大神殿のナイショ話

プタハ様とそのしもべ(1)



 体に何か不自由を持つかわり、人には無い力を持つ…というパターンは、世界各国に共通する物語です。中でも特に鍛冶の神。鍛冶の匠といえば、ドコの神話でも、片目が潰れていたり片足が不自由だったりと、体に不都合を抱えていることが多いものです。

 ところが、我らのエジプト神族の鍛冶屋、プタハ神には、どこも欠けた部分が無いッ!
 五体満足。それどころか(このサイトでは故意にムシっているが)、「顔美しきもの」「永遠の若さを保つもの」といった恐るべき形容詞を所有しているのです。

 古代エジプトの神にとって、肩書きは本質。2つ名は力の代名詞。すなわち、プタハ神とは、マッスルゴッドであると同時に、若い娘がキャーキャー言うようなハンサムダンディーなのです!
 ううーむ。ここまで恵まれた設定を持つ鍛冶の神が、他の神話に存在するだろうか…?

 力強くウェーブする鬚。
 壮麗な白い壁の聳え立つ、統一王国最古の首都の守護神たる地位。
 そして、決して他の神話群には属さない不屈の精神と独立性、ちょっと人付き合い悪そうなところもグー。
 奥方は、エジプト最強の力もつ気高き獅子の女神、セクメト様。

 素晴らしい…素晴らし過ぎるプタハ様。おじさまスキーな夢見るをとめたちにとっては、心にドキュンな神様であるはず(独断と偏見)。
 そんなプタハ様のことを、もっと知りたいとは思わないかね諸君!
 ご本人は寡黙で仕事熱心なのでなかなか話は聞けそうもないんで、コッソリ神殿に潜入しちゃおうじゃないか!
 てなワケで、プタハ神官のバカ息子、メルエンプタハ君! 頼んだよ。

 メルエンプタハ「何で俺が?!」

うるさい。とっとと行けホラホラ。メンフィス大神殿の神官ん中に、コッソリ神の祠に入ろうとするような不敬者はなかなかおらんのだ。その意味では貴重な存在だぞキミは。

 メルエンプタハ「だからってなー…。ヤバいだろう、ソレは。」

 とか何とかいいながら、メルエンプタハには遠隔操作のハンディカメラ持って神殿内部に潜入していただきました。プタハ神は夜の世界に属する神で、仕事場は冥界のおとなりにあります。よって、仕事でお留守の間を狙うなら、夜! 夜に限りますぜ。にやり。

 いやぁ、それにしてもメルエンプタハ君、さすが神殿で生まれ育った神官の息子。隅々の構造までお見通しです。
 はっはっはっ。気にしてはいけません。よくあるオリジナルキャラクター(?)の一人です。

過去、このコーナーに出演していました。



 …っと、そんな話をしているうちに、どうやら目的地にたどり着いたようです。

 メルエンプタハ「…こ、ここか?」

 おそるおそーる中を覗いて見ると…プタハ神のMyルーム。かなり几帳面な性格のようです。仕事道具やら衣装やらが整理整頓されて並んでいます…む?
 なにやら、机の上に…

 ああっ?!

 メルエンプタハ「こ、これって…(汗)」

 そこにはナント、奥さんと息子さんのすんごいリアルな彫像が!古代エジプトにブロマイドのようなモノは存在しませんからねぇ。(だったらハンディカメラも存在しないだろう、というツッコミは不可)きっと仕事終わって一息つくついでに作ってたんでしょう。何か…ひとり息子(ネフェルテム神)のちっちゃい時から成長していく様が時間経過に忠実に造られて、大切そうに壁際に並べられて…。

 実は親バカ?

 でもって、愛妻家?
 
 プタハ様って…そうか、アットホームな神様だったんだ…。仕事だけじゃなく、家庭も大切にしていたんですね? ほろり。

 ネフェルテム神「あれ? …キミ、誰? 何してるの?」
 メルエンプタハ「はっ!!」

ヤバイ! 息子さんに見つかったぞ、逃げろ特派員!

 ネフェルテム神「あ、ちょっ…ねえ、キミってもしかして…」

ダッシュ逃げきり。
 ようやく神殿の外までたどり着いた! どうでもいいけど、バラエティ番組にありがちなハンディカメラ持ったまま走ってる時の映像って、ガクガク揺れてるしスタッフの粗い息遣いも入ってて何か楽しいよね。

 メルエンプタハ「…てめぇ…。そういう問題かよ…。はあ、はあ…」

ははは、すまんすまん。そーいや息子のネフェルテム神は昼に属する神だから、仕事してない夜はご在宅中なんだね。忘れてた〜。

 メルエンプタハ「忘れてた、じゃないッ! よく考えたらプタハ神の嫁はセクメト女神だろ?! どーすんだよ! もし知れたら、冥界行く前に滅ぼされるぞ!」

まったくもって。やー、見つかったのが息子さんのほうで良かったなぁ…ん?
 をや? ネフェルテム神が神殿の外まで追っかけて来ましたケド。

 メルエンプタハ「げ!」
 ネフェルテム神「あ、いたいた。(ぱたぱた←足音) キミって、1年くらい前に家出した大神官の息子さんだよねぇ」
 メルエンプタハ「……。(ヤベ、バレてるし)」
 ネフェルテム神「父さん(プタハ神)からの伝言だよ。『そんなにワシの召し使いになるのが嫌なのか? 理由が知りたいので空いてる日にウチに来い』だって。(ニッコリ)」
 メルエンプタハ「……!!!」

神官=神の召し使い。そして古代エジプトでは神官は世襲制。日本の神主や氏子と似た継承システムを採用しています。
 つまり、家出すなわち、神に仕えるのがイヤで逃げ出したと、そういうことになります。

 メルエンプタハ、だ〜いピンチ!☆ 相手は校長先生より怖いプタハ神です。さぁどうする? このまま逃げても相手は神。国外逃亡すれば何とかなるかもしれませんが、その場合、一生、国の土は踏めないでしょうナ。

 メルエンプタハ「うわぁぁぁーーー! ど、どうすれば良いんだぁーーーー!!」

 逃げ出した「神の召し使い」、メルエンプタハの受難は、今はじまる…。
 やはし、サブタイトルには『それは、神と人との物語』とか書くべきなのかな…。(マイナーネタ)



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