大神殿のナイショ話

二代目は苦労性〜前編〜



※注意!
トト神が初代/二代目に分かれるというのは、個人的な解釈であってそういう資料があるわけではありません。
新王国時代あたりからトト神に対する信仰が変わってしまい、前後でかなり性格が違っているため、便宜上分けたというだけのことです。

↓以下は、おおまかな性格の区分。

新王国時代以前のトト神…セシャトはマフデトと姉妹/書記の神/オシリスの弟、セトの兄弟/オシリス殺害に加担するが、のちにホルスの味方に回る/

新王国時代以後のトト神…セシャトが妹/書記の神だが戦いの神の性格も帯びてくる/兄弟はいないが地域によっては妻・息子を伴う/終始イシスとホルスの味方/



 このサイトでは、トト神には「二代目」という肩書きをつけてます。

 何でかというと、エジプト王国初期の頃のトト神と、のちのちのトト神は、ずぇんずぇん性格違うからなんですね。ホルス神が20数人もいて、そのまんま1人の人格だということにすると物凄い多重人格者(ヤバめ)になってしまうのと同じく、トト神も、全く性格の違うのを1人にしちゃうと、とんでもない人格になっちゃうんだってば。

 でも、2人に分けるっつったって、一体どこの時代で分ければ宜しいものやら…。
 そこで、どこらへんから性格が変わったのかを調べるため、神話の中の時間経過順に、エピソードを並べてみました。あくまで神話の中の時間経過です。神話が成立した年代は無視です。(実際の年代で行くと、新王国時代が境界線になる。)

 1/トト、誕生する。両親なし。自分で自分を創ったとかいう、ものすごい話もある。トキだけに、やはり卵から生まれたのか…?

 2/天空の女神ヌトが子供たち、オシリス以下4名を孕むが、太陽神ラーが「産んじゃダメ!」と言い出す。困ったヌトは知恵の神トトに相談、トトはトンチで閏日を作り出し、ラーのウラをかいて出産を可能にしてあげる。

 3/人間に馬鹿にされて怒った太陽神ラー、破壊の女神セクメトを生み出す。セクメト大暴れ。しかも国外へ逃亡。困ったラーはトトに、「お前、ちょっと連れ戻して来てくれ」と、無理難題言いつける。

 4/人間界がイヤんなった太陽神ラーが王位を去ったあと、王位を譲り受けたトトは、王位の後見人としてゲブを即位させる。(この神話には色んな異説もあるが。)この頃から、トトは地上世界の王権を記録しはじめたらしい。

 5/オシリスが地上の王になるが、弟セトの裏切りにより暗殺される。トトはオシリス派だったらしく、オシリスの寡婦イシスを庇い、セトから逃がす。

 6/セトによる、少年ホルス暗殺事件。トトはイシスに蘇生呪文を教え、ホルスを守る手段を入れ知恵。

 7/セトとホルスの王位継承問題でモメている「神々の法廷」において、トトは太陽神ラーにやたらとコキ使われている。

 8/ホルスが王位を引き継ぐ。そのあと、イロイロあって王位は神から人間へ。天才イムヘテプにピラミッドの造り方を教えたり、技師たちに測量レクチャーをしたりと大忙し。その間に、他の神様たちはのんびりと自分の仕事をこなしていたとか、いないとか。

 9/トト、呪文のあんちょこを人間に盗られ大慌て。ラーに「責任取れ! 取り返して来い」と言われ、かなり落ち込む。

 10/外国に出張して、どういうわけかバビロニアの文書に記されてみたり。


 …うわ、長げぇ。(汗) 

 2と3の時のトトは、狒々の姿で描かれているので、トトとは別物のヘジュ・ウルという神さまの仕業でしょう。能力がトトに継承されるとき、どーやらついでに武勇や過去の悪行もトトに押し付けられてしまったらしい…。

 でも、ヘジュ・ウルは字が描けないハズなので、4から後はトト神がやった、ってことにしときます。


 残る中で注目すべきなのは7と10の違い。
 7の時のトトは、「お前、座りっぱなしだから足腰弱ってんじゃないの」とか、「貧弱児」とか言われて、相当インドアな感じですが、10では、遠くメソポタミアまで出かけて信徒獲得するフレンドリィでアウトドアな神様と化しています。
 単なる心境の変化じゃないでしょうよ。それは単なる心境の変化じゃない。明らかに別もんチック。
 と、いうわけで7と10の時は別人と設定!

 さぁて問題は8と9だ。
 見比べてみると…、どっちもやたらと世話焼きさん。人間に深く関与したお仕事をしてます。
 7と8の間を境に、トト神は、神々の後見人から人間の後見人へと変化している気がしますな。下々のことも気にかけるようになりました、って感じ? ってことは…

 …推測として、神話時代が歴史期に入る第3王朝(イムヘテプ生存時)頃のトトから二代目?

 まとめると、

 1閏日誕生・セクメト奪回あたりのエピソードは、原始の知恵の神ヘジュ・ウルがトンチで切り抜けた。

 2しかし、その時代、すでに初代トトは誕生していたらしい。

 3ヘジュ・ウル引退後、初代トトが知恵神の座を引き継ぎ文字を発明。王権の記録をつけはじめる。

 4神々が地上から去ったあと、体の弱かった初代トトは引退。わりと健康体な二代目は地上世界で積極的に活動する数少ない神の1人としてご多忙な任務をこなすようになった。

 …ってことでしょうか。
 ヘジュ・ウルじいさんはどう考えも頑強そのものだし、二代目もかなり戦える神様なので体はそれなりに鍛えてそうですが、なにゆえ初代トトは貧弱児? やはし文字を発明するだけあって、知恵オタクだったのか? それとも、体が弱いので「ボクには勉強しかないんだ」と、ガリ勉したタイプなのか…。
 なんにせよ、初代のトトは、あまり他の神と豊かにコミュニケーション出来ている感じはしない。友達いないから、ひとりでコソコソとイシスを助けている。

 そのくせ、頼れる存在ではあったらしい…。誠実さと優しさだけが「売り」の男なのか、初代トト(笑)。ありがちだよなァ…。


 はてさて、このような、絵に描いたような純エリート派な初代のトトさんですが、どうやら結婚して息子をつくったワケじゃなく、なんと自らの魔法でもって子供を作ったっぽいです。

 神様の創造呪文というのは、生命も創りだせてしまうものなのです。
 だから、創造呪文を使える神様たちはほとんど、「自分で自分を創った」というホンマですかと言いたくなるような肩書きを持っているのです。プタハといい、トトといい、ラーといい…。そんなムチャな。

 せめて細胞分裂にしようよ?(それもヤバそうだが。)

 初代はどうやったか知らないけど―――ヘジュ・ウルじいさんがどうにかしたんだろう―――、とにかく、二代目は初代が魔法で創った! だからお母さんはいないのだ!

 お母さんはいなくても、父さんとジイちゃんは健在だ。
 二代目トトは、ジイさんに体を鍛えられ、(「子供は外で遊べー!」とか。)
 父に書記としての仕事を教わり、(やっぱ神でも最初は修行しなきゃねぇ)
 ついでにマアト様やラーといった神々の使いっパシリもやって、(だから交友関係広いんだろう…)
 立派に成長して、初代トトの開発した「文字」に改良をくわえ、民衆文字や神官文字を生み出しましたのであります。

 頑張った、二代目! しかも、ちょっと路線を変えて、人間との交流を大切にしてみたところ、信徒数大幅アップ! 外国からもお呼びのかかる、超大手さんに(その言い方ちょっと語弊が…)なった!

 でもその反面、大切にしすぎて、秘密の巻物のありかを知られて回収するのに手間取ったり、「そりゃムリだろう」というお願い事をされたり、と、苦労も増えてしまったらしい…。

 そもそも、何でトップの知恵の神が1人だけなんだろう。全ての知恵の神がトト1人の責任のもとに統率されるってのは、幾らなんでもムチャでしょうよ。
 ギリシア神話みたく分業制にすれば良かったのに…。それはダメだったのか?


 こうして生まれた二代目の苦労とはいかに…?!→後半へ続く!



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