いう解説になっている。ビジュアルで見ると「幾百万年の神」というのは、どうも「無限」を意味するヘフ神のことらしい。
(ヘフという言葉の意味は「百万」)
レースタウ、またはロ・セタウとは、墓の「通路入り口」。冥界へのいりぐちを指している。
要するにこの図は、「永遠を連れて死後の世界へ行くのよ〜」と、いうことを表しているのだ。
その間にいる「大いなる青き湖」が何なのかは分からなかった。


「おお、汝ら、オシリス神の前に在る神々よ、願わくば、我に汝らの腕を与えたまえ。我は汝らの中に出現すべき神なればなり。」
然らば、此れ等は誰ぞや。
彼等はラーが自ら切断を行わんとて出でける時、その男性器より出で来る血の数滴なり。彼らは フ 及び サ の 神として それらは知性と権威の神として(つまりシアとフウ?) 出現し、ラーの供奉員中にあり、且つ、日々に、また毎日、アトゥムの神に伴随す。

「それ、オシリス、即ち勝利を得たる書記生アニは、二柱の戦士(セトとホルス)の格闘の日に、一旦失われしウジャト<神秘の瞳>を汝の内に満たしたり。」
然らば、此れは何ぞや。
曰く、此れはホルスとセトが戦い、ホルスがセトによって顔に汚物を投げつけられし 傷を付けられし日なり。
またホルスが、セトの肢体 睾丸を破りし日なり。偖(さて)、このことをトトは己の指をもって成せり。

「我は空に暴風雨と震動のある際、髪の雲を揚ぐ」
「我は激怒の際、神秘の瞳より髪を上げる」
然らば、それは何ぞや。
其れはセトの右目なりラーの右目なり、ラーがその眼を発見せし時、怒り狂う。
トトは髪の雲を揚げ、而してそのラーの目を活きながら、欠けることなく、瑕(きず)なく、その持ち主に煩いなくして持ち来たれり。
或いは他者の言うが如く、其れはラーの眼なり。即ち、其れが病める時、また其れが片目の為に泣く時のラーの眼なり。
その時、トト起ちて此れを潔める。

「我は昨日、女神メヘト=ウェレト(Celestial Cow)の臀部より生まれたるラーを視る。ラーの力は、我が力なり。而して我が力は、ラーの力なり。」
然らば、此れは何ぞや。
それは天の大淵なり。或いは、他者の云うが如く、其れはラーの日々誕生の朝における其の目の姿なり。メヘト=ウェレトは、ラーの眼(ウジャト)なり。


その故に、オシリス即ち勝利を得たる書記生アニは、ホルスの随従者中における神々の中の大なる者なり。言葉は己の主を愛する者の為に語る。
然らば、此れは何ぞや。
ホルスの随従者中にある神々とは、イムセティ、ハピ、ドゥアムテフとケベフセヌフなり。

「今、汝らを敬礼し奉る、ああ、汝ら正義と真理の主よ、汝らはオシリスの背後に立ち、全ての罪と咎とを処分し、女神ヘテプ-セクスに従う所の、主権ある君らなり 悪をなせし者たちに恐怖を与え、彼らを作り保護するHerの傍らにあり。願わくば汝ら、我が汝らに来たるを許し給へ。汝ら、我が内にある、すべての罪を滅ぼすこと、恰(あたか)も汝らが、其の主、セパの随従者たる『七の霊』のためにせし如くにせよ。アヌビスは、『此れ故に、此処まで来たれ。』と命じられし日に、彼等の場所を指定せり。」
然らば、此れは何ぞや。
これらの正義と真理の主らは、トトとアメンテトの主たるアステス(=アヌビスの別名、もしくはアヌビスとオシリスの習合体)なり。正義の主なる神々とは、セトとイスデス(アヌビスの別名)、西方をすべるものなり。オシリスの背後に立つ主権ある君らは、イムセティ、ハピ、ドゥアムテフとケベフセヌフとにして、彼等は、この北空における、 大熊(座?)の背後にあり。

偖(さて)、全ての罪と咎とを処分しつくし、かつ、またヘテプ-セクス Herに随う者らは、セベクの神、およびその一群にして、是等は水中に住めり。
女神ヘテプ-セクス
Herは、ラアの眼なり。
或いは、他者の云うが如く、其れ 彼女はオシリスに随従する焔にして、其の敵らの霊魂を焼き尽くさんためのものなり。

オシリス、即ち諸々の神の供物の書記生たる、勝利を得しアニの中に存する諸罪に関しては、以上は彼が其の母の胎より出現せし以来、永久の諸主に対して其の行える一切なり。

七の霊、すなわちイムセティ、ハピ、ドゥアムテフとケベフセヌフ、マア-アテフ-フ 彼自身が彼の父であるものケリ-ベク-フ moringaの木の下にあるもの 及び、ホル-ケンティ-アン-マアティ 瞳の無いホルス (ホル・メケンティ・イルティのこと) らに関しては、アヌビスは、彼らを選任し、オシリスの死体の保護者となせり。
或いは、他者の云うが如く、彼らをオシリスの清めの場所の背後に置けり。
或いは、他者の云うが如く、其れらの七の霊とは、ネチェ-ネチェ(Nedjehdjeh)、アアト-ケトケト(回転上強きもの?)(Aked-ked)、アネルタア-ネフ-ベス-フ-ケンティ-ヘフ(その焔の中にありし者に焔を与えず?)、アアク-ヘル-アミ-ウンヌト-フ(彼を彼の家の中におくもの?)、テシェルマアティ-アミ-ヘト-アネス(アネスの家における 赤いリネンの家における赤眼者?)、ウベス-ラ-ペル-エム-ケト-ケト(進みつつ退く炎の如き顔の者?)、及びマアア-エム-ケル-アン-ネフ-エム-ル(暗中に見、日中に齎す?)等なり。主権ある君らの長にして、ナ-アルト-フにあるものとは、ホルスすなわち、其の父の復讐者なり。
この法廷における頭、彼の名は、「偉大なるものを征服せしもの」(*多分ここがナ=アルト=フ)である。

「此れ故に、此処まで来(きた)れ」と命ぜられし日に関しては、其れは、「然らば此処まで来(きた)れ」という、ラーのオシリスに対する命令を指す。視よ、願わくば、此の言葉がアメンテトにおける我にも命ぜられんことを。


ここの部分のイラスト。
   ↑1        ↑2       ↑3        ↑4         ↑5         ↑6         ↑7
七人います。それぞれ御名前を左上に書いてあります(左から読むこと)。
…が、名前の部分をどう読んでも、ここでのカタカナ表記と違うんスよ。読みやすそうなところで5柱目、
フラミンゴはデシェル(赤)、眼の文字はイリとかイルト。最後に神の決定詞。アネスだのマアティだのはどっから出てきたんだろう。
と、いうわけで、カタカナ名はもしかしたら、このイラストにない文章も読んでいるのかもしれず、少々疑問が残る…。




「我は聖なる霊魂にして、即ち聖なる双神の中に住する者なり。」
然らば、此れは何ぞや。
其れはオシリスがドゥアトに赴き、其処にてラーの魂に逢いし時のオシリスなりそれはメンデスに入るときのオシリスなり。
其処にては、甲なる神は乙なる神を抱擁し、而して、聖なるニの霊魂は、聖なる双神中に出現す。 彼はラーの魂の中に見出され、両者は互いに抱擁される。聖なる彼の魂は始まりの中に来る。

<ここから下はネブセニのパピルスからの引用になるため、文中の人物名「アニ」の部分が「ネブセニ」に変わります。>

聖なる双神に関しては、彼らはホルス、すなわち父の復讐者と、オシリス、すなわち暗き地に住まう者 瞳のないホルス(ホル=メケンティ=イルティ)なり。或いは、他者の云うが如く、聖なる双神中に住まう二重の聖なる霊魂は、ラーの霊魂と、オシリスの霊魂 となり。或いは、他者の云う如く、其れは、シュウの中に住む霊魂と、而して、テフヌト ヌトに住む霊魂となり。而して、この二つは、ドゥアトに住むメンデスにある、二重の聖なる霊魂なり。

「我は偉大なる猫にして、ネプ-エル-チェルのすべてを統べる者の諸敵が滅ぼされたる夜に、ペルシャ樹イヘリオポリスにあるイシェドの木にて奮戦したるものなり。」
然らば、此れは誰ぞや。
雄猫はラーそのものなり。而して彼は、  シア(認識)の神の、彼に関する言葉ありし為に、「マウ(=ネコ)」と呼ばるる。すなわち、シア(認識)の神云う、「彼は、彼が作りしものに似(マウ)たり」と。かくして、彼の名は「マウ」となれり。
或いは、他者の云うが如く、セブ ゲブ(大地の神)の所有物をオシリスに移せしものは、シュウ(大気)の神なり。

アンヌ ヘリオポリスにおける、ペルシャ樹イシェドの木の側の奮戦(?)に関しては、其れは無数の謀叛を企てし子等、其の行いに対し、罰を受けし時のことを指す。
戦いの夜のことに関しては、是らの文句の言う所は、無効の謀叛を企てし子ら、天の東部に侵入し、それが為に、天と全世界とに、戦いの起こりし日のことを指す。

「おお、汝、汝の卵にある者よ、すなわちラー、汝は汝の太陽面より輝き、汝の地平線に上り、而して天の蒼穹の黄金の如く輝き、また、神々の中に比すべきものの無きが如くに輝く。汝は、帆を上げてシュウの柱、即ち空を渡過し、汝は口より焔の疾風を発し、汝は二の陸地をして、汝の光線を以って赫々たらしむ。願わくば、汝、敬虔なるネブセニを其の形の隠れたる神より救え。其の眉が、豫(あらかじ)め、定められたる滅亡の夜における罪人の裁かれる夜にある、大秤の両腕に似たる神より救え。」

然らば、此れは誰ぞや。
其れは、アン-アア−フ、すなわち、その腕をもたらす神なり。 * 英訳版ではここがない
「予定の滅亡の夜」に関して、其れは、有罪者の焼かるる夜なり。悪者の、断頭台に滅ぼされる夜なり。霊魂の屠殺せらるる夜なり。

然らば、此れは誰ぞや。
其れはネム シェセム、すなわちオシリスの斬首者なり。或いは、他者の言うが如く、其れはアーペプが一の頭にマアト(即ち、正義と真理)を載せて昇る時の、其れなり。或いは他者の言うが如く、ホルスが一の頭に正義と真理とを戴き、一頭に邪悪を戴き、双頭者として昇る時の其れなり。
彼は邪悪を行う者の上に邪悪を与え、正義と真理とに随う者の上に正義と真理とを与える。或いは、他者の言う如く、其れは大ホルスにして、セケム(レトポリス)に住まう者なり。或いは、他者の言うが如く、其れはトトなり。或いは、其れは他者の言うが如く、バステトの息子のネフェルテムなり。或いは、他者の言うが如く、其れはセフトにして、ネブ-エル-チェル統べてを統べるものの諸敵の行動を妨害するものなり。

「願わくば、汝、勝利を得たる書記生ネブセニを、諸の看守者より救い給え。看守らは屠殺刀を有せり、また、残忍の指を有せり、またオシリスに随える者らを殺せり。願わくは彼等をして、我を支配せしめざらんことを。願わくば我をして、彼等の刀下に陥らしめざらんことを。」

果たして然らば此れは何ぞや。
其れは、アヌビスなり。而して其は、ケント アンマ-アチスの形したるホルス瞳のないホルス(ホル=メケンティ=イルティ)なり。或いは、他者の言うが如く、其れは主権ある君らにして、己の兵器の働きを妨害する者らなり。或いは、他者の言うが如く、其れはシェニウ室(ラーの敵を拷問する部屋らしい)の首領らなり。* ここの部分は英訳では、「統べてを統べるものの諸敵の行動を妨害するものなり、宮廷の内科医なり。」


********
注: 調べた範囲では、日本で「メジェド」というキャラクター化されている存在が登場する箇所は、以下のパラグラフのみでした。古代エジプト語では「メジェド」と読めますが、神名(固有名詞)ではないため、英語版では「打ち倒すもの」という意味を取って「smiter」と置き換えられています。
********

「願わくば、彼等の屠殺刀をして、我を支配せしめざらんことを。願わくば、我をして彼等の残忍の機械下に陥らしめざらんことを。何となれば、我は彼等の名を知ればなり。而して我は、オシリスの家に住まう彼等の中に居て、己の眼よりは光を放ちながら、しかも他には見らるることなきマアチェトなる者 打ち倒すもの(ここがメジェドという単語)を知ればなり。彼は天を巡回するに、己の口より出づる焔を着用し、ハピに命令しながら、しかも他に見らるることなし。願わくば、我をしてこの世に於いてラーの前に強からしめ給わんことを。願わくば、我をして幸いにオシリスの前に港に到着し得んことを。願わくは、汝等の供物をして我に欠くるところあらざらしめよ、おお、汝ら、この祭壇を司る者よ、何となれば我はケペルの著書に随いて、ネブ-エル-チェル全てを統べるものに随う者等の中にあればなり。我は鷹の如くに飛ぶ。我は鵞鳥の如くに飛ぶ鳴く。我はかつて、蛇の如くに女神ネヘブ-カを殺せり蛇の神ネヘベカウのように永遠を過ごす。

然らば、此れは何ぞや。
己の祭壇を守る者らは、ラーの眼の如く、また、ホルスの眼の如し。


******
注: 以下に出てくる"他には見らるることなき神"は「顔がイヌに似て肌が人の如き見えざるもので、死者を傷つけるもの」である恐ろしい神のようです。ここにはメジェドに該当する単語はありません。ラー・アトゥムに、その恐ろしい神から救ってくれるように祈願している呪文になります。
******

「おお、ラー=アトゥムよ、汝は大いなる宮の主なり。汝は全ての神々の中の元首なり。(生きよ、栄えよ、永遠なれ)

汝願わくば、勝利を得たる書記生ネブセニを、其の面は猛犬の其れに似、其のは人間の其れに似、死者を養い、焔の湖の入り江を注視し浮かび、死者の肉体を食らい、心臓を飲み統制し汚物を発射して、傷を与え、しかも他には見らるることなき神より救いたまえ。」

然らば、此れは何ぞや。
数百万年の無限の貪食者」は彼の名なり。(※アポピス?) 而して彼はアアトウェネトの湖に住す。焔のアアトに関しては、其れはシェニウ室に接近せる、アンルト-フに在るところのものなりNarefと側近の館との間にあり。其処を歩まんとする不潔の人は、屠殺刀の中に落つ。或いは、他者の言うが如く、その名は「マアテス」「鋭きナイフ」なり。而して彼はアメンテトの門の看守なり。或いは、他者の言うが如く、彼の名は「ペパ」ババイなり。而してアメンテトの入り江を看守せる者は彼なり。或いは、他者の言うが如く「ヘリ-セプ-フ」彼自身の事務を成す物(?)は彼の名なり。

「万歳、恐怖の主、北と南との地の二つの地の首領よ、汝は赤き地の主にて、屠殺墓を準備し、かつ内臓を食らふ!」
然らば、此れは誰ぞや。
アメンテトの入り江の看守なり。其れは全ての屠殺物の貪食者たるオシリスの心臓なり。二重冠は喜びもて、ステン-ヘネン(ヘラクレオポリス)の主としての彼に与えられたり。

然らば、此れは何ぞや。
「心の喜びもて二重冠を、ステン-ヘネンの主として授けられし彼は、オシリスなり。彼は世界一致の日(※上下エジプトの統一日)に、ネブ-エル-チェルの全てを統べるものの前にて、神々を支配することを命ぜられたり。」

然らば、此れは何ぞや。
神々を支配することを命ぜられたる彼は、イシスの子(ホルス)にて、彼は其の父オシリスの代わりに支配すべきことを命ぜられたり。「世界と世界一致の日」に関しては、世界とオシリスの棺中にて相一致することとなり、而してオシリスはステン-ヘネンに住まう「霊魂」たり、肉と酒との授与者なり、邪曲の撲滅者なり、永久的通路の案内者なり。
然らば、これば誰ぞや。
其れは、ラー自身なり。

「願わくば汝、勝利を得たるオシリス=ネブセニを救いたまえ。

<ここから再びアニのパピルスに戻ります>

霊魂を運び去る者、心臓を食らう者、廃物を食う者にして、暗黒の管理者たり、セケル舟の住者たる大神より(英訳ではここはない)救いたまえ。罪に住する者は、彼を恐る。」
然らば、此れは誰ぞや。
其れはスチ セトなり。或いは、他者の言うが如く、其れはスマム-ウル 野生の雄牛にて、セブ ゲブの霊魂なり。

「万歳、汝の舟中に於けるケペルよ、神々の二重の群は汝の身体なり。願わくば汝、勝利を得たるオシリス=アニを看守より救いたまえ。彼等は心配を与える者なればなり。彼等はネブ-エル-チェルの神 全てを統べるものに選ばれて彼を保護し、彼の敵に桎梏(しっこく)を施さんとする者なればなり。彼等は屠殺場にて屠殺を行わんとする者なればなり。彼等、看守の補足は之を免るるに由なし。 願わくば、彼等の刀を揮(ふる)って我を刺すなからんことを。願わくば、我をして彼等の拷問室処刑場に陥らざらしめんことを。我は処刑場に入らず、彼らの魚とり網には捕らわれず。神々の好み給わざることを我に為さしむるなかれ。 我はメスケトの中にて、潔(きよ)きものなればなり。数塊の、サフランの花タネネトに於ける彼に齎されたり。」 なぜなら我は進み、銀河に浴し、ファイアンスの食物をチェネネト女神の礼拝所にて与えられたり。

然らば、此れは誰ぞや。
曰く、其れは其の舟中に於けるケペルなり。其れはラー自身なり。審判を与える看守者たちに関しては、彼等はイシス及びネフティスなる、太陽を崇める二頭の 狒々の姿をしたるなり。神々によりて忌み嫌わるるものに関しては、彼等は邪悪と虚偽となり。而して、メスケト 銀河の中にある潔(きよ)めの場所を通過したる者とは、アヌビスなり。アヌビスは、オシリスの内臓の含有する箱(※カノポス壷のこと)の背後にあり。数塊の、サフランの花をタネネトにファイアンスの食物をチェネネトの礼拝所に齎したる者とは、オシリスなり。或いは、他者の言うが如く、タネネトにおける数塊のサフランの花とは、天と地なり。或いは、他者の言うが如く、彼等はシュウにて、シュウは即ち、ステン-ヘネンにおける、二の陸地(※二つの国、上下エジプト)の結合者なり。
サフランの花ファイアンスとは、ホルスの眼なり。而してタネネトはオシリスの埋葬者なり、アトゥムは汝の家を建て、而して二重獅子神は汝の住所を築けり。視よ、薬品は齎さる。而してホルスは潔め、セトは結合す。セトは潔め、ホルスは結合す。

** ここで死者は試練を通過して神々と一体化 **

「オシリス即ちオシリスの前に勝利を得たる書記生アニ、この地に来れり。其の両足を以って、之を所有することとなれり。彼はアトゥムなり。而して彼は汝の都にあり。」

*英訳だとここ以下がほぼ丸ごと違っている。
*底本の違いかもしれない。
*一致する部分だけ修正。

「おお、その口は輝き、その頭は動くところのレフよ 二頭のライオン(ルウティ神=地平)よ、汝帰り来れ。汝、彼の力より帰り来れ。或いは、他者の言うが如く、『汝常に監視して、しかも不可視なる彼より帰り来れ。』オシリス=アニは安全に保護せらる。彼はイシスなり。而して彼は其の上に散らし覆われたる彼女の毛髪もて、発見せらる。我は彼の額に其れを払い去れり。彼はイシスの胎に孕まれ、ネフティスを父として生まれ来たれり。而して彼等は、其の断絶すべきものを皆、彼より断絶せり。」

「恐怖は汝の後に随い、震駭(しんがい)は汝の両腕の上にあり。汝は数百万年の間、万国民の腕によりて抱擁せらたり。人類は、汝の周囲を巡回す。汝は、汝の諸敵の仲介者を撲滅し、而して汝は暗き力の双腕を掴む。二人の姉妹、すなわちイシスとネフティスは、汝の悦楽求め汝ら与えたる。汝はケル-アアハ(Kheraha)に在る所のもの、及びアンヌ(ヘリオポリス)に在るところのものを創造せり。神々はみな汝に怒る、これ汝は非常に偉大に、且つ恐るるべきものなればなり。汝は神々を呪う人に凡て復讐し、而して汝は矢を射出す。汝は、汝の意志に随いて生活す。汝は焔の貴婦人、ウアジェトなり。災いは、自ら汝に反対するところの人に来る。」

然らば、此れは何ぞや。
メンフに授けらけし、 形に於いて隠さるヘメンの腕」は 魚とり網の名なり。「彼は己の手にあるものを見る」はクエラウ 嵐の雲の名なり。或いは、他者の言うが如く、断頭台の名なり。其の口の輝き、其の頭の動くライオンとは、オシリスの肢体 男性器なり。或いは他者の言うが如く、ラーの肢体 男性器なり。「汝は汝の毛髪を散らし、而して我は彼の額に其れを払い去れり」とは、イシスに関して言えることなり。イシスは彼女の毛髪の中に隠れ、而して彼女の毛髪を己の上に引き寄す。ウアジェト、即ち焔の貴婦人とは、ラーの眼なり。



以上、言葉が古いのでなんのこっちゃわからない人も多いと思いますが、現代語に直すと荘厳さがなくなるのでそのままお楽しみください^^; 「二重の」とか「数塊の」とかあるところは、複数形が使われていたのでそのように訳されてるんだと思ってください。「7」や「2」など、数字の指定がない時は、漠然とした「複数」という概念です。



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