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ルクソール西岸(1) 王家の谷


ルクソール西岸は広い。とてつもなく広い。
遺跡も多いので、とても一日二日では見て回れない。だから、今回は見て回れたあたりだけのレポートということになる。

ルクソールはナイルの東側=日の出の方角 が、古代の首都・テーベ。西岸は、墓と葬祭殿、一部は王宮。早稲田の発掘隊が発掘していた「マルカタ王宮址」も、西岸にある。(…だが、誰に聞いても知らないっぽかったので未アタック。ワセダ・ハウスはトラベラーズインフォだと思われていた…。)

西岸の一番目立つところにあるのがハトシェプスト葬祭殿。東岸からでも、目のいい人はうっすらとその威容は見える。それくらい、高い場所にある。

↓朝もやの中の西岸。早朝飛行を楽しむ気球が幾つか見える


ハトシェプスト葬祭殿は、1997年に起きた乱射事件の舞台となった場所。逃げ場所のない、だだっ広い空間に神殿がどーんと建っているだけだ。

↓神殿の後ろは、こんな崖。この崖を越えた後ろが「王家の谷」


ここはすさまじく眩しい。サッカラの階段ピラミッド前と同じく、視界に全く影がないという状態のため、サングラスが無いと辛い。
神殿へと続くスロープが天国への階段に見える…。

早朝にアタックするか、夕方をお勧めする。日中は一歩進むごとに体力ゲージがわずかずつ減っていきそうな予感がする。

神殿の中は、そう広くは無い。通路もかなりシンプル。
元々、ハトシェプストの業績を消すために後世に図が削り取られ、アクエンテンがアメン神を目の仇にして破壊し、さらにコプト教徒たちが移り住んできて神像を壊してしまった。ハトシェプスト葬祭殿に至る崖にぽつぽつと開いている穴が、かつてコプト教徒たちの住んだ家の址なのだという。(よく見ると、入り口に十字架が刻んである穴もある)

ここの隣にあるネブヘペトラー・メンチュホテプの葬祭殿は、復元されず(出きず?)、破壊された岩の山になっている。ハトシェプスト葬祭殿のテラスから見下ろすと、かすかに神殿の輪郭が分かるくらいだ。





続いて、王家の谷。
どれでも3つの墓に入れるチケットは、一緒に、王家の谷入り口までのトレイン・チケットも購入しておくとよいようだ。トレインといっても、ディ●ニーランド等の施設でよく見る四輪駆動のアレですが。

地図で見てあんまり距離がないからといって、トレイン・チケットをケチるとあとで泣く。王家の谷周辺は坂道になっていて、傾斜がけっこうある。おまけに周囲は砂漠。

徒歩で王家の谷を目指している観光客も何人か見かけたが、正直、1リットルのペットボトルを背負って砂漠を歩くのは、たとえ体力に自信があってもお勧め出来ない…。同じ理由で自転車も無理だと思う。

↓朝は涼しいが、太陽が昇ると日陰ゼロに。


今回、どーしてもツタンカーメン墓に入りたかったので、観光客の少ない早朝から活動を開始。谷の朝は驚くほど涼しい。が、数時間するうちにあっという間に厳しい日光に曝されるになる。

ツタンカーメン王墓へのチケットは、トレインを降りた後、王家の谷入り口近くのチケット売り場で購入。人数制限のあるチケットだったが、無事にゲットすることが出来た。

↓頑張りました。



ツタンカーメン墓は、休憩所のまん前だ。



入り口でカメラを預け、「写真はダメだよ。OK?」と念を押されながら入る。床には板が張られ(なぜかネズミがいて)、あっけなく前室にたどり着く。手すりが作られ、観光客は前室の狭いスペース以外は身動きがとれない。

ラメセス1世、3世を見てから入ると、確かに狭いと感じる。壁の装飾も少なく、棺の置かれた埋葬室(前室との壁は完全に取り払われている)の壁に描かれた狒々も、それ自体は美しいが、ややスペースが開きすぎ。ビッシリ書き込む時間的な余裕もスペースも無かった、といった感じだ。

ただ、逆に他の王の墓が立派過ぎるのであって、「このくらいで、いいんじゃないかな。一人の人間としては…」とか、思ってしまう。まあ、平民的な発想です。

墓の中にはツタン様ご本人が寝ていらっしゃいました。近い、近いよ。手すりあるけど30cmくらいの距離で見られるよ。蛍光灯で横から照らされてるのが何ともいえないけど…。

ミイラはかなりしょんぼりしているように感じられた。カイロで見た他の緒王たちのミイラと比べても、迫力負け。一人だけ自分の墓の中にぽつねんと残されているので、親戚一同にハブられているかのようです。哀。
いつもお世話になっているのでご挨拶がてら手を合わせて黙祷。相手は仏教徒じゃないだろという野暮なつっこみは無しで。

ツタンカーメン墓は、2008年5月から閉鎖の予定だと聞いた。
今後再び開かれるときが来るかどうかは分からないが、値段に対する見返りは、目の前にある少ないものにどれだけの思い入れがあるかに因ると思われるため、ミーハーで見たいだけなら敢えて挑戦する意味はないだろう。


王家の谷は、実はかなり広い。墓もたくさんあり、一番奥の墓まで行くと、けっこうな時間がかかる。じっくり見て回る人でないと、奥までは行かないだろう。
手前の墓はツアー客でごったがえしているので、敢えて奥の墓を狙うのもアリかもしれない。また、各墓の入り口には、墓の中の構造と見所などを英語で紹介している看板があるので、それらを眺めて、どれに入るか決めるのもアリだと思う。


↓王家の谷を見下ろす、ピラミッド型をした山。


ピラミッドは、死者にとっての墓標のようなもの、天へ昇る目印のようなものだったと考えられている。この場所が「王たちの墓所」として選ばれたのも、このピラミッドに似た形の山があったからだといわれる。

山はのちに神格化され、「静寂を愛するもの」メルセゲル女神となった。
今も昔も、美しき山の女神様は、死者の都を見守っている。


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