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「GOD*DIVA」


辞典を引くと、「ゴッド・ディーバ」の”ディーバ”は、オペラのプリマドンナ、または花形歌手、という意味らしい。うーん、まあ、そうだとするとヒロインのジルのことを指しているんだろう。

この映画は、好んで古代エジプトをモチーフに使いたがる、エンキ・ビラルという人が監督。
2095年のニューヨークの空には、宇宙から飛来したと思しきピラミッドが浮遊し、そこから古代エジプトの神ホルスが全裸で飛来する。
神々の目的は。そして神が一人の女性を探し求める理由とは――?

神話ネタは最小限。映像の美しさと、深いようでいて、あんまり深く考えなくても楽しめるテンポのよさが良。
とにかく神様たちが愉快。容姿はバケモノチックなのに、やたらと人間臭いホルスに爆笑。(胡坐組んだりしてな…。)

フィフス・エレメントを観て「こんなエジプトネタは認めねェ!」とシャウトした、エジプト神話ファンにも、きっと楽しんでいただける作品です。


【エジプト神話に絡む、あらすじ】

映画の宣伝やポスターには、「神があこがれたのは、月よりも青い彼女の涙」…と、描かれていた。
でもね。古代エジプト人の感性における月は、じゃなくて銀色なんだ。
太陽が金、銀の太陽といえば月のこと。でも大丈夫、映画には、月は一切出て来ないから。(笑
毎度思うんだが、日本ヘラ○ドは映画の内容観ずに宣伝文句決めてるんだろうか…。

 …まぁいいや。(ええんかい

青は古代エジプトにおける天空の色、ホルスの眼の色。
映画の世界の中は青一色に統一されていて、空も、空気も、すべてが青味かかっている。その統一感が素晴らしい。
ただ、青といっても、映画に出てくる「青」は、エジプト人が壁画などに使っていた青や、ファイアンスの青などとは、ちょっと違う。なんていうか、都会の黄昏時にビルに反射する青みたいな、切なく、半分濁った青い色。


このGOD*DIVAで大活躍なのは、何といってもホルス神。
何をやらかしたんだか知らないけれど、ヒエラコポリス(※”ノ”ではない、断じて!)で反逆罪に問われてしまったホルスが、永遠の眠りの刑を与えられる前に七日間の猶予を貰って、地球観光に訪れる。

 その彼の目的とは、
 宇宙全域でも数人しかいない、”神の子を宿せる女性”を訪問すること。

…ホルスの捜し求める女性こそ、青い髪と白い肌を持つ謎の美女、ジルだった。

神秘のゴット・パワーで全宇宙からジルの居場所を探り出したホルスは、
他の神々から死を宣告される七日後までに彼女に近づき、ナンパし、
自分の子種を授けなければならない。

その偉大なる子作り大作戦のため、ジルと交配できる種族=人間の男の肉体を探す、ホルス…。
最終的にホルスが見つけたのは、皮膚・内蔵ともに人工物は一切使われていない、神々が創造したままのオーガニックな肉体を持つ、主人公・ニコポル。
ニコポルは、かつて英雄と呼ばれ、たった今、30年の冷凍保存から目覚めたばかりの、解凍ものの人間だった…。


と、いうわけで!

 この映画の本当のタイトルは
 ホルスのナンパ物語〜鷹の目で狙った獲物は逃がさない〜

制限時間内にホルスがジルを落とせるか否か。――それが問題だ。



注)
以下はネタバレです。
これから映画を見に行く予定の人は、見ないほうがいいかもしれません。



神と人…?




【ホルス的 人類創造】

この物語の中では、人類はホルスが七日間で創造したことになっており、ホルスは地球に来るなり「我が子らよ、戻ってきたぞ」などと言っている。
うーん、旧約聖書にケンカ売ってるねェ(笑

しかし突如として空中に出現したホルスを見て、ヘリコプターに乗ってる人たちは「何だ! ハダカの男がいるぞ?!」と機関銃を向ける。
不審人物よばわりされたホルス、出会ったばかりの”我が子ら”を抹殺。

無礼者には空中爆死を。厳しいっスね…。


次にホルスは、自分を宿せる肉体を捜しにニューヨークの町に下りていく。
だが2095年のニューヨークでは、人工臓器や人工皮膚が一般的に出回っており、100%生身の人間というのが少ない模様。人の肉体は神々の作ったものだが、人工臓器は神々が作ったものではないので、肉体改造済みの人間と一体化することは出来ないらしい。
神を受け入れることの出来ない肉体の持ち主たちは、ホルスが入ったとたん、爆発。
ホルスが、次から次へと人間の肉体を爆発させるもんだから、世間では連続殺人事件と騒がれ始める。
人間に殺人犯呼ばわりされる神。

砕け散った人間の体をくっつけるとか、そういうフォローはナシらしい。


で、ようやく自分に合う肉体・ニコポルに出会ったホルス。
ニコポルの体を使って自分の子種を宿せる稀有な女性・ジルに近づいたとき、何か怪しい手段を用いて、拒む彼女を思いのままにしてしまい、出会ったその日に、いきなりベッド・イン。
次の日も「ノー」と言ってる彼女を押し倒してベッド・イン。神の力は女を押し倒すためにあるのか…。(笑

自分の意に反してホルスが勝手に子作りに励んでしまうのに怒った主人公は、果敢にもホルスに殴りかかる。だがしかーし。ホルスは神なので、殴ってもぺちぺち音がするだけ(笑

ニコポルの体を勝手に使い、三日目もジルを押し倒しつつベッド・インしてようやく任務完了。
女に酒を飲ませて押し倒す、風呂に入っているところに入っていく、など際どいマナー違反をたくさんしでかした挙句、ようやく自分の子孫が創造出来たようだ。神様…(T_T


――しかし、この三角関係は何て言えばいいんだろうか。ダブルベッドに主人公・ジル・ホルスと並んで横になってるのを見た時は、複雑な思いに囚われたよ、オレは^^;

ちなみにヒロインのジルにはホルスは見えない。彼女は、ふだんは話の通じる普通の人間でありながら、押し倒すときは鬼になるニコポルのことを、多重人格だと思っている。
「あなたの中にはレイプ魔がいるのね」なんつってるけど、そのレイプ魔ってホルスのことなんだよね。なんだかなぁ。


【そんなホルスのいいところ】

・ニコポルが自分の名前を知っていたことにご満悦。
・絶望したニコポルが「信じる神すらいない」と言ったとき「じゃあ私を信じろ」と即座にフォロー。
・眼からビーム。イヤな記憶を消したり、無くした体の一部を作ったり、敵を撃退したりと用途は多岐にわたる。
・主人公ニコポルと、「神だって女好き」という哲学について仲良く語れる。
・女について語り合ったあと、お約束のように男同士で殴り合える。(神なのでホルスが圧倒的に強)
・バケモノにまで名前が売れている。
・だが、アヌビスと間違われるのは大嫌い。
・ニコポルが用済みになったあとも、命を救うことは忘れない。
・性欲には性急だがとりあえず寛容な神のようである。


【もっとディープに神話ネタ】

この映画に登場するエジプトの古代神は三名。
ホルス、アヌビス、バステト。まぁ有名どころっスね。
映画のパンフやポスターで空中に浮いているピラミッドだが、あれは彼ら古代神たちの「お乗り物」で、映画の中の世界に恒久的にあるものではなく、ある日突然やってきた飛来物であるらしい。ホルスの「七日間の地球滞在」が終わると、神々とともにどっかへ帰って行く。…しかし、宇宙船にしちゃー形が…なァ…^^;


◎ヒエラコンポリス

位置と、古代における町の役目などは「古代エジプトMAP」をドウゾ。
ここは、エジプトの中でも、最初に王朝が築かれたとされる都市。もちろん、ヘリオポリスやヘルモポリスが宗教の中心都市として栄えだすよりも古い。

「ホルス」という名前を持つ神々は、かなり沢山いる。
ヒエラコンポリスに首都があった時代のホルス神は、「オシリスとイシスの息子」ホルスではなく、「ハトホルの息子(または夫)ホルス」…だったりする。

映画の中のホルスは、セト叔父さんと戦って王権を取り戻しそうには見えないので、ホルベヘデティやホル・ウルに近いのかも。「天空神ホルス」と呼ばれているのも、そのためだろう。(天空を象徴するホルスは、古い時代に多い)


◎アヌビス

映画の中では「ホルスの従兄弟」。…従兄弟というか、異母兄弟というか、まあ、関係的には兄弟みたいなもの。
黒犬の頭を持つ神で、何故だか海外の映画では「死神」呼ばわりされることが多いのだが、実際は「死者の守護神」と言ったほうが、しっくり来る。
彼自身が人間に死を宣告することは無く、ミイラ作りの代表者、死者の審判の立会人などを務める。

ちなみにホルスは、映画の中で二回もアヌビスと間違えられている。
…頭が鳥か犬かで、かなり違うような気がするんだが。

一発めでホルスとアヌビスを見分けたのは、主人公のニコポルだけっす(笑


◎バステト

言わずと知れた猫の女神。映画の中では性格が語られることも無く、重要な役割も無い。ただ単にエジプトの女神を出したかったのと、絵的にアヌビスと並べて収まりがいいの連れてこられたカンジ。
ホルスが地球に降りている七日の間、アヌビスとともに浮遊するピラミッド内で待っているのだが、相当退屈だったらしく、モノポリーを取り出して遊んでいる。
説明書をじっくり読みふけるバステトに注目!(笑

七日後にホルスが帰ってきた時には、バステトとアヌビスの周りに、遊び散らかしたモノポリーが散乱しているのであった…。
片付けろよ。神様。


◎神の子

古代エジプトには、「王は、神の直接の子孫」という思想があった。神が王に乗り移って王妃と交わることによって、神の子だねが宿るというものである。
たとえばハトシェプスト女王は、自らをアメン神の娘と称していた。
ニコポルがホルスに肉体を貸し、ジルと交わることによってホルスの子を宿させるというネタは、古代エジプトの伝承が元になっているのかもしれない。


◎幸せの青い鳥

七日後、ホルスは他の神々に死刑を宣告され、永遠の眠りについた状態で宇宙に去っていく。
だが意識の一部は地球に残していったようだ…。

ジルのペットとして付きまとう不思議な青い鳥。(鷹?)
エジプト的には、ホルスは金色のほうがシックリ来るのだが、映画全体の世界観が青いので、まぁ青でもいいんじゃないかと。
ただし、この青い鳥を幸せの象徴と呼んでいいものかどうかは、かなり悩むところである。

とりあえず… ニコポル、こぶ付きになっちゃったけど、ジルとお幸せに…。


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