中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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第十巻  ガーヴァーンとオルゲルーゼ



 物語は、ガーヴァーンの第三のアヴァンチュールへと続く。
 フェルグラハトとの約束によって、聖杯を探す旅に出たガーヴァーンは、ローグロイス城の近くで、一騎打ちに傷つき倒れた騎士と、その騎士につきそう婦人に出会う。この騎士に応急手当をしてやったあと、再び馬を進めていた彼の目に、泉の側に座る美しい婦人が映った。
 この婦人こそ、ローグロイス城の主、オルゲルーゼ。彼女に心奪われ、奉仕したいと願うガーヴァーンに、城の人々は何故か必死で思いとどまるよう忠告する。魔女クンドリーエの弟、醜いマルクレーアーティウレも登場して彼を止めようとするが、逆に怒らせて馬から落とされてしまう。そこまでする理由が「あなたに惚れたからです、貴婦人殿」なのだから、また凄い。
 婦人は居丈高で、ガーヴァーンを何度も愚弄するが、ガーヴァーンは愛のパワーでこの仕打ちに耐え切る。さらに、さきほど手当てをしてやった騎士によって恩を仇で返され、馬を奪われるアクシデントにも見舞われるが、恋ゆえにこれにも耐え、オルゲルーゼの導きのままに、或る城へとたどりついた。


 ガーヴァーンはこんなにも頑張っているというのに、城の前にたどり着いたところで、貴婦人殿は渡し守の船に飛び乗って、一人でさっさと城の中へ入っていってしまう。なんとも冷たい。取り残されたガーヴァーンに差し向けられたのは、若く血気盛んな騎士、リショイスだった。
 オルゲルーゼはガーヴァーンに、自らの誇りを守れるものなら守って見よ、と言い放つ。ガーヴァーンは自分の馬を奪われ、粗末な馬にしか乗っていない。それでも、一騎打ちの激突は激しく行われ、槍は吹き飛び、リショイスは組み敷かれる。
 しかしこの騎士は、負けてなお恭順の誓いをしようとはしなかった。ガーヴァーンは仕方なく、騎士の乗っていた馬を自分のものにしようとするが、実はこの馬は、先だって手当てをしてやった騎士に奪われていた自分の馬だったのだ。

 愛馬を取り戻しほっとするガーヴァーン。隙をついてなおも襲いかかろうとする卑怯なリショイスをもう一度叩きのめしておいて、その身柄を、渡し守に「税金」として納めることにした。
 身分のある人間は、身代金が取れるので、金目のものとして扱われることもある。そういう時代。

 ガーヴァーンはその夜、渡し守とその一家によって手厚くもてなされ、一晩ぐっすり眠った。そこが何の城であるのかも、翌日はじまる危険な冒険のことも、まだ知らずに。




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