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「クイーン・オブ・エジプト」


まず最初に言っておくと、この映画は旧約聖書の「列王記・上」第十章をモチーフとした作品である。
イスラエル王、ダビデの息子・ソロモンが、シバの女王ニカウレと恋に落ちるというのがコンセプト。ただ、大元の聖書ではわずか一節ぶんしか分量がないのを、93分の映画に直しているので、空想で膨らませたエピソードも。

主人公・ニカウレが統治するのは現在のイエメンに相当する「シバ」という小国なので、実際エジプトとはほとんど何の関係もない。
と、いうわけで、題名つけるんならクイーン・オブ・シバでなくてはならず、タイトルに大いに偽りありなのが根本的な難点なんだな、コレが^^;
まあ、パッケージ見て聖書の話だとは分かったんだけど、…まさか、エジプトがゼンゼン出てこないとは思いもよらず。あっはっは〜。

わんぽいんと地図

【ワンポイント】

外務省イエメン共和国データ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/yemen/

ちなみに、シナイ半島でもイエメンから北にかけての辺りは、かつてエジプトの国土の一部で、鉱山が多くあったところです。
劇中に出てくる「オフィルの金」というのは、エジプトの王たちが切り開かせた鉱山だと思われます。


【STORY】

ニカウレは、父を殺した王に復讐を遂げ、シバの王位を奪った若く美しき女王。ある日、彼女のもとにイスラエルの王、ソロモンからの使者が遣わされる。彼らは、乳香の貿易を独占するシバに、乳香を扱う権利を渡すよう、迫りに来たのでした。
しかし気丈なニカウレはそれを断り、貪欲なソロモン王がどんな顔をしているか自らの目で見て確かめてやる、もし和平がうまくいかなければナイフを使うまで、と言い放ち、腹心を連れ、少年に身をやつしてソロモンの宮廷に乗り込むのでした。

ソロモンに男装を見破られてしまった彼女は、その場でソロモンと謎をかけあい、互いの知恵を認めます。
改めて、女王としての装いで王と謁見した彼女は、多くの贈り物をおくり、取引を申し出ます。乳香は自分たちの国にとって必要な品であるため、交易に手を出さないで欲しいこと、また、かわりに失われたオフィル鉱山の金をすべて差し出すこと。オフィルへの道は、自らが案内役となって教えましょうと。
しかし、王が部下たちとオフィルへ向かったとき、裏切りをもくろむ部下たちの反乱が。そして、その罪はニカウレになすりつけられてしまうことに。

美しいシバの女王を愛してしまっていたソロモン王は、暗殺者の処刑を迫る人々と、自らの愛との間で苦悩します。ニカウレを処刑しなければ、国民への示しがつかず、部下の心も離れるばかり。しかし、証拠はないものの無実であるニカウレを殺せば、自らの心は救われない…。叡智の象徴、王がとった正義の裁き、そして真の暗殺者をあぶりだす一計とは? クライマックスのどんでん返しが、タイトル間違えちゃったこの作品に賞賛を与える!


【見所】

なんつっても映像技術。そして衣装。女王ニカウレと、その家臣のお兄さんたちの衣装に胸キュンです。単なる布なのに、どうしてあんなにオシャレに出来るのか。思わずマジマジと見てしまいました。
何より、無駄なCGは全く使わず、光の使い方もうまい。内容のウスさを派手な光や効果音で誤魔化してる作品のキライな人間からすると、安心して見られる映画です。
ただ、ちょっとね。「おいおい、このカメラーワークは…コマーシャルに入る前ですか」みたいなかんじで、部分的に間がありすぎるのが欠点かも。

聖書の設定をふんだんに使ってるのも、いいところ。二人の母親が、子供は自分の物だと言い張り、ソロモン王は剣で二つに裂いてそれぞれの母親に与えようという。すると、本当の母親だけが「子供を殺すのなら、相手にゆずります」と言う。
…と、いう、よく知られた古事も実際にやってくれちゃいます。
(実はそのイベントが、クライミックスへの伏線になっています。なあるほど! と舌をまくシナリオの巧さ)

セリフの端々に、列王記のほかの設定が出てくるのもいいですね。ソロモンが「わたしは兄を殺させた」と告白するところとか、神に約束した神殿を建てようとしているところとか、妃がたくさんいるところとか。
ニカウレの言う「わたしが国で、あなたの御事績とあなたのお知恵について聞いていたことは、本当のことでした。わたしは、ここに来て、自分の目で見るまでは…」なんかは、もろに列王記からのセリフです。クライマックスの「あなたの臣民は、なんと幸せなのでしょう」は、実際にシバの女王がソロモンの宮廷で口にするセリフなので、いいとこに持ってきたなー! ってカンジですね。


【タイトルを間違えた理由?】

と、まあ、ここまで褒めてしまうと、やっぱり冒頭に挙げた「タイトル間違い」が決定的にイタイわけですが。間違えちゃった理由、それはおそらく、以下のようなものではないかと。
ソロモン王は、列王記の3でエジプトのファラオの娘を妻として迎えてます。映画の中で、ソロモンがニカウレに「恋をしたことがないの?」と聞かれ、「一度だけ、ある。彼女はエジプトの女王だった…」と答えるシーンは、この、列王記のエピソードをもとにしたセリフだと考えられるんですね。
そして、ソロモンは、シバの女王ニカウレに、かつてエジプトの女王に捧げた恋歌を朗誦します。ま、このシーンだけ見ると、恋したエジプトの女王=ニカウレだと、勘違いするかもしれんですね。

しかし、よくよく聞くと、ソロモンは続けて「彼女は高熱で死んだ。それ以来、恋をしたことがない」と言ってるんで、かつて恋した女王と、いま目の前にいるシバの女王が別人だってことは、気がつきそうなもんですが。


【アダルティーな見所】

ソロモンの純愛っぷり。
何もそんなにキッスに時間かけんでも。何もそんなに眼差しで語りあわんでも。ソロモンの泥臭いほどの人間っプリがええカンジですわ。
そして、ちょっとアレです。…夜のシーンの音声は、大音量で聞けないカンジです。^^;
なんてったって、シヴァの女王を演じる女優ハル・ベリーは、かつてボンド・ガールもつとめたお方ですから。歴史者というよりは、恋愛ものの映画ですな。



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