ヴォルスンガ・サガ/ワルタリウス

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人物考察




 何といっても、この物語のウリは若い頃のハーゲンが「ニーベルンゲンの歌」のイメージと全然違わないってことです。

 お間抜けだったり若気の至りでアレやコレやしちゃってたら「えぇ?! く、クールな戦士だと思ってたのにッ…!」な感じですが、大丈夫。彼は若いときからクールです。そんでもって、財産とか黄金とかそういうものにあまり興味が無いのも一緒で、フン族の宮廷を抜け出すときも、何も持たず身一つでフラリといなくなってしまいます。
 さすが、ニーベルンゲンの財宝をライン河に沈めた男。(クールというのか? それは)

 ウァルターが、お宝と馬をくすねた挙句、カノジョまで掻っ攫って逃げ出すのに対し(笑)、ハーゲンはとても欲が無い…。
 実はちゃっかりさんだな? ウァルター!

 逃げ出す理由も全然違います。
 ハーゲンの場合、国もとで王権が交代したのが原因。たぶん家族とか国とか心配だったんでしょう。さすが忠義の徒ハーゲン。若い時からお国一筋です。

 対して、ウァルターの場合、ムリヤリ結婚させられそうになったのが原因。もと婚約者のヒルデグンド以外とは結婚したくなかったらしい。手に手をとっての逃避行…恋人一筋です。

 実に分かりやすい性格の違いですね。
 ハーゲン、王様が自分の息子を人質に送るのがヤだから身代わりに、「死んでもいいや」って送られてんのに、国に忠義を尽くすとは…。さてはグンテル王はボンボン育ち。

 そして、ハーゲンがダークジョークで笑いを取るのも、この話のひとつのポイント。
 ウァルターと本気で戦っといて、戦い終わったあとは、双方かなり陽気に笑ってますが。未収録セリフ→ハーゲン「なあウァルター、君が左手で奥方を抱きながら、右手に剣を下げていたら、皆はなんと言うだろうな。」
 って、ウァルターの右手切り落としたの自分じゃん。
 ウァルターもウァルターですげェこと言ってるし、憎しみとか、そういうのは…無かったんでしょうな。横で身動きできず転がってるグンテルはともかくとして。^^; (ちなみに、資料本ではハーゲン、眼だけじゃなく歯も抉られて飛んどりますなぁ…。前歯欠けたハーゲンて、何かヤダ)


 話はもちろん、この2人が中心ですが、さりげにグンテルも笑い取ってます。(笑いって)
 ボンボン育ちな感じのするこの王様、どうやらウァルター物語ではハーゲンと同じくらい、もしくは少し年下くらいの年齢のようですが、それにしたってハーゲンと並べると全然ダメです。宝欲しがったり戦わずに逃げたり文句たれたり、ガキですかアナタ。
 しかも、ウァルターとハーゲンの真剣勝負に突っ込んでって足切られてますよ。
 弱ッ。
 そういや「ニーベルンゲンの歌」のほうでも、グンテルはあまり戦いませんでしたね。最後の最後、ひとりになる時まで守られてばっかし。
 何だ、グンテルは結局成長しなかったんだ、昔も今もあんなカンジなんだ、はっはっは♪
 …ハーゲン、苦労しただろうな…
 ウァルターの言うとうりだよ、アンタなんであんな王様に仕えてたのよちょっと。命賭ける価値あるんだろうか、この王様。


 ワンポイント。

 全編通していちばんの驚きは、夕食に出された変わった魚からウァルターを割り出すハーゲンの洞察力。魚の種類から生息地を割り出し、さらに料理人から聞いた旅人の容貌で事実をパズルのように当て嵌めたというのでしょうか。

 …まるで「名探偵コナン」みたいです。分かりませんて普通。
 智将とかいうレベル超えてないでしょうか。いいんでしょうかコレ。





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