Menu

ルクソール西岸(2) ラメセウム、貴族の墓


ルクソール東岸から西岸へ渡るフェリー乗り場からは近いが、王家の谷からラメセウムまでの道は、遠い。あの道を自転車で走れといわれたらちょっと泣く。そりゃあ、道はまっすぐだし、地平線まで続くかのような見晴らしのいい道だけど、人が居なさすぎ、お店も無し、休憩できそうな日陰を探すことすら一苦労。道を外れたら遭難しかねない…。ありていに言うならば一人キャラバン状態で次の遺跡を目指すことになる。

↓道、こんなんです


アメリカ大陸の中央あたり、こんな風景があった気がする。
自転車で王家の谷を目指す人は、帰り道用の体力ゲージの残量にお気をつけ下さい。


ラメセウムは、あまり団体客が来ないところなのかもしれない。行った時は完全貸切状態。その後、1時間くらい誰も来なかった。

↓誰もいないので調子に乗っている図
ファラオのおみ足。

古代に石が運び出され、巨大なラメセス像も地震で像も倒れてしまい、今残っているのはほんのわずかな部分だけだというのだが、行ってみるとかなり保存状態がよく、十分楽しめる。



見えているのは、左から「正面入り口」、「第二中庭」、オシリス像の立つ「列柱室」。
奥には「天体の間」があるが、そこから先は遺構だけで上部が無い。

↓神殿のいちばん奥。


列柱の間の天井には、ほんとうにうっすらと、だが、翼を広げたスカラベが描かれ、美しい柱頭の模様が残っている。



エジプトのほかの遺跡と同様、この遺跡も、一部が修復中。そして神殿の外側には、かつて神殿の一部だったが今は崩壊したまんまになっている山のような石積みが無造作に転がっている。ところどころ、カルトゥーシュやヒエログリフが見え隠れしている。



その向こう側は、じかに畑。さとうきび畑。
たまに、畑を越えてヤギが迷い込んでくる…。平和だ。


その後は、すぐ近くの貴族の墓へ。
ラモーゼの墓は、ここで一番大きいのだという。ツタンカーメン王墓より、実は立派かもしれない。



墓の内部には、何度か建造計画が変更された跡があり、落とし穴かと思うような縦穴もあった。天井の石が落ちているので、中はとても明るい。

…楽しみ方としてはかなりズレているが、ラモーゼはアクエンアテン時代までテーベ市長を勤めた人。未完成とはいえ、墓の中には浮き彫りのアテン神が。生アテン様ですよ生アテン様。
うわああアテンだ手多いマジで多い!! とか激しく興奮して隣にいた白人カップルにヒソヒソされたのは内緒。いやでもアテンって、あんまり見られないから!


その横にあるウシェレトの墓は、墓荒らしに遭った後、キッチンとして使われてしまったらしい。薄暗い墓の内部に入ると、煤だらけの顔でこっちを凝視している墓の持ち主夫妻の坐像があって、少しギョッとする。どうやら夫妻のひざの上あたりがちょうど火を起こすのに都合よかったらしく、そのあたりが真っ黒。

墓の内部は夫妻が好きだったんじゃないかと思われる、カモや果物といった食べ物の絵で埋め尽くされていた。キッチンに使われたことは、良かったのか、悪かったのか。

王たちの墓との違いは、神様があんまり出てこない! ということ。
やはり庶民は、自分の墓に有名どころの神様をお招きするだけの権限がなかっのか。これでもかというくらい、イシスやオシリス、トト、アヌビスといった神々を揃え、仲良く並んで語り合っている姿などを描いて権威をアピールしていた王たちの墓にくらべ、日々のつつましい暮らしの風景が多くて和やかだ。

貴族や庶民たちの多くは、自分たちの名が未来永劫に渡って残ること、あがめられることは、期待していなかったのかもしれない。立派な墓を作ったのは、現世の幸福が、あの世でも出来る限り長く続かんことを願うため…。 そんな気がする。



この貴族の墓付近には、小さな村がある。かつて墓泥棒で生計をたてていたとして名高い(悪名高い?)クルナ村だ。強制的な移住が始まっているらしいが、まだ、ぽつぽつと住んでいる人がいる。

ここで聞いた「セブンイレブン! コーラ!」は、きっと忘れることはないだろう。お店の入り口に「セブンイレブン並みの品揃え」と、漢字まじりに書いてあった。それを誰に書いてもらったのか、そこには何か隠された人間ドラマがあるに違いない?!


▲top