大神殿のナイショ話

神々の憂鬱−変わりゆくもの、変わらざるもの



**新王国時代**

史実によれば、新王国時代は紀元前1570年、イアフメス1世の即位による、第18王朝の成立から始まる。
彼はヒクソス追放により父と兄を失った幼い王で、テーベを支配する家系の者であったらしい。
のちに「百の門を持つ町」と呼ばれることになる
ナイル上流の壮麗なる都テーベにおいて、この国で最も輝かしい時代は、始まった。



 新たな首都テーベでは、アメン大神殿が建立されていました。
 それまでの太陽神、ラーの信者たちの文句がないわけでもなかったのですが、侵入者たちに対し勝利をもたらし、国を救ったのがアメン神であるとなれば、人々の信仰が移るのも当然のことでした----

 時代が変わり、神々の順列は大きく様変わりしていました。
 変わらず信仰されつづける古き神々、新たに名を知られるようになった神々。争いによる歴史の断絶を越えたとき、そこには、違った秩序が生まれようとしていました。

 ネイト「宿題は、解けたようだな。」
 トト「はい。…あの、ネイト様」
 ネイト「何だ?」
 トト「ネイト様は、答えをご存知だったんですよね? 絶対に正しいことなど無いということ、不和は決して悪ではないということ」

 女神ネイトは、軽く笑って首を振りました。

 ネイト「…言葉には、出来なかった。私には、お前のように物事を形として捉える力はない。ただ、感じるだけだ…漠然と。」
 トト「それでも、僕は何も気が付かなかった…。」
 ネイト「いつかは、気が付いていたさ。遅いか早いかの違いだけだ。そしてこれからも、お前は色々なことに気付いていくだろう。それを言葉に変えられるかどうかは、お前の力次第だ。」

 戦いのために集まっていた神々はそれぞれの町に戻って行きます。疲れを休めるもの、傷を癒すもの、町の復興を手伝うもの。
 人間たちの世界は、これから更なる発展を遂げるでしょう。未来を知る神々には、輝かしい王朝の繁栄がありありと見えていました。そう、新たなる創造は、破壊なくしては生まれない。悩み、迷った長い夜の後にしか、喜ばしい夜明けは訪れないのですから。

 セシャト「お兄ちゃん!」
 トト「あ、セシャト…っ、ととと」

 走って来たセシャトに思いっきり飛びつかれて、トトはよろめきます。

 セシャト「良かった! 心配してたのよ。さ、かえりましょ。私たちの町へ。みんなも心配してるから」
 トト「…うん、そうだね。」

 人にも神にも帰るべき場所があり、それぞれに成すべきことがありました。そして、旅立つ者は、再び空へと。

 ハロエリス「さて。私はまた旅に出るとしよう。」
 イシス「もう行くの?」
 ハロエリス「一つところに留まれない性分なんでね。あの2人、セトとネフティスのことを頼んだよ。君ひとりでは、あの2人の対極の力とバランスを取るのは大変だろうけど。」
 イシス「大丈夫よ、息子もいるから。…あなたも、気をつけて。」

 空へ飛び立つハロエリスの姿を、遠くから、セトも見ていました。

 セト「…フン。奴がいなくなれば、少しはやりやすくなる。」
 アナト「まだ悪巧みをするつもりか? 変わらないな。」
 セト「それが私というものだ。貴様はどうなのだ。この国に住み着くことになって、少しは変わったのか?」
 アナト「…さぁな。バアルには、変わってもらわないと困るのだが…。」
 ネフティス「……。(まさか浮気じゃないわよね、これってお友達の会話よね。でもアナトさんて美人だしどうしよう、あああ←新たな争いの火種)」

 変わらない神々…。
 ほんの少しだけ、変わった神々…。

 時は移ろい、新たな歴史を刻んでゆきます。砂に埋もれ風化しながら、時に鮮やかに、何千年の時を越えて蘇る神々の記憶。

 それは、遥かなる古代の物語。
 今はもう誰も知らない、記されることのなかった物語----。


−END−



前へ   END


**…よく、こんだけ書いたな自分。
長い。今度から、エンディングくらい決めてから書こう。そうしよう。
でも、またオリジナルな話を書くかどうかはナゾだな。若気の至りだな。(笑)