大神殿のナイショ話

2号館出張版-北の国から’2002-

[4]


 その頃。トトとコンスは、ロキさんを連れて、ネクベト様の待つ聖都ネケブに戻ってきていました。

 ネクベト「遅かったな、トト。何かあったのかと思ったぞ」
 トト「あぁハイ、すいません。途中で話し込んじゃって。」
 コンス「でもコイツ、けっこう面白いんだよー。悪い奴じゃないっぽいぜ」
 ロキ「……。」
 コンス「おい?」
 ロキ「(ぽっ)美人じゃん。」
 コンス「…は?」

ロキさんの視線の先には、ウアス杖を握って玉座に腰掛けるネクベト様の肢・体☆

 ロキ「色っぽいなー。どうよあんた、オレと一緒に飛んでみないかい?」

 神々がどよめいています。
 直球勝負だ、ロキさん! そりゃ確かにネクベト様はハゲワシだから飛べそうだが、でも、だからってソレはないだろう。直球が君のナンパテクなのか。

 トト「なっ…なな、なんてことを。ネクベト様に向かって、いきなり…」
 コンス「そーだよ! お前、息子いるんなら結婚してんだろ?!」
 ロキ「ああ。あいつの母親とは、別れた。」(さらり)
 コンス「バツイチかよ!」
 ロキ「仕方ねーだろー! 大人には色々あるんだよッ。子供はオレが引き取ったんだ、文句あるかー!

 格好いいのか? 悪いのか?

 クヌム「再婚相手募集中ってか。前の奥さんとは何で別れたんだろうな。」
 ホルス「色々あったんだろう。辛い過去とか。」
 アヌビス「あの男の雰囲気からいくと、愛想つかされた可能性もある。…なんにせよ、親としての勤めを果たすのは良いことだ。」

などと好き勝手なことを言いながら、何故か、ネクベトの側でモロヘイヤティーをすすっている神3人。

 トト「あのー…なんで皆までいるんですか…?」
 ホルス「ウプウアウトから話を聞いてね。異国からの客人を迎えるのは、神々の王としての勤めだし。」
 アヌビス「もしも敵であった場合、排除するのもわが勤めだ。」
 クヌム「異常事態の報告だよ、報告。あいつウチの壁ぶち破りやがったし。」

とか言いつつお茶をすすってるあたり、単に面白そうだったから来てみたような雰囲気がヒシヒシと。

 トト「……。(平和だなァ…うちの国…。)」

遠い目をするトトさんを他所に、ロキさんはネクベト様のナンパにとりかかります。恐れ知らずです。

 ロキ「なあ、アンタ、年いくつ? ダンナとかいるのか?♪」
 ネクベト「私の役目は、代々の王を守護することだ。申し訳ないが、まだ身を固める気は無い。」
 ロキ「だったら愛人でもいいゼ♪ オレはオッケェ。なー絶対退屈させないからサ、ちょっとだけ、付き合ってくれよ〜」
 ネクベト「…興味無いな」
 ロキ(←ザクッ)

 ネクベト「お前のようなうわついた男は好きではない。たとえるならショーン・コネリーみたく40過ぎてからが美しい、オリヴァー・カーンみたいな熱い系で、ワイナミョイネン風のヒゲの似合う貞節で太っ腹な男が私は好みだ。そういう男がいたら、わたしの下僕になることを許してやってもよい。」

 トト「……(ネクベト様…)。」
 コンス「……(そういう趣味だったのか…)。」
 ホルス「……(ここの管理人か?)。」

 身内な神々さえ知らなかった、禁断の扉の奥が今明かされる。ロキさん。アンタ相変わらず、余計なとこ突っ込み過ぎだよ…。^^;

 ネクベト「(何事も無かったかのように続ける)ところで? 貴殿は息子を連れ戻しに来たとのことだが、一体どのようにして、我らの国に来られたのか。」
 コンス「ああ、ソレだソレ。オレもソレを聞きたかったんだ」
 ロキ「どうやって、って…。えーと、とりあえずアスガルドを出たあと、しばらく真っ直ぐ飛んで、高い山を越えて…。」

ロキさんは話し始めました。

 ロキ「途中で巨人ボンヅの家の上を通ったんだよ。したらアイツ、野球にハマったらしくて素振りしててさー。声かけようとして近づいたら、いきなり後頭部をガツン! と。…で、吹っ飛ばされて、雲突き抜けて、気がついたらここにいたっつーわけ。まったく、あいつときたら、飛んでるモンは何でも打っちまうからなー。」
 トト「ホームランですね。」
 コンス「しかも場外だよ」
 ネクベト「脳みその中身も少し壊れたか?」
 ロキ「いやー、それは元々ー。ってオイ!」

なぜかノリツッコミ。
 ネクベトだけは、真顔のままです。

 ネクベト「話はあいわかった。どうやら貴殿は飛びすぎてしまったようだ。送り返してやりたいが、来た道が分からぬのではなかなか難しい。」
 トト「では、そちらはお任せします。問題は、この人の息子さんが行方不明になってしまったらしいことなんですが…。」
 コンス「まだ知らせは来てねーのか?」
 ネクベト「うむ。
 コンス「ったく、何処まで流れていったんだぁ? あのヘビ」

 と、神々がわいのわいの言っていたときでした。
 吉○新喜劇のごとく、さらに一人のレギュラーが。

 セシャト「あのう…。兄、いますか?」
 トト「あれ? セシャト。」

 トトさんの妹、女神セシャトが恐る恐る神殿に入ってきました。何やらカンペを手にしています。
 彼女は、兄・トトの姿を見つけると、たたっと駆け寄ってきました。

 セシャト「よかった! 大変なの、お兄ちゃん。今、まいごセンターのほうに迷子さんが来てるんだけど…」
 トト「えっ?」

 これはもしかして。

 コンス「なんだ、良かったじゃん。見つかったんだ、あのヘビ」
 セシャト「ううん違うの。来たのは女の子で、その…。ちょっと不思議な格好をしてるの。」
 トト「不思議?」
 セシャト「うん…。色あせた白っぽい服をお召しの、ヘルと仰るお嬢様がお待ちです。保護者さんは、至急ヘルモポリスへお越しください」(デパート呼び出しのカンペを読み上げる)
 ロキ「うぁちゃ! それ、うちの子だぁ」

 トト&コンス「お前かーい!」(ハモリツッコミ)

 ロキさんは、照れたように頭をかきました。

 ロキ「いやー、長いこと家を空けちまったからなぁ。うちの娘は寂しがり屋なもんで、探しに来ちまったんだろうなあ。」
 コンス「お前、一体何人子供いるんだよ。」
 ロキ「え? うーん。今んとこ、3人かなぁ。次男は今ちょっと家を出てるんだけど。」

後ろの神々は茶をすすりながら。
 アヌビス「バツイチに子供3人、か。…」
 クヌム「男手ひとつで子育てとは、大変だな。父親があれじゃ子供も大変だろう」
 ホルス「いやいや。見た目はカルいが、あれでそれなりの苦労してるんだろう…。」

寒いからって、コタツ出して入っている神様たち。エジプトにコタツがあるのかって? 問題ない。
 動力部にはミニ太陽・アテン神がしばりつけてある。身内でまかなう、エコロジーな超古代文明です。(嘘)

 トト「…町内会の寄り合いじゃないんですから…」
 クヌム「細かいことは気にするな。それよか、早くいこーぜ。」
 トト「えっ? 何処へ?」
 クヌム「決まってんじゃん。お前ん家(まいごセンター)。」

いそいそとコタツを片付け、出かける支度をはじめる神々。

 アヌビス「では、私も行くか…」
 ホルス「トトの家にお邪魔するのは、久しぶりだな。」
 トト「だから…何で皆ついてくるんですか?!」

 ロキ「何でもいいんじゃない? とりあえず、早く行こーぜ。ヘルは寂しがりやだから、今頃、かなり気温が下がってると思うぜ。」
 トト「は?」
 コンス「気温が…?」
 セシャト「(ため息をつきながら)そうなの。」

 何と。原因は、この人(ロキ)ではなく、娘さんのほうだった?!
 いまやヘルモポリスは天然冷蔵庫。岩間だし冷却率はさらに倍増?

 ロキ「うちの娘は、気分が憂鬱になると冷気を発散するコでさー。夏場はいいんだけど、冬になってくると、色々とな。」
 コンス「何なんだ一体。そんな不思議な奴がいてもいいのかよ!」
 トト「うーーん。アテンみたいに熱を発散する神がいるなら、逆もいていいかな、とは思うけど…。」
 セシャト「とにかく早く来て。このままじゃ、川が凍ってしまうわ!」

 セシャトに先導されて、神々はぞろぞろとヘルモポリスへ向かいます。

 ネクベト「私は常駐なので、ここから動けんが。よろしく頼むぞ」
 ロキ「えー…。美人なお姉さんー…。」
 クヌム「諦めろ。あの女性<ひと>の好みの男になることは、神にとっても不可能だ…。」

 ネクベト「私は庭付き一戸建て(の、神殿)住まいだからな。相手には事欠かん。」

 女神様の問題発言を残しつつ、次回はinヘルモポリス。
 --――ちょうど同時刻。北の空には、不思議な黒雲がたれこめはじめていました。

 風雲急を告げる、本国からの追っ手。どうするロキさん。来るのはもしかして、あのお方…?

つ  づ  く


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