過去ログ入り口へ

タイトル テュールについて
記事No 2664
投稿日 : 2007/07/10(Tue) 19:07
投稿者 Disk
はじめまして
ロキの項(とチュールの項)を読んでいて気になったのですが
ロキの「チュールの妻との間に作った子」ってロカセナの発言のことですよね?
あれって前から思ってたんですがアングルボザのことじゃないんですか?
いや、何の根拠もないんですが・・・
もしそうならチュールがフェンリルの世話させられてたのも分からなくもないような
誰でも考えそうなことだから過去ログにあるかと思って見てみたんですが無さそうなのでご意見お願いします

タイトル Re: テュールについて
記事No 2665
投稿日 : 2007/07/10(Tue) 19:17
投稿者 岡沢 秋
いらっさいまし。

> ロキの項(とチュールの項)を読んでいて気になったのですが
> ロキの「チュールの妻との間に作った子」ってロカセナの発言の
ことですよね?

です。

> あれって前から思ってたんですがアングルボザのことじゃないん
ですか?

んー、チュールの妻のところには「夜這い」に行って浮気して子供を
作っているので、現実的に、三人も作れないというのがあります。(一
人目でバレる、普通だと…)
あと、ロキの口論でロキがチュールに言う「お前の女房は俺と子供を
こさえたのさ」の「子供」が複数形になっていないと、この説は成り立
たないですね。

またアングルボザはアースでもヴァンでもない魔女とされていますが
、おそらく巨人族。彼女がロキとの間に化け物たちを生んだのはアース
ガルドのなかではなくべつの場所(「巫女の予言」では神々の世界と巨
人たちの世界の境界にある太古の森に設定されている)で、そこで密か
に育っていた災いの子供たちをオーディンが探し出して殺そうとする(
地下世界に投げ落とす・海に捨てる)わけなので、これもチュールの妻=
アングルボザ説には結びつかない。

フェンリル狼とチュールの関係については、フェンリルが法や秩序の
破壊者を象徴しており、右腕を持つ完全体のチュールが秩序の守護者と
いう役割を持っていたことから理由をつけたほうが、すっきりしそうに
思います。

タイトル Re^2: テュールについて
記事No 2666
投稿日 : 2007/07/10(Tue) 19:47
投稿者 Disk
なるほど。
素早い返答ありがとうございます
そうか、外国語なら確実に「複数形」ってものが絡んでくるんですね

ついでに質問したいのですが「バルドルの夢」で出てくる巫女は
アングルボザを匂わせていますがあれはアングルボザですか?
また、そうだとしたら生きていると思いますか、死んでいると思いますか?
異説として「ロキはアングルボザの心臓を食べて子供を生んだ」みたいな記述を見かけたことがあるので
自分ではその時にアングルボザは殺されてヘルが生まれたんじゃないかと妄想しています(ヘルだけ人型だし)
さらに妄想は膨らみヘルの青白い半身とはアングルボザが取り憑いているのではないのか・・・!
・・・すいません、後半は気にしないでください
テーマが変わるならまた別で質問したほうがいいのかな?

タイトル Re^3: テュールについて
記事No 2667
投稿日 : 2007/07/10(Tue) 20:55
投稿者 岡沢 秋
ああ、同じスレの質問でいいですよ。えっと…

> ついでに質問したいのですが「バルドルの夢」で出てくる巫女は
> アングルボザを匂わせていますがあれはアングルボザですか?
> また、そうだとしたら生きていると思いますか、死んでいると思いますか?

んー、匂わせているのではなく明確にアングルボザのようです。オーディンも女巨人も偽名を語って会話していますが、最後に「お前、アングルボザだろ」「いかにも、そしてあなたはオーディンですね」とお互いを見破りあう。

そして死んでいることも明らかにされている。最初は墓の中にいるわけなので…

エッダには、他にも別バージョンの伝説として、オーディンのかわりにヘルモーズが冥界に下る話、ニーベルンゲン伝説のブリュンヒルドが冥界に下る話があります。どちらも冥界の入り口で「女巨人」に会っている。ということは、冥界の入り口を守る役目の女巨人っていうのが、お約束なんじゃないのかな。と。

面白いのが、フィンランドの神話でも冥界トゥオネラの入り口を守るのは半分死んだ娘さんなんですよ。生死の世界をわかつのは女、というのが、何かルールとして北欧にはあるのかなぁ。と思ってみたり。これは余計なお話ですが^^;

ちなみにヘルモーズのVerでは、冥界で待ってる女巨人はロキの化けた姿じゃないかと言われてます。その女巨人ひとりだけ涙を流さないために、バルドルは地上に戻ってくることが出来ない。


> 異説として「ロキはアングルボザの心臓を食べて子供を生んだ」みたいな記述を見かけたことがあるので

「ヒュンドラの歌」ですね。

"ロキは半焼けの女の心臓を見つけ、菩提樹で焼いた心臓を食べた。性悪女のために孕み、その時から地上にありとあらゆる怪物が生まれでた"

アングルボザかどうかは分からないですが、そういう解釈も出来ると思います。ただ、その前にあるのが

"ロキはアングルボザとの間に狼を生み、スヴァルジルファリとの間にスレイプニルを生んだ"

という記述なんで、アングルボザが2回出てくるのはおかしいかな? という気もします。

ちなみに焼いた心臓を食べるモチーフはニーベルンゲン伝説のジーフリト(ファーヴニルの心臓を食べて動物の言葉が分かるように)や、グットルム(狼の心臓を食べてバーサーカー化)など他の物語にも出てくるお約束で、「心臓を食べることによって、その心臓の持ち主の能力を身につける」という意味があるようです。

タイトル Re^4: テュールについて
記事No 2668
投稿日 : 2007/07/10(Tue) 21:31
投稿者 Disk
> エッダには、他にも別バージョンの伝説として、オーディンのかわりにヘルモーズが冥界に下る話
> ちなみにヘルモーズのVerでは、冥界で待ってる女巨人はロキの化けた姿じゃないかと言われてます。その女巨人ひとりだけ涙を流さないために、バルドルは地上に戻ってくることが出来ない。

え、それってセックのことですよね
あれって冥界の番人だったんですか?
確か洞窟、とは書かれてたけどヘルモーズ一回帰ってきてからの話なのでてっきりヨートゥンのどっかの洞窟かと思ってたんですが・・・

>「ヒュンドラの歌」ですね。
そう、それです
確かその周辺か同じ本(谷口エッダ)内かは忘れたけど
「ロキが生んだ(アングルボザじゃなく)女巨人が一番恐ろしい」
みたいな事がかかれてたので
「最も恐ろしい女巨人」=「冥界の主人ヘル」と解釈してました

確かそのエピソード周辺で「ロキが8年(くらいだったような)の間地下で乳搾り女になった」とかいう記述があったので
ロカセナの「女になって子を産むとは」っていうニョルズの発言はスレイプニルのことじゃなくこっちを指してるんじゃないかと思ってます
すいません、今手元に資料がないのであやふやですけど

タイトル 途中からアングルボザについて…か。
記事No 2669
投稿日 : 2007/07/12(Thu) 15:21
投稿者 岡沢 秋
> え、それってセックのことですよね
> あれって冥界の番人だったんですか?

あーーー
適当なこと言ったですね。間違ってます。
モーズグズでしたっけ、ギョル橋のたもとで会うのは。セックは戻ってきてから世界中に「バルドルのために泣いてくれ」と触れ回るときに会う巨人なので別人ですね。。。

> 確か洞窟、とは書かれてたけどヘルモーズ一回帰ってきてからの話なのでてっきりヨートゥンのどっかの洞窟かと思ってたんですが・・・

ええ、あの、北欧神話の地理は実はアテにならないのです。九つの世界があることになってますが、どこでどのように繋がってるかが定まっていないので、実際どこなのかは分からないという面白世界です。

セックとは別の話ですが、娘が冥界の女王をやっていること、ラグナロク後に死者たちが爪で出来た船で蘇ってくるときに先頭に立つとされていることなどから、ロキと冥界は無関係ではないのだろうな、と思ってます。

> 確かそのエピソード周辺で「ロキが8年(くらいだったような)の間地下で乳搾り女になった」とかいう記述があったので
> ロカセナの「女になって子を産むとは」っていうニョルズの発言はスレイプニルのことじゃなくこっちを指してるんじゃないかと思ってます
> すいません、今手元に資料がないのであやふやですけど

ロカセナの中です。オーディンがロキに言います。
ロキが神々に対して仕掛けるセンナへの応答(反撃)であるとこからして、何か不名誉な内容なんだろうなと思うわけですが…。

深読みしすぎかもしれませんが「女になる」には文字通り妊娠出産可能な女性に性転換する以外に、「ホモの女役をやる(ゲルマン戦士的に最大級の侮辱)」という意味があるのです。サガで「女になる」という言い回しが出てくるときは、だーいたい、その意味合いです。

んで、ホモを指して侮辱するときは、「後ろに立つ」という言い方もするんです。馬の交尾のポーズです。なのでロキが牝馬に化けて馬と交尾するというのは、文字通りの意味であるとともに、もしかしたら、上記のような意味合いも隠喩しているのじゃないかなあ。

というわけで、「オマエ女やったじゃねーか」(最大級の侮辱)の件は、単に心臓で孕んで子供を作りました…では、あまり意味のある侮辱にならない、馬だからこそ呪術めいた侮辱になる→スレイプニルの件 っていう解釈になったんじゃないのかな? とか。

ヘルたちの三兄弟はアングルボザが生んでいると素直に読めばいいんじゃないでしょうか…。
ロキ自身が生んだと思える記述はないし、ロキは男なんだから心臓食ったくらいで妊娠出産できないでしょう(笑) しかも三人も。
年月も、あわない。8年で3人子供を作るとは?

ただ、神話の中の「xx年」とか「xx日」は正しくないケースが多いんです。実際は1年くらいでも、体感した長さを表現するために「9年」などと言い換える場合が多い。むしろ、本当は8ヶ月くらいの話で、馬として子供が生まれるまでの時間を指している可能性も…。

「ロキの生んだ魔女」は、知られている中でロキの娘がヘルしかいないことからそのようにも取れるけれど、もしかしたら、ヘルではないかもしれませんよ。知られていない別の何者かが存在したかもしれませんし。
納得のいく根拠が挙げられるならそれでよし、無いならまぁ、好きに想像すればいいやってことで。


ここまでのお話からすると、Diskさんはアングルボザに興味をお持ちなのかな?
私は南国生まれゆえ北欧の神様たちとはあまり親しくなく、それほど語る言葉はもちませんが…

アングルボザの素性については、

 ・おそらく醜い(巨人は基本的に醜いことになっている)
 ・予言の力を持つ(巨人族にもフリッグのように予知の力を持つ者がいるという、その意味ではノルニルの一人?)
 ・死後は冥界の入り口に住んでいる、というかそこで死んでいるが蘇ることが可能
  ラグナロク時に死者たちが蘇りヘルから飛び立つことになっているが、その中に混じっている可能性あり
 ・死因は不明だが、むしろ最初から生きていない(死んでいるとも言いがたい、休眠状態)にある太古の存在だったかも?

あたりが、言えるのではないでしょうか。



過去ログ入り口へ