大神殿のナイショ話

にぎやかヘルモポリス〜トトさんは大変だ〜



 ヘルモポリスといえば、知恵の神トトのお住まいのある町ですが、このヘルモポリスのある第15ノモスって、実は、例のエル=アマルナの在る地方なんです。

 え? この町を知らない? じゃあ、アクエンアテンはご存知ですね?
 ほら、あの、いきなり全ての神への信仰を廃止して、アテン神を崇めるとか言い出した王様ですよ。その王様が独断と偏見で強引に遷都し、アテン神に捧げた都がエル=アマルナです。
 地図で見ると、この都とヘルモポリス(現在名;アシュムネイン)は、目と鼻の先なんですよ。
 トト神のご近所さんで、アテン神が繁殖してたんです。

 だから、なのか…?
 ヘルモポリスの祭神には、さりげにアテンが入っているのです。
 アテンですよ、アテン。あのカサカサ動くソーラーマリモが、ヘルモポリスに居たんですよ。アテンはもともと太陽の町オンに祀られていた神なのですが、いったんエル=アマルナに持ってきちゃった以上、またもとの町に戻すわけにはいかなかったんでしょうかねぇ…。アクエンアテン王が亡くなったあと、手近な神殿に押し付けちゃったのかもしれません。

 宮廷神官「すまんが…コレ(アテン)、引き取ってくださらんですか。」
 ヘルモポリスのトト神官「えっ、いや…そんなこと言われても、うちじゃあそんな」
 宮廷神官「他ではどこも、引き取ってくださらんのですよ。もう、ここくらいしか…。トト神のお情けで、なんとかならんでしょうかねえ。」
 ヘルモポリスのトト神官「……はあ。とりあえず、お伺いしてみますけど…。」

神官は大神官に取り次ぎ、大神官は聖なる池でミソギをして神のマイ・ルーム、祠に入った。

 大神官「…と、いうわけなんですが。いかが致しましょう。」
 トト「えー…。うーん…。アテンだよね。まさか、つがいじゃないよね。
 大神官「は、つがい??」
 トト「アテンは繁殖率高いからね…。捨てるわけにもいかないし、かと言って増えすぎるのも不気味だし。単品?」
 大神官「そのようですが。(そうか、アテンって、増えるんだ、増えるんだ…。)」
 トト「じゃあ、いいよ。居れば居たで役に立つだろうし、受け取っておいでよ。」
 大神官「は。有難うございます。」

かくして、厄介払いされたアテンを受け取ったトト神官。だがしかし! そのときトトはまだ知らなかったのだ。アテンが実は性転換可能でしかも両性具有だってことを。(タニシ? カタツムリ?)
 後日、ヘルモポリスの町は、やたらとカサカサ動く不思議なモノに埋め尽くされ、そこかしこに大小さまざまなアテンがひしめき蠢きあっていたという。

 町の人「トト様…。」
 トト「うわー! ごめん! ごめん!! と、とりあえず、すぐにマニュアルを書くから。」

 と、いうわけで、歴史に名高いトトの著作、「呼吸の書」「トートの魔法書」「ヘルメス文書」に加えて、知られざる迷作「アテン飼育マニュアル」が加わった…かどうかは定かではない…。

 いくら「九百(エジプトの神々全員)の神々の集いし町」とか呼ばれてたって、そん中にアテン入れちゃって、いいんだろうか…。
 相変わらず、苦労しているっぽいトトさんなのであった。



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