中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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ガハムレト


「神よどうか私に幸福の道を歩ませたまえ。」――彼の旅立ちから、全てが始まった。


 紹介するのは、この物語の最初の主人公である、騎士ガハムレト。
 主人公・パルチヴァールの父でもある、すべての始まりの人です。

 アルトゥース(アーサー王)の親戚筋にもあたるこの人は、アルトゥースの一族と同じく、祖先に「妖精」の血を引くものの、その影響はどうやらアルトゥース家より濃かったらしく(笑)、強く気高く美しいかわり、ロマンチストで、どこか浮世離れしたところがあります。そのため、マロリー版のアーサー王伝説と同じく、戦場において、悲劇的な最期を遂げてしまいます。
 妖精族の血を引く人たちって、美しいだけに老いない、年を取るまえに死んでしまう場合が多い、薄命の人たちなんですよね…。
 そして、たいてい、その死の原因が夢想癖や冒険魂だったりする。

 ガハムレトの場合などまさにその通りで、父が死んで兄と国土を分かつことになったときさえ、それを辞退して「旅に出て、騎士の勲しをあげてみたい」と、言うのですから。「いずこの国へ行くのかは分からない」「どこかの国で、美しい婦人の寵愛を得てみたい。これぞと思う王に仕えてみたい。」まるで夢物語ですね。就職活動をするときに、「どの業界に行くかは分からない。」「これぞと思う社長のもとで働きたい」とか言ってるようなモンです。フリーター道爆走中です。それはみなさん止めるでしょう。(^^;)

 しかし、実力を持った騎士さんは、やはり違います…。
 本当に夢を現実にしてしまうもので、異国の地で、黒い肌の美しい女王と恋に落ちるというラヴロマンス一直線。しかも、主人公の異母兄にあたるフェイレフィースが誕生する前に、遍歴の血が騒ぎ出し、再び旅に出てしまいます。定住や成功を良しとせず、どこまでも、心の赴くままに流れていくガハムレト。まさに妖精さん。

 たぶん、主人公のパルチヴァールと同じく、森の緑に映える美形だったんでしょうねえ。vv
 高貴な女性たちの間で取り合いになるくらいだし。それでも本人、あんまり女性には興味が無かったらしい。せめて奥さんには、もう少し愛着を持っていただければ。そこだけが心残り。
 (ちなみに、息子二人のうち、パルチヴァールは超愛妻家、兄のフェイレフィースは父の悪いクセをついで、妻より旅を優先しているようだ)

 死亡推定年齢は20代前半。若い。若すぎる。それだけに、「お父さん! かむばぁっく」と、心の中で叫ばずにはいられない。

 




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