トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子の大地の前に広がっている、この大地は、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間たちの間ではイェルズ(大地)、 アース神の間では、フォルド(原)、 ヴァンル神たちは、ヴェグ(道)と呼んでいる。 巨人たちは、イーグレーン(緑なるもの)、 小人たちはグローアンディ(緑なすもの)、 天の神々は、アウル(砂地)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな あの天は、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間たちの間ではヒミン(天)、 アース神の間では、フリュールニル(星の撒き散らされたるもの)と呼ばれ、 ヴァンル神たちは、ヴィンドオヴニル(風を織るもの)、 巨人たちは、ウップヘイム(上の国)、 妖精たちは、ファグラレーヴ(美しい屋根)、 小人たちは、ドリュープ サル(水の滴る館)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人々に見えるあの月は、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間たちの間では、マーニ(月)、 神々の間ではミュリン(欠けるもの)と呼ばれ、 冥府<ヘル>では、フヴェルファンダ フヴェール(回転する輪)、 巨人たちは、スキュンディ(韋駄天)、 小人たちは、スキン(光)、 妖精たちは、アールタラ(時飾り)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子らが見るあの太陽は、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間たちの間では、ソール(太陽)、 神々の間では、スンナ(南の輝き)と呼ばれ、 小人たちは、ドヴァリンスレイカ(小人を虐げるもの)、 巨人たちは、エイグロー(永遠に輝くもの)、 妖精たちは、ファグラヴェール(輝く輪)、 アース神の子らは、アルスキール(全く明るいもの)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな にわか雨を降らすあの雲を、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、スキュー(雲)、 神々の間では、スクールヴァーン(驟雨<シュウウ>のぞみ)と呼ばれ、 ヴァンル神族たちは、ヴィンドフロト(風に漂うもの)、 巨人たちは、ウールヴァーン(霧雨のぞみ)、 妖精たちはヴェズルメギン(天候の力)、 冥府<ヘル>では、ヒャールム フリス(隠し兜)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 遠くかなたまで吹き渡るあの風は、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、ヴィンド(風)、 神々の間では、ヴァーヴズ(揺れるもの)と呼ばれ、 より高い神々は、グネギューズ(いななくもの)、 巨人たちは、エーピル(叫ぶもの)、 妖精たちは、デュンファリ(騒然と駆け行くもの)、 冥府<ヘル>では、フヴィーズズ(疾風<はやて>)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 静かな、あの凪のことは、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、ログン(凪)、 神々の間では、レーギ(鎮まり)と呼ばれ、 ヴァンル神たちは、ヴィンドスロート(無風)、 巨人たちは、オヴフリュー(鬱陶しい空気)、 妖精たちは、ダグセヴィ(日をやわらげるもの)、 小人たちは、ダグス ヴェラ(日のとどまり)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人間たちが漕ぎ渡るあの海は、それぞれの国ではどう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、セー(海)、 神々の間では、シーレーギャ(あまねくみなぎる潮)と呼ばれ、 ヴァンル神たちは、ヴァーグ(波立つ潮)、 巨人たちは、アールヘイム(鰻の故郷)、 妖精たちは、ラーガスタヴ(飲み代?)、 小人たちは、デュープルマル(深海)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子たちの前で燃えるあの火は、それぞれの国で、どう呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、エルド(火)、 アース神たちの間では、フニ(焔)と呼ばれ、 ヴァンル神たちは、ヴァグ(ゆらめくもの)、 巨人たちは、フレキ(貪欲なるもの)、 小人たちは、フォルブランニル(燃えるもの)、 冥府<ヘル>では、フレズズ(はやきもの)と呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子の前で成長するあの森のことを、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、ヴィズ(森)、 神々の間では、ヴァラルファクス(原野のたてがみ)と呼ばれ、 人々は、フリーズサング(山腹の海藻)、 巨人たちは、エルディ(火の糧)、 妖精たちは、ファグルリミ(美しい枝)、 ヴァンル神たちは、ヴェンド(藪)と、呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな ネルの名で知られたあの夜は、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、ノート(夜)、 神々の間では、ニョール(暗闇)と呼ばれ、 より高い神々は、グリーマ(隠すもの)、 巨人たちは、オーリョース(無光)、 妖精たちは、スヴェヴンガマン(眠りの喜び)、 小人たちは、ドラウムニョルン(夢の織り手)と、呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子たちが蒔く種のことは、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、ビュグ(麦)、 神々の間では、バル(穀物、ことに大麦)と呼ばれ、 ヴァンル神族たちは、ヴェクスト(生長)、 巨人たちは、エーティ(食物)、 妖精たちは、ラガスタヴ(穀物)、 冥府では、フニピン(しなやかなもの)と、呼んでいる。 |
トール | 言ってくれアルヴィース。小人のお前は、生きとし生けるものの運命については、何でも知ってのようだな 人の子らが飲む麦酒のことをは、それぞれの国では何と呼んでいるのだ。 |
アルヴィース | 人間の間では、エール(麦酒)、 アース神族の間では、ビョール(ビール)と呼ばれ、 ヴァンル神族たちは、ヴェイグ(酔わす飲み物)、 巨人たちは、フレイナレグ(生<き>の飲み物)、 冥府では、ミョズ(密酒)、 スットゥングの子らは、スンブル(酒宴)と、呼んでいる。 |
■元資料/エッダ−古代北欧歌謡集(新潮社)