大神殿のナイショ話

2号館出張版-北の国から’2002-

[2]



 その頃、ヘルモポリスのトトさんは、いつものごとくお仕事中でした。今日は、上エジプトの守護者、女神ネクベト様と定期ミーティングです。

 トト「何だか、今年は寒い、ですよね…?」
 ネクベト「そうだな。作物の育つこの時期に、この気温ではな。何が原因なのだろうか」

 現在、エジプトは暑熱期<シュム>真っ最中。季節の3女神のひとり、その名もシュムが頑張っているのですが、ちっとも気温が上がりません。ま、暮らしてる人にとっては涼しいのが一番なのですが、定められた季節が巡らないというのは、一年の秩序にも関わる一大事。

 トト「どうしてだろう…川の水位は普段通りだし、上流でクヌムが何かしてるワケじゃないと思うんだけど」

そう言ってトトさんは首を傾げました。ナイル河の洪水管理は、上エジプトの端っこを守護している、クヌム・サティス・アンケトの3人の神様たちです。

 ネクベト「一応、使いを出しておいたが。何か変わったことが無いか調べて来いと」
 トト「…誰を?」
 ネクベト「無論、ウプウアウトだ。あと、ヒマだからと行って、コンスがついていったぞ。」
 トト「……。 (ってことは、コンスの仕事は、また僕が代わりにやるのか…)」

あー、どうりで最近静かだよなあ、などとシミジミと思ったトトさんでした。
 さて、その頃のウプウアウト。俊足のパシリ神(笑)、疾風のごとき黒犬は、河に沿って走り続け、そろそろエレファンティネに着こうかという辺りまで来ていました。

 ウプウアウト「ふむ。川の水量は、いつもと変わらないな。…上のほうはどうです?」
 コンス(隼に変身して飛んでいる)「あー、特に異常は無いみたいだけど。」

 こんな妙な組み合わせで行動するのは初めてです。(書いてるほうも初めてだがエジプト神話史上でも多分はじめてだ)
 でも大丈夫、コンスもウプウアウトも死者の導き手という共通の役目があるのだから。ウプウアウトがニュートラル属性だからコンスも一緒に召喚できるよ(メガテンネタ)。

 …と、いうわけで、ふたりは、ナイル河を上流へと向けて、怪しいものは無いかと油断なく見回しながら進んでいました。
 そのときです。

 コンス「お」
 ウプウアウト「…どうしました?」
 コンス「何か来る」

 コンスの鋭い目が、めざとく何かを見つけました。それは、エレファンティネのクヌム神の家の方角から来るようです。敵警戒センサー搭載のウプウアウト、ぴんと耳をたて、目をらんらんと光らせています。

 ウプウアウト「戦闘能力、2000…3000…馬鹿な! こんな値が出るわけは無いッ」(←スカウター振り切れそう。)
 コンス「む、何か飛んでくるぞ。鳥…いや。鳥じゃ無ェ、何だあれ!」

向こうから、寒気とともにゴオオッ、と向かってくる見慣れない男。よくよく見ると、鳥に変身しているんじゃなくて、鳥っぽい服を着ているだけなのです。
 コンスびっくり。
 そして向こうも、何かに気がついたようでした。

 ロキ「…なあ、お前さあ、もしかして」
 コンス「!!!」

 目の前に下りてきたのは、なにやら蛇を小脇に抱えた不思議な男でした。羽根をいっぱいつけた衣から、目だけ出してます。こんな格好で空を飛ぶ神は、この国にはいません。

 コンス「何だテメエは! みたとこ白いしヌビアの神じゃねーな?! さてはギリシャの神かよ!」

※過去に大挙してお邪魔しに来たギリシアの神々のことを思い出している。

 ロキ「はァ…? 何のことだよ。オレはただ、アスガルドから逃げてだなぁ」
 コンス「あすがるど?」
 ロキ「そう、そのアスガルドに戻りたいんだけどさー。コッチでいいんだよな?」
 コンス「……。」

そんな地名しらねーよ、知るわけねーじゃん、という顔つきのコンス神。そりゃそうです、エジプト人が知ってるのはメソポタミアまで。以北は未知の国。
 大地が円形である、というのはどこの国の人も考えることでしたが、自国が世界の中心である、というのも、どこの国の人も考えることだったのです…。

 コンス「それって辺境の国のことだろ。」
 ロキ「違うって、世界の中心にあるヤな砦のことだよ。ここが辺境なんだって。」
 コンス「何言ってんだよ、ここが中心だろ? あすがるど、なんて国は聞いたこともねーぞ」

と、まあ、軽く言い争っていたところ。
 突然、地上にいたウプウアウトが叫びました。

 ウプウアウト「…コンス危ない、離れろッ!」
 コンス「は? 何…」
 蛇「みゅーーー!」

 いきなり、物凄い勢いでコンスに飛び掛っていく蛇! ビビって飛びのくコンス。
 しかし…

 空中のことなので、コンスは危うく食いつかれるところでヒラリと避け、蛇は、そのまんま放物線を描きながら、ひゅーーっと地上へと小さくなっていきました。そしてウプウアウトの目の前を通り過ぎて…。

 …ぼちゃん。

 コンス「て、てめェ…」(ロキさんをギロリと睨む)
 ロキ「あ゛ー、すまんすまん。どうも腹減ってたみたいで、鳥がうまそーだったんだなぁ…。」
 コンス「オレは、鳥じゃ無ェっっ!」

ロキさんの目の前で、ぽんと人間バージョンの姿に戻ったコンス神。ロキさんはぽんと手を打ちました。

 ロキ「あー、やっぱり。なんとなくそんな気はしたんだよな。変身できるってことは、お前さあ、巨人族じゃない?」
 コンス「…はい?」
 ロキ「ここ辺境だしなア。巨人族も苦労するよな、クソジジイに追い払われちまって。」
 コンス「いや、その巨人族って何?」
 ロキ(聞いちゃいない)「南だし、あっついし…んー、もしかしてオレ、ムスッペルの辺りまで来ちまったのかなあ。」
 コンス「だから、巨人族って…」

 ウプウアウト「おい。」

 黒犬の呼びかけで、ハッとする二人。

 ウプウアウト「流れていっちまったぞ…さっきの蛇…。」
 ロキ「あーーー!!!」
 コンス(あー、じゃ無ぇだろうがよ)

 慌ててももう遅い、ナイルの流れは止まることを知らず、悠久の昔から脈々と流れ続け。
 流れに消えたロキさんの息子。エジプトをムスッペルヘイムだと思い込んでいるロキさん。火の国の巨人と間違われているコンスたち。
 このまま親子は引き裂かれてしまうのかッ!(違う)

 次回は蛍が迎えに来ます。多分。

つ  づ  く


前へ   戻る  次へ