大神殿のナイショ話

2号館出張版−北の国から’2002−

[1]


 もしも北欧神話とエジプト神話がクロスしたら。
 時代が違う。史実とも違う。おまけに神様の種類もかーなり違う。
 現実的には在り得ない、しかしパロディだから許されてしまうこの企画。大丈夫だ! ここのサイトには両方あるし。
 と、いうわけで始まる奇妙奇天烈な物語。「北の国から、あの神々がエジプトにやって来た」。


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 それは、とある平和な朝のこと。
 いつもと同じように一日のはじまりに居間に集まった人々は、たのしく食卓を囲んでおりました。

 クヌム「…ぶぇっくし!!」
 ヘケト「あら、クーちゃん風邪? だいじょーぶ?」
 クヌム「あ゛ー…大丈夫。なんか寒いな、最近。」

 エジプトは南の果て、エレファンティネのクヌム神殿で、クヌム神と奥さんのヘケトと息子のヘカは、ちゃぶ台を囲んでさわやかに朝ご飯の途中。
 今日の献立は、パピルスの根っこの漬物とオートミール、モロヘイヤティーです。

 クヌム「お茶入れて。」
 ヘケト「はいv クーちゃん」
 息子・ヘカ「母さん、おかわりー」
 ヘケト「はーい。今日はみんなよく食べるのね、なんかごはんの減りがはや…」

と、ヘケトが鍋に手を伸ばそうとしたとき…何かに触れました。

 ヘンな声「みゅー。」
 ヘケト「きゃ?!」

 びっくりして、炊飯器(?)の中を覗き込む一家3人。
 そこにはなんと!
 見たこともない一匹の蛇が、ごはんを勝手に食べているではありませんか!

 クヌム「何だ、こいつ(ひょいとつまむ)」
 蛇「みゅ、みゅみゅ!? みゅーーーー!!(嫌がっている様子)」
 ヘカ「何だろうね、コレ。普通の蛇じゃないよ? 神っぽくない?」

 エジプト神話的には、動物が霊力を高めれば神族入りもオッケー。力がなくなれば、他の神に吸収合併or任地取り上げ。実力主義社会なのです。
 でもって、この蛇は、何だかそこらへんの蛇と違って、霊格の高そうな蛇でした。

 ヘケト「ウラエウス(蛇の女神)さんちのコじゃないかしら。」
 クヌム「いや、違うな。だってホラ、こいつオスだぜ。ウラエウスんちは女系家族だから、女ばっかじゃないか。」
 ヘケト「んー…じゃあ、どこのコ?」

 ヘケトは首をかしげました。このあたりに、蛇の神に関係する土地はそうありません。蛇神さまは、だいたい下流地域に聖域を持っているのですから。

 クヌム「んー…。とりあえず、神様まいごセンター(ヘルモポリス=トト神んち)にでも連れて行っとくかぁ…。」

 と、その時!
 入り口から、冷たい北風が! そして、その風とともに、空から舞い降りる荒っぽい羽音。

 ??「ああー! もー、こんなところにいたのかお前ー!」
 クヌム「…ぶぇくち! 寒ッ! 何なんだ?!」
 ヘケト「あの、どちら様ですか…?」

 律儀なヘケトちゃんに返事も返さず、ずかずか家の中に上がりこんで、小蛇をガシっと掴まえる男。やたらと色が白いし、何だか鳥の羽根みたいなものつけてるし。
 こんな不思議な人間は見たことがないので、家人のみなさんはビックリです。

 ヘカ「…ヘンな服着てる…。」
 クヌム「こらこらこらーッ! 人んち上がり込んで、何やってんだお前はー!」
 ??「あん? 人んちって、ここお前らんち?」

 ちゃぶ台の上にしっかり乗っかっといて気が付かないとは、謎の男は、かなりイイ加減な性格のようでした。蛇は手の中で、みゅーみゅー言いながら暴れています。

 ヘケト「ちょっと、そのコ、かわいそうでしょう…。嫌がってるわよ」
 ??「ああ、いーんだ。こいつオレの息子だから。」
 ヘカ「息子?!」

男はすまし顔です。

 ??「あぁ、そうだよ。こいつはウチの次男だ。名前はまだ無い。しっかし、何でかなー…。何で家出ばっかするかな、もー…。」
 ヘケト「…(夏目漱石ね…。)」
 ヘカ「……(っていうか、この人いったい誰なんだろう。)」
 クヌム「………(ああ〜早くどいくてれないかなぁもう。土足でちゃぶ台に上がらないで下さいって、はっきり言ったほうがいいんだろうか。)」

 と、三者三様なことを考えていたとき、男は、ようやくちゃぶ台の上から降りてくれました。

 ??「んで、こって何処なわけ。」

 どうやら、知らないで来ちゃったみたいです。蛇といい、この男といい、ナゾだらけ。ま、神様ん家に上がりこんでるんですから、人間でないことは確かでしょうが。

 クヌム「…エレファンティネだよ。ケメト(エジプトの古名)の南の」
 ??「ふーん。なんか知らないけど、だいぶ遠くまで来ちまったみたいだな。さっ帰るか、息子2号。」
 蛇「みゅ、みゅーー。みゅーーー(泣)」

 嫌がっている息子とともに、男はとっとと家に帰っていってしまいました。
 足跡クッキリのちゃぶ台を掃除しながら、ヘケトが、ふと呟きます。

 ヘケト「あら、そういえば、あの人って一体誰だったのかしら。」

 彼らはまだ知らない、その人が北欧世界いちの問題児・ロキさんであることを。
 はるばる北の国からエジプトまで来てしまった彼ら、果たして、その真の目的とはいかに。そしてこれから起こることとは…?

 謎と期待が怒涛を呼ぶ。お前を倒せと轟き叫ぶ!(叫びません)
 空前絶後のエジプト/北欧神話対決が、今ここに。

つ づ く



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