大神殿のナイショ話

次男・ハロエリス様の帰郷



閏日の5日間に1人ずつ神様が生まれたんだから、 オシリスさんは5人兄弟です。(当たり前)
 でも、知られているのはオシリス・セト・イシス・ネフティスの4人だけで、1人足りませんよね。じゃ、残りは一体、誰?

 そ〜れ〜が〜、ハロエリス様♪ (歌うなよ)

 オシリスとイシスの息子ホルスと同じ名前なので混同されがちですが、閏日<エパゴメノス>5日間に誕生にしたホルスと、セトと王権を争うホルスとは、本来、別モノなんですね。
 区別するために、このオシリスやセトと兄弟のホルスのほうは、ホル・ウル(大ホルス)と、呼ばれ、このホル・ウルという名前がギリシア風に訛った名前が「ハロエリス」になるのです。

 ところで、甥っ子と同じ名前のハロエリス様、誕生日は閏日のうち3日目です。ってことは、普通に考えればオシリスとセトの弟で、イシスとネフティスの兄のはずなのですが、どういうわけか、彼は、「ヌトの末の息子」と呼ばれているのです。
 末っ子…?
 だったら最後に生まれるんじゃないの? って言うか、ハロエリス様がネフティスの弟っていうのは、何か納得いかないよ…?
 しかも、セトは、あとから生まれたイシスの『弟』だとされています。
 だったら誕生日の順番って、どうなのよ…。

 実は、これには深い深ーい訳というのがありまして…。
 セトは、自分が最初に生まれたいばかりにズルをして、母ヌトの腰をブチ破って生まれた子供でした。本来、自分より先に生まれるはずだった兄弟たちを追い越して、正規の道(産道)を、通らずに、自分で外に出る道を作ってしまったのです。
 それでも長男オシリスより先に生まれることが、出来なかった!
 悔しいので、生まれたあとも虎視眈々と王位を付けねらうことに…と、まあ、そんな事情が、オシリス神話の背景にあるわけです。

 と、いうことは、4日目に生まれた姉・イシスは、本当ならセトより先に生まれるはずだった!
 なら、その一日前に生まれた3日目が誕生日のハロエリスも、セトの兄に違いない!

 と、いうわけでハロエリス様=次男決定! 末っ子、っていうのは、たぶん男兄弟の中では最後に生まれたからっスね。
 セトの知られざる「もう1人の兄キ」。それがハロエリス様。と、いうことにしておきます。(笑)

 でも、次男にしちゃあ、彼は王権争いには出てきません。全く姿を見せないし言及もされない。ってことは、その時エジプトに居なかったんじゃないでしょうか。居たら、セトはオシリスだけじゃなく、もう1人の兄であるハロエリス様も暗殺しなきゃなりませんからね。

 ここで注目すべきなのが、ハロエリス様は「旅をする神」だということ。実家はレトポリスにあるのに、そこに帰ってくるのは1年に1度、お祭りの日だけ。その他の期間は、北方を旅しているそうです。

 と、いうことは…職業;風来坊か?(オイ)
 小さい頃、突然「オレは、もっと広い世界を見に行くよ」とか言い出して、旅に出たのかもしれない。でもって、成長して久しぶりに故郷に戻ってきたら、なにやら大変なことになっていた、というパターン。
 いやぁ、お約束っぽいですねー。
 戻ってきてみれば、兄(オシリス)は死んでいるし、いつの間にか甥(ホルス)は生まれているし、その甥と弟(セト)が王権争いをしたというし…。
 神々の時間は、とっても長い。一体何年旅に出てたのかは知らないけど、多分、戻って来た彼を見ても「あんた誰だっけ?」くらいのものではないかと。

+++
 んで、戻って来て、とりあえずイシスから事情を聞いたハロエリス様。

 ハロエリス「ふうん、そうだったのか…。大変だったんだね」
 イシス「ええ、まあ。それも、今はようやく収まったのだけれど…。でも、どうして戻って来てくれなかったの? あなたがいてくれれば、こんな…。」
 ハロエリス「すまない。だいぶ遠くに行っていてね。」
 イシス「遠く?」
 ハロエリス「遥か、北のほう…。『雪』というものが降る国を見てきた。」
 イシス「『雪』…?」

 そう! 雪という単語を最初にエジプトに持ち込んだのは、旅帰りのハロエリス様だった!(仮説)
 何だかよく分からないけれど、冷たい雨が降る国があるらしい、ということを聞いたイシスは、そのことを皆に話して聞かせましたとさ。(※エジプトには雪という単語があったようです。一応。)
 
 って、そんなことはどーでもいいんだ、実は。
 セトの居所を聞いたハロエリス様、旅帰りの疲れを癒す間もなく弟のところへ。

 セト「…生きていたのか、貴様。」
 ハロエリス「久しぶりだね。ずいぶん、大きくなって」
 セト「今さら兄貴づらか? 誰も、あんたのことなんか覚えちゃいない。ここには貴様の居場所ど無いぞ」
 ハロエリス「かもれない。だが、長兄を手にかけた理由だけは聞かせて欲しい。何故だ? セト…」
 セト「ふん。居れば、貴様も殺したさ。それだけのこと」
 ハロエリス「…そうか。変わらないな、お前は…。欲しいものは、すべて力ずくで手に入れようとする。地位も、名誉も、愛も…。そうやって、たった独りで生きようとするのだな…。」

 予想として、ハロエリス様は穏やかでオシリス似の性格なので、セトのキライ(苦手)なタイプだったと思われます。

 セト「ふん。その顔、オシリスにそっくりだな。見ているだけで虫唾が走る。」
 ハロエリス「それは、罪悪感かい?」
 セト「愚かな。罪を感じる者は、罪を犯している者だけだ。より優れた者が地上を支配する、そのことの何が悪いのだ? 私は何も間違っていない。」
 ハロエリス「…。」
 セト「分かったら、さっさと出て行け。これ以上、貴様と話すことなど無い。」

 冷たく背を向ける弟を残し、ハロエリスは何も言わずにその場を立ち去った…。


 と、いう情景を勝手に想像してみました。(想像かい)
 ハロエリス様といいオシリスといい、穏やかで物静かな性格は、たぶん天空の女神ヌト経由の遺伝でしょうが、ホルスとセトのカッとしやすい熱い性格は大地の神ゲブ経由の性格でしょうなあ。
 ゲブは短気なので、すーぐ怒ったり(火山の噴火)暴れたり(地震)するのですよ。

 …って、なぁんだ、ホルスとセトって意外と似てるんじゃん♪ さすが叔父と甥の関係だね。
 何はともあれ、このようにして、ハロエリス様は王権争いの終わったあとにヒョッコリ戻って来て、エジプトに定住したものと思われます。

 でも、今でも放蕩癖は直らないらしく、自宅にいることは稀なようです。エジプト全土をウロウロしてます(笑)。交友関係も広く、南の果てから北のスミの神まで友人関係がバラけていますね。
 中でもナゾなのが、クヌム神の奥さん、ヘケトと仲がいい…ってこと。

 トト「失礼しまーす。…あれ? ヘケト?」
 ヘケト「はーい、トトちゃん。」
 トト「何で、ここにヘケトが?」
 ヘケト「あのね、ハロエリス様にケーキの作り方教えて欲しいって言われたのー。」
 トト「け…、ケーキぃ?!」
 ハロエリス(奥からエプロン姿で出てくる)「ああ、いらっしゃいトト。すまないが、少しそこで待っていてくれるかな?」
 トト「は、はあ……。」

 って、こんなカンジで。(笑)
 いや古代エジプトにケーキなるものがあったかどうかは分からないけどね。イメージ的にね。ハロエリス様ってマメそうなんで、自分で料理とか掃除とかやってそうなんですもの。

 もっとも、本当のとこ、ヘケトとハロエリス様がどういう経緯で知り合ったのかは謎なんですがね…。


前へ<  戻る  >次へ