主な称号
真実<マアト>の領主、永遠の主人、永遠に美しきもの
主な信仰
死しても再生する大地のサイクルと、生命の象徴。また冥界の王。死者であるため、手足をぴったりと体につけ、白い布をまとったミイラのような姿で表される。頭に被っているのは上エジプトの王冠「白冠」である。また持ち物としてはファラオの装備品である王勺と殻さお、またはジェド柱とウアス杖などを手にしている。
もとは豊穣神だったのが、やがて冥界神としての属性も備えるようになった。冥界神=地下に住む神が、豊穣と結び付けられるのは、緑は大地の中から芽吹くからである。豊穣神であるため、体は緑色で描かれることが多い。
弟セトに殺され、体をバラバラにされて捨てられたり、そのあとミイラになって復活したりと色々ハードな神人生を送った方。エジプト史上最初のミイラともされ、まさにエジプトを代表する神の一柱である。
●冥界の王として
「死者の書」への登場回数No.1、必ず出てくる神様。
エジプト史上、最初のミイラとされ、死者はオシリスと同化することによって第二の生を歩むことが出来るとされていた。そのため、コフィン・テキストや死者の書などでは、死者は「オシリス・○○」と呼ばれている。名前に「オシリス」をつけると戒名になる、そんな感じのシステム。
オシリス登場シーンとして有名なのは、「死者の書」125章付近の死後の審判のシーンだろう。
下の図は、審判にパスしたあと死者がオシリスに謁見するシーン。背後に立つのはイシスとネフティス、正面のロータスの花の上にいる4柱の小さな神様は「ホルスの息子たち」と呼ばれる神、ハピ、イムセティ、ドゥアムテフ、ケベフセヌエフである。謁見に先立つのは有名な天秤で心臓の重さをはかるシーン。
このように、審判によって「声正しきもの」と認められた死者は、オシリスの前に出て挨拶することを許され、オシリスの守護する死者の楽園に入ることを許される。地上の生ける者たちの王がホルスなのに対し、オシリスは地下の死者たちの王なのだ。エジプト神話版のエンマ様ともいえる。
太陽神を頂点とする現世の王権に纏わる神話とは別に、オシリス信仰は民衆にも広まっており、逆に太陽信仰が衰えた後も長く続いていた。どんな権力者も、死は怖いもの。ラーやアメン、ホルスといった生きてるときの神様とは別格なのである。
●豊穣神として
毎年、農作業の始まる季節に、大地の再生サイクルを再現する祭りが行われた。
各地に、オシリスを祭る神殿「オシレイオン」(ギリシア語名称)が建てられ、こ原初の丘を模して作られた小島に石棺を置く「オシリスの墓」と呼ばれる儀式的な墓が作られた。そこでオシリスの棺に納められた枯れた作物を、新たに芽吹いた植物と取替えるという儀式である。また、安定を意味するジェド柱を建立し大地の恵みが安定することを祈る。やってる内容としては、日本の豊饒祭と変わらない。
有名なものではアビュドスのセティ1世葬祭殿の裏手にある「オシレイオン」があるが、現在では地下水位の上昇によって半ば水没してしまい、入ることが出来ない。
ワァイ水が豊穣の緑できれいだぞー。はしごの先は立ち入り禁止(´・ω・`)
奥に遊歩道があるから昔は入れてたんだろうなあ…。壁画近くで見れなかった残念。
また、墓の中にオシリスを模して穀物を埋め込んだ人形を入れ、死者の再生を祈願するという風習もあった。種が芽生えること=再生。これは、「穀物ミイラ」として知られている。
神話
・王位を狙う弟・セトによって殺害され、その後、死者の王として復活するくだりの神話は省略。>>詳しくは、
エジプト神話ストーリーでどうぞ。
・太陽神話とは別に、オシリス神話群とでも言うべき冥界に関する世界観が存在する。その中心にあるのが「死者の書」など葬祭に関するテキストだが、時代が進むごとに概念が変わったり複雑化したりしていき、分量も膨大なため全てを網羅した資料というものはない。
・オシリスの治める死後の楽園は「セケト・イアル」(またはイダル野)と呼ばれており、名前は葦の原を意味する。ナイル河岸に沢山生えていた葦の水辺のイメージが、古代エジプト人にとっての彼岸だったようだ。
・大地の神ゲブと、天の神ヌトの間に生まれた兄弟たちの長男であり、一年の最後にくっついた「予備日」の最初の一日を守護する神でもある。
聖域
主にアビュドス、下エジプトのブシリス。
その他、オシリスの聖域が作られた場所は多い。
DATA
・所有色―緑、黒
・所有元素―土、水
・参加ユニット―冥界三柱神<オシリス、ソカリス、プタハ>、ご家族<オシリス、イシス、ホルス>
・同一化―ギリシア時代に入ってからゼウス
・神聖動物―なし
・装備品―上エジプトの王冠・白冠、フラジェルム
・関係づけられた樹木―柳
◎補足トリビア◎
神話の中で、弟セトによってバラバラにされたというオシリス神だが、その体のパーツが流れ着いたとされる場所は以下の町である。
・アビュドス →頭部。オシリスの墓はここにあると信じられた。ミイラづくりの神アヌビスの守護地でもある。
・ブシリス →背骨。町の標章はジェド柱であり、背骨に見えなくも無い。
・アトリビス →心臓
・ビガ、エドフ →足
その他の川沿いの町についても体の一部の所有を宣言していたかもしれないが、はっきりしない。仏舎利状態(笑)
なお、アビュドスにある初期王朝時代の
ジェル王の墓は、後世にオシリスの墓と誤解され、多くの巡礼を集めることになった。
◎補足トリビア2◎
2004年に打ち上げられた欧州宇宙機関 (ESA) の彗星探査機ロゼッタに搭載されたメインカメラの名前は「オシリス」である(400万画素)。
なお、この探査機ロゼッタは名前の由来が「ロゼッタ・ストーン」、子機の名前が「フィラエ」、彗星上の着陸予定地点を「アギルキア」など、エジプト名称にこだわったエジプトファンも耳ピクなモノとなっている。
[>その他参考
NASAの「OSIRIS-REx」について
◎どうでもいいネタ◎
絶対に笑ってはいけない冥界会談 オシリス×ハデス