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タイトル ラハブについて
記事No 2751
投稿日 : 2007/09/06(Thu) 01:25
投稿者 左暗   <volkettya@yahoo.co.jp>
はじめまして。左暗と申す者です。

私はエジプト神話も大好きなんですが、それと同じくらいに「悪魔」について興味があります。
といっても、オカルトネタは抜きの、「神話」に語られている悪魔についてですが。

それで、悪魔について調べているうちに、「ラハブ」という悪魔に目が留まりました。

旧約聖書に登場する悪魔なのですが、一説によると、ラハブはエジプトを象徴しており、それが神々に叩きのめされる様を描くことで、自分たちを迫害したエジプトが滅んでしまえばいい、という願望を表現している、のだそうです。

さらに調べると、ラハブはエジプトの守護神で、ファラオの守護者、原始の水の支配者であるなどという話もありました。

そして、どこで見たのかはすみません、覚えていないのですが、「ラハブはエジプトの神がもとになっている」というような話を見つけました。

そこで、エジプトの神の中にラハブの元となった神はいるのか探したのですが、どうもそれらしい神は見当たりません。
(「原始の水の支配者」ということで、アポピスかな? とも思ったのですが、どうも違う気がしたので。)

そこで、かねてより愛好していたこのサイトの神様名簿を見ていると、「レシェフ」のところに「旧約聖書においては、天変地異をもたらす悪魔として描かれている。」という記述を見つけました。

このレシェフこそがラハブなのでしょうか? それとも聖書のレシェフは全く別の悪魔で、ラハブのルーツはエジプトにはないのでしょうか?

ご多忙とは存じ上げますが、ご教授のほどよろしくお願いします。

タイトル とりあえずtoroiaさんを召還…
記事No 2752
投稿日 : 2007/09/06(Thu) 19:55
投稿者 岡沢 秋
はじめまして。
聖書から見たエジプトはあまり知らないので役に立てるかどうかはナゾなので、詳しそうな人を召還してみます。成功したらきっと教えてくれるはず!(投げ槍

> 旧約聖書に登場する悪魔なのですが、一説によると、ラハブはエジプトを象徴しており、それが神々に叩きのめされる様を描くことで、自分たちを迫害したエジプトが滅んでしまえばいい、という願望を表現している、のだそうです。

というわけでホコリをかぶっている旧約聖書を取り出してはみたのですが、ぜんぜん見た覚えのないお名前ですよ…。
適当にググったらイザヤ書に出てくるというので探してみたわけですが、

30.6
ネゲブの獣についての託宣。(中略)エジプトの助けはむなしくはかない。それゆえ、わたしはこれを「つながれたラハブ」と呼ぶ。

…これしか見つからなかったですよ。
なんか違うような…。さすがに旧約聖書ぜんぶ読んで探すとか面倒なんで出来ないですが、ドコに出てくるんでしょうね。そもそもラハブなんて「悪魔」は存在するのかな?

まず、そこから原典を探ったほうがよさそうな予感。

タイトル Re: とりあえずtoroiaさんを召還…
記事No 2754
投稿日 : 2007/09/06(Thu) 23:21
投稿者 摩伊都
横レス、すいません。

> まず、そこから原典を探ったほうがよさそうな予感。

↑賛成です。

聖書は比較的好きなのですが、旧約聖書はダイジェスト版と解説書しか持っていないことに昨夜気がつきました。(><)
でも、1時間と少し・・・解説を半分まで読んでみましたが、該当箇所は無かったです。
その悪魔の登場する前後の環境が分かれば、もう少し調べやすいと思うのですが?
それとも、その悪魔の名前、微妙に違っていませんか?

タイトル 追伸
記事No 2755
投稿日 : 2007/09/06(Thu) 23:50
投稿者 摩伊都
聖書ではないですが、
微妙に良く似た名前の神は、『エヌマ・エリシュ』に出てきます。

初めの辺り。
「神々がその混合水の中で創られた。(男)神ラハムと(女)神ラハムが姿を与えられ・・・

「母なるフブル(「冥府の河」の意。ティアマトのこと。)は、毒蛇、(中略)・・・海の怪獣ラハム・・・(略)を作った。
というのがありました。
関係あるかしら?

タイトル 返信ありがとうございます。
記事No 2756
投稿日 : 2007/09/07(Fri) 00:40
投稿者 左暗   <volkettya@yahoo.co.jp>
> というわけでホコリをかぶっている旧約聖書を取り出してはみたのですが、ぜんぜん見た覚えのないお名前ですよ…。

うーん、そうですか。ヨブ記にも登場するようですが、どうもリバイアサンとの明確な区別をつけていないようなのです。どちらも海の怪物で、竜のような姿をしているので・・・。

> そもそもラハブなんて「悪魔」は存在するのかな?

そこは間違いないと思います。こういった怪物が悪魔にされるのはよくあることですし、よく混同されるリバイアサンも悪魔として名を連ねていますので。

> 摩伊都さん
> 聖書ではないですが、
> 微妙に良く似た名前の神は、『エヌマ・エリシュ』に出てきます。
>
> 初めの辺り。
> 「神々がその混合水の中で創られた。(男)神ラハムと(女)神ラハムが姿を与えられ・・・
>
> 「母なるフブル(「冥府の河」の意。ティアマトのこと。)は、毒蛇、(中略)・・・海の怪獣ラハム・・・(略)を作った。
> というのがありました。
> 関係あるかしら?

横レスありがとうございます。
はい。ティアマトの作った怪物ラハムですね。私もそこまでは(ラハブのルーツを)たどることができました。どうやらラハブの直接の元はそのラハムのようです。

しかし、ラハブは「エジプトの守護神」ということなので、何かエジプトとラハブに関係はないのか、と調べましたところ、このサイトで「レシェフ」の名前を見つけまして。

ラハブのルーツ、ラハムはバビロニア出身。レシェフも、バビロニアを作ったアムル人の神・・・ということで、そこにもしかしたら関係があるのではないか、と思い、質問させていただいたのです。

申し訳ありません。質問の仕方が悪かったようです。

ともかく、ラハブという悪魔が存在することは、確かなようです。
また、「怪物じみた天使」という説もあるので、「堕天使」と呼んだほうが良いのかも知れませんが、私は「悪魔」と「堕天使」には大した違いは無いと思いますので。

タイトル そもそも旧約聖書にいるんだろーか
記事No 2757
投稿日 : 2007/09/07(Fri) 01:38
投稿者 岡沢 秋
> > というわけでホコリをかぶっている旧約聖書を取り出
> > そもそもラハブなんて「悪魔」は存在するのかな?
>
> そこは間違いないと思います。こういった怪物が悪魔にされるのはよくあることですし、よく混同されるリバイアサンも悪魔として名を連ねていますので。

いや、最初に「ラハブは旧約聖書に登場する悪魔で」って書かれているので。そう書かれるからには旧約聖書に名前があることが前提ですよね。聞いたこともないし、どういう属性/役割で、どういう場面に出てくる名前なのかも分からないので、それ以上調べようがないです。
どなたか旧約聖書にラハブなる単語が出てくる場所はご存知ですか。または「別の名前で出てくる、こいつがラハブだ」というのをご存知の方は? 左暗さんがお調べになったことは?


> はい。ティアマトの作った怪物ラハムですね。私もそこまでは(ラハブのルーツを)たどることができました。どうやらラハブの直接の
元はそのラハムのようです。

そのソースはどこからきたんでしょう…。
エヌマ・エリシュの話がラハブのルーツだったら、エジプトもレシェプもぜんぜん関係ないってことになりそうですよ。その説が正しいなら、アッカドのラハムがエジプトに来てファラオの守護者やったりエジプトの象徴になったりしなきゃなりません。

それにレシェプは、そもそも、旧約聖書にそのままの名前でバアルと一緒に出てくるわけで、ラハブという名前では出てこない。

私は何か質問の意味を間違えてますか…。

タイトル なるほど。申し訳ございません。
記事No 2758
投稿日 : 2007/09/07(Fri) 02:08
投稿者 左暗   <volkettya@yahoo.co.jp>

ラハブは聖書に登場はするがほとんどリバイアサンと混同されており、聖書では詳しく述べられてはいない、ということをもっと説明すべきでした。お手数かけてしまい誠に申し訳ありません。

> どなたか旧約聖書にラハブなる単語が出てくる場所はご存知ですか。または「別の名前で出てくる、こいつがラハブだ」というのをご存知の方は? 左暗さんがお調べになったことは?

ヨブ記に「神は怒りを抑えられることなくラハブに味方する者も神の足もとにひれ伏すであろう。」とあります。
このラハブというのが神の反逆者のリーダー、ということで悪魔とされており、一説ではバビロニアのラハムがもとである、とされているのです。
そして、聖書研究者の間でラハブはユダヤ人の目の敵、エジプトを象徴させたものではないか、と言われているのです。

> エヌマ・エリシュの話がラハブのルーツだったら、エジプトもレシェプもぜんぜん関係ないってことになりそうですよ。その説が正しいなら、アッカドのラハムがエジプトに来てファラオの守護者やったりエジプトの象徴になったりしなきゃなりません。
>
> それにレシェプは、そもそも、旧約聖書にそのままの名前でバアルと一緒に出てくるわけで、ラハブという名前では出てこない。

左様ですか。
どうも私は自分の妄想を肯定するために「レシェフ」の情報を都合よく解釈していたようです。すみません。
ともかくご多忙の中、エジプトにはラハブに相当する神はいない、ということをお教えいただきありがとうございました。

> 私は何か質問の意味を間違えてますか…。

申し訳ありません。失言でございました。
私は掲示板でのマナーというものについて非常に未熟だったと思います。お詫び申し上げます。

タイトル 旧約聖書のここに
記事No 2759
投稿日 : 2007/09/07(Fri) 03:25
投稿者 toroia
イザヤ書30章7節(イスラエルの敵がエジプトに助けを求める、というくだり)
「エジプトの助けは空しくはかない。それゆえ、わたしはこれを『つながれたラハブ』と呼ぶ」

同、51章9節
「ラハブを切り裂き、竜(タンニーン)を貫いたのはあなたではなかったか。
海を、大いなる淵の水を、干上がらせ、深い海の底に道を開いて
贖われた人々を通らせたのはあなたではなかったか」

詩篇40章5節
「いかに幸いなことか、主に信頼をおく人、ラハブを信ずる人にくみせず欺きの教えに従わない人は」
ここは複数形(レハビムRehabim: 文法上、最初の母音は変化してます)。

同、87章4節 神の栄光を語る人々の言葉として
「わたしはラハブとバビロンの名をわたしを知る者の名と共に挙げよう。
御世、ペリシテ、ティルス、クシュをもこの都で生れた、と書こう」

同、89章11節
「あなたはラハブを砕き、刺し殺し、御腕の力をふるって敵を散らされました」

ヨブ記 既出のほかに26章12〜13節
「神は御力を持って海を制し英知をもってラハブを打たれた。
風をもって天をぬぐい、御手は逃げる大蛇を刺し貫いた」


旧約聖書は一貫した比喩とか思想をもっているわけではないのですが、
詩篇89章、ヨブ26章、イザヤ51章にみえる神話の断片からして、ラハブとは
古代中東に広まっていた「原初の、混沌としての海=怪物」の一種だったのではないか
という推測が一般的です。バビロニア神話のティアマトやラッブ、ウガリット神話のヤム・ナハル、
旧約聖書のレヴィアタンやタンニーンなどに連なる系譜ということです。

エジプトとの関係も明らかで、イザヤ30、詩篇87のいうラハブはエジプトの代名詞とされています。
またイザヤ51の話はモーセの海割りのこと。紅海を割った伝説を竜を裂いた神話になぞらえ、
「過去にあったことなのだから今度も助けてヤハウェ」と言っているわけです。
ユダヤ教において紅海はエジプトの代名詞でもあり、エジプト=割られた海=ラハブという連想があったんだと思います。



神話的起源は上記のようにメソポタミアかシリアあたりですし、
語源や類似語は、レヴィアタンなどとは違いはっきりしたのは存在しませんが、
バビロニア語にそれっぽいのがあるとされています(例えば上記のラッブlabbuあるいはrebbu。バビロニアのラハムは獣人で、ラハブとは無関係です。
わたしのページですがhttp://www.toroia.info/monster/monster3Lahmu.htmlを参照してください)。
エジプトは(怪物の起源という意味では)関係ありません。


というわけで、そんな経緯から後世ラハブが(悪の帝国)エジプトの守護者とされるようになったのでは。
天使とか悪魔とかされるようになったのは、原初の怪物としてのラハブという神話が失われ、
『タルムード』などに伝承や神話が再編集されるようになってからのことだそうです。
(一般書にある天使や悪魔についての解説は、こういう伝承の変遷や原典の年代を無視しちゃってることが多い)

タイトル ありがとう!
記事No 2760
投稿日 : 2007/09/07(Fri) 11:20
投稿者 岡沢 秋
さすが。旧約聖書読んでるうちに気持ちよく寝てしまっていた私ちは違う(笑) 紅海がエジプトで重要な役目を持ちはじめるのは、エチオピアとの交易やシナイ半島の鉱山資源の活用が始まる新王国時代以降でしょうから… ユダヤ人がエジプトから脱出した後のイメージ、で辻褄が合いますね。

ところで、

> またイザヤ51の話はモーセの海割りのこと。紅海を割った伝説を竜を裂いた神話になぞらえ、
> 「過去にあったことなのだから今度も助けてヤハウェ」と言っているわ
けです。
> ユダヤ教において紅海はエジプトの代名詞でもあり、エジプト=割られた海=ラハブという連想があったんだと思います。

モーセの出エジプトで割られた海って、地中海側だったと思っていたのですが、旧約聖書のイメージだと紅海なんですか?(確かにシナイ半島に渡るなら紅海のほうが圧倒的に近いんですが。)

タイトル Re: 旧約聖書のここに
記事No 2761
投稿日 : 2007/09/08(Sat) 00:23
投稿者 摩伊都
さすが、toroia さん。
旧約聖書のその箇所をよく見つけましたねえ。

> バビロニア語にそれっぽいのがあるとされています(例えば上記のラッブlabbuあるいはrebbu。バビロニアのラハムは獣人で、ラハブとは無関係です。

音が似ているだけですか・・・。残念。(><)


ところで、
ネットを見ていたら、この話題に関係あるようなことを書いている人がいるのを見つけました。
どれぐらい信憑性があるかは分かりませんが・・・
ヘブライ語が分かって、聖書に精通している人のようですね。

://theology.doshisha.ac.jp:8008/kkohara/lecture.nsf/504ca249c786e20f85256284006da7ab
/f961bc71de7b49e5492569fc0056eb63/$FILE/resume09a.pdf

バビロニア神話についての、この人の解釈がおもしろいと思いました。

タイトル ありがとうございます
記事No 2762
投稿日 : 2007/09/08(Sat) 01:04
投稿者 左暗   <volkettya@yahoo.co.jp>
うわあ。詳しい返答をありがとうございます。

> バビロニア語にそれっぽいのがあるとされています(例えば上記のラッブlabbuあるいはrebbu。バビロニアのラハムは獣人で、ラハブとは無関係です。

あれ、ラハムは関係無かったのですか。ラッブですか。うーん、私の勉強不足というか、調査不足でしたね。勘違いを正しておきます。なんでラハムはドラゴンだと思ってたんでしょう。
troiaさんのサイトを拝見させていただいたのですが、最後の

「というわけで、ラフムはドラゴンではありません。」

の部分から推測するに、ラハムがドラゴンである、というのは広く知れわたっている勘違いなのでしょうか。「ラハム」で検索するとどのサイトでも「海竜」とか説明されていますし。何かのゲームの影響でしょうか。

> エジプトは(怪物の起源という意味では)関係ありません。

そうですか・・・やはりラハブはエジプト神話等とは無関係だったのですか。やっともやもやが解けました。

あ、私が「ラハブはもとはエジプトの守護神」というのを見つけたのは、Wikipediaでした・・・。

あれは、後世になって、「そういうことにされた」という意味だったのですね。
勉強になりました。

タイトル まとめて
記事No 2763
投稿日 : 2007/09/08(Sat) 20:24
投稿者 toroia
岡沢さん

> モーセの出エジプトで割られた海って、地中海側だったと思っていたのですが、旧約聖書のイメージだと紅海なんですか?

あっ
すみません、子供のころから出エジプトは紅海側だと無意識に思っていたのですが、
手元の聖書(新共同訳)についてる地図では地中海側を通ったことになってますね……。

ただ、聖書の中だと紅海も地中海も「葦の海」と表現されていて、具体的にはわからないのです。

> なお、この「海」がどこに当たるかは、出エジプトのルートについての旧約聖書の伝承自体が相互に矛盾しており、
> 残念ながら特定不可能である(山我哲雄『聖書時代史 旧約篇』p.33)

理由は調べていませんが「出エジプト 紅海」で検索してもそれなりにヒットするので、紅海というイメージはあったようです。


ちなみにユダヤ教の影響を受けて誕生したマンダヤ教でも海割りが起こったのは紅海であるとされていて、
エジプトからの脱出が魂の救済を意味するとかなんとか。
この宗教ではプタハ神がプタヒル(Ptahil、ilはアラム語で「神」)という邪神になっているくらい。



摩伊都さん

> 旧約聖書のその箇所をよく見つけましたねえ。

その手の本には、ラハブという単語がどこにあるのか網羅している情報が載っていたりするのですよ。
そうでなくても今ではオンラインで聖書の全文検索できますし。


左暗さん

> ラハムがドラゴンである、というのは広く知れわたっている勘違いなのでしょうか。
ゲームの設定などは詳しくないですけど、『幻獣ドラゴン』とか『幻想世界の住人たちII』とかには海竜だと書かれているので、
そのあたりのネタ本が原因ではないかと。
おそらくさかのぼると『古代オリエント集』にはいっているエヌマ・エリシュの日本語訳に「海の怪獣ラハム」とあるのが出典に近いと思います。
なぜこういうふうに書かれているかというと、『古代オリエント集』が出版された1978年にはまだラハムがどういう姿をしているか学者の間でも謎だったから。
正確にわかったのは1982年で、W.A.F.Wiggermannが雑誌「Jaarbericht - "ex oriente lux"」27巻(1981-82年)で発表した論文が、
初めて正確な「名称」と「図像」の同定をしたものらしいです(私はこの論文は未見ですが)。



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