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アーサー王伝説・ケルト関連

全世界、けっこうな数の本が出されているジャンルなので、自分の興味に絞り込んだ範囲で…。
自分が読めないから、という理由で日本語以外の文献は入っていません。


アーサー王】【騎士】【ケルト】【歴史



アーサー王物語 アンドレア・ホフキンズ 山本史郎 訳 原書房(1995)

初心者向け。小中学生でも手軽に読めるライトな文章でのダイジェスト。さし絵や写真が綺麗です。
難しいところは何もなく、有名なエピソードをひとまとめにしたものなので、はじめての人に。


アーサー王百科 クリストファー・スナイダー 山本史郎 訳 原書房(2002)

ブリテンのアーサー王伝説を中心に、歴史と舞台、地理、物語の発展、騎士道、
アーサー王伝説を元にした作品など幅広く紹介している本。
幅広すぎて浅い部分があるのはご愛嬌として、一般的なアーサー王ファンならこの本で満足するのではないかと思う。初心者向け。


アーサー王ロマンス 井村君江 ちくま文庫(1992初版/2001第10版)

アーサー王伝説の主なストーリーが紹介されている本。
これも初心者向けに、さらっと読める本です。あまり詳細なストーリーまでは紹介されていないので、全体の流れを把握するときに、どうぞ。


アーサー王 その歴史と伝説 リチャード・バーバー 東京書籍

詳細で分かりやすいアーサー王研究書。やや専門的ではあるが、伝説の成立仮定について考えてみたい人はとりあえず読んどけ系。
巻末の日本語文献案内は一式網羅されているため、卒論・レポートを書きたい学生さんのニーズにも十分答えられるはず。


アーサー王伝説紀行 加藤恭子 中公新書(1992)

映画「キング・アーサー」の公開に伴って再版されたらしい本。ただし内容は映画にヨイショして売ろうとするような軽いものではなく、かなり充実。アーサー王伝説の舞台になった場所に実際に赴いて、率直な感想を述べる旅行記と言っていい。「アヴァロンとは、どこだったのか」「キャメロットとは、どこにあるのか」…そんな疑問は誰しも持つが、実際に現地に行って確かめようとする人はそう多くあるまい。もちろん行ったからと言って答えが出るものではないのだが、伝説と現実の関係を考えさせられる本である。


パルチヴァール 郁文堂出版(1974初版/1983第4版)

イングランドのアーサー王伝説の原典の一つ、13世紀ドイツのアーサー王伝説。中高地ドイツ語からの完全翻訳。注釈、家系図もついて、物語が分かり易くなっています。パーシィファンなら読めという一冊。自分がアーサー王伝説を追い始めたキッカケの本でもあります。
この物語の中では、聖杯は聖なる石として描かれています。


トリスタン・イズー物語 岩波文庫(1953初版/2004年64版)

ベディエによる、トリスタン物語総集編。トマ、ベルール、ゴッドフリートそれぞれの書いた作品を骨に、トリスタンものの短編などを混ぜ、物語を一本化した、トリスタンと王妃イズーの悲恋物語総集編。それぞれ、宮廷詩だったり、庶民用の物語だったりと性格の違う書物の、現在残されている断片から再構築しているだけに、苦労が伺える作品。あらすじを追うのが目的の物語のため、とてもスムーズにするする読めてよい感じです。個人的に、巻末の考察についていろいろ熱く語りたいです…(媚薬についてとか)


ハルトマン作品集 郁文堂出版(1982)

イングランドのアーサー王伝説の原典の一つ、13世紀ドイツのアーサー王伝説。中高地ドイツ語からの完全翻訳。
ハルトマン氏が書いた「エーレク」「イーヴェイン」のほかに、「グレゴーリウス」や「哀れなハインリヒ」など、ひととおり。ハルトマンとヴォルフラムの作品を並べて読むのがツウな楽しみかただったり。


マビノギオン 中野節子 訳 JULA出版(2000)

今まで断片的な訳や、英語からの訳しかなかったケルト伝承の中心的文献、マビノギオンのウェールズ語から直接の日本語完訳。
多くのファンが待っていた待望の1冊です。もちろんアーサー王伝説の原型とされる5つの物語の全貌も分かります。
ちなみに、よく知られている「アリアンロッド」という人物名は、アランロドの英語読みだったりします。ウェールズ語読みを是非お試し下さい。


ドイツ中世叙事詩研究  相良守峯  郁文堂(1948初版⇒改訂版あり)

旧版は旧カナ使い、新版ではカナ使いが変わってます。
ドイツ古典文学研究の決定版です。これ一冊で、ニーベルンゲンの歌と同時代の作家すべてが網羅できます。また、原語のつづりもわかるため、あとあと海外サイトで検索かける時にもお役立ち。値段に比例してたいそう分厚いですが、本格的に深みにはまりたい人には、この上ない道しるべとなるでしょう。


フランス中世文学集1 信仰と愛と 白水社(1990)

トリスタン物語の作者違い作品がたくさん収められています。
「ロランの歌」も収録。


フランス中世文学集2 愛と剣と 白水社(1991)

クレチアン・ド・トロワの「ランスロまたは荷馬車の騎士」「ペルスヴァルまたは聖杯の物語」を収録。
マリ・ド・フランスのレー「ギジュマール」「ランヴァル」も在。

アーサー王文学を宮廷調に書き直し、世に一大ブームを引き起こしたクレチアン師匠の作品が読めるのは、この本だけ!(ジャンプ調に)
文学史上にはじめて「聖杯」が登場した作品、「ペルスヴァル〜」はアーサー王好き必読。


**フランス中世文学集3はアーサー王伝説とはあまり関係なしなので飛ばします。**


フランス中世文学集4 奇蹟と愛と 白水社(1996)

ランスロット物語、いわゆる「フランス流布本サイクル」の最後を飾る、「アーサー王の死」が収録されています。
この「アーサー王の死」は、トマス・マロリーによるものではなく、1220-30ごろに書かれた作品。(とどのつまり、マロリーは過去に書かれた物語を書き直しただけなんですね…)
”栄光を誇りし人々の、その最後の姿まで書かねばならない。”多くの人々によって語られ、書かれ、膨らんでいったアーサー王の伝説のクライマックスを飾る物語です。


ブリタニア列王史 ジェフリー・オブ・モンマス 南雲堂フェニックス(2007)

アーサー王物語が最初にまとまった伝説として登場する、ジェフリー・オブ・モンマスによる必読の書。ただし基本資料とはいえど難有り。
唯一の邦訳、全訳ということで内容自体は価値がありますが、誤植・脱字・ミススペル、番号振り間違い、人物名のカナ表記のブレなど、本としてのクオリティはとかく低く、そこが残念。日本語としてもヘタなので、あらすじをなぞる際は注意が必要。


湖の騎士ランツェレト ウルリヒ・フォン・ツァイクホーフェン 同学社(2010)

ドイツ語で書かれたランスロットの一生を語る物語。書かれた年代には諸説あるが、ほぼ流布本サイクルと同じとみられる。
主人公はランスロットだが、性格やエピソードは後のアーサー王伝説の中のランスロットとはかなり異なり、王妃グウィネヴィアとの「宿命の恋」も存在しない。



騎士についてのデータ

中世への旅 騎士と城 ハインリヒ・プレティヒャ 白水社(2002)

そのものズバリ、中世・騎士の生活や文化と城についての解説。初心者向けで、よくまとまっていて分かり易い。
ドイツの人が書いたものなのだが、「歴史を恐れるな」から始まり、現地の学生に社会科の授業で教えるような形で進む。(実際、現地の高校生を対象として書かれた本らしい) …日本で言うところの「新撰組入門」みたいなものでしょうか。
ドイツ人にとっての常識も、日本人には驚きの連続?

中世への旅 都市と庶民 ハインリヒ・プレティヒャ 白水社(2002)

騎士文化華やかなりし時代を過ぎ、文化の中心が庶民と都市に移ってきた時代を解説した本です。
庶民がどのようにして騎士文化を真似、あるいはパロディしたか、かつて栄えた騎士文学がどのようにして庶民のもとに落ちていったか…。現雑伝わる童話や御伽噺の形成過程も考えさせられる一冊です。中世人の食卓についても詳しい。「中世への旅 騎士と城」とセットでどうぞ。

馬上槍試合の騎士 トーナメントの変遷 クリストファー・グラヴェット 新紀元社(2003)

色鮮やかな武器・防具の資料を多く出している、イギリス・オスプレイ社の本を日本語に訳して出版したシリーズの一冊。
騎士たちの決闘についての説明、歴史、図による衣装の説明など。騎士文学中に出てくる場面を詠んだあと、この本でビジュアルを確認すれば、決闘についてよりよく理解できるはず。


騎士道の夢・死の日常 堀越 孝一 人文書院(1987)

オランダのライデン大学教授だった、ヨーハン・ホイジンガ著「中世の秋」の購読本のようなもの。ダイジェストで要点をかいつまんであります。原本が出版されたのは日本では大正8年なので、既に本じたいが「歴史の向こう」です。
騎士物語は12-13世紀に作られ、それ以降は文学にとって不作の時代が続く――ルネサンスに至るまで。それは何故なのか。13世紀が終わったあと、騎士たちは何処へ行ってしまったのか? その謎を解く本です。
騎士たちは決闘の準備をしても決闘しない。なるほど! と思わせられる一品。興味のある方はホイジンガの「中世の秋」もどうぞ。


十字軍の思想 山内 進 ちくま新書(2003)

十字軍の遠征は、エルサレムという「聖地」奪回のためのものだけではない。実は同じキリスト教徒に対しても、教皇が十字軍の派遣を命じたことがあった。初期の目的が失われ、ただの領土拡大や権力闘争の手段となった十字軍の思想は、現代の戦争にも通じる。
そしてルターが行った教皇批判や宗教革命と同じように、現代にも、正義の名における戦争を批判する人々がいる。
ロマン化された想像上の十字軍ではなく、その裏に秘められた権力者たちの様々な思惑、時代背景を盛り込んでの一冊です。「騎士」という切り口ではなく、その時代に生きた「人間たち」という切り口なので、より広い視点で理解できます。


ケルト神話


オシァン ケルト民族の古歌 中村徳三郎 訳 岩波文庫(1979初版)

スコットランド・ケルトの古伝承の世界を描いた一冊。ケルトといっても、妖精も女神も出てきません。それ自体が神話的な時代の物語です。最初は少し分かりにくいかもしりませんが、読めば読むほど深く、流れるような美しい文章と物悲しく遠い情景が秀逸。自分の中では、「ニーベルンゲンの歌」「ベーオウルフ」と並ぶ古典の名作です。


ケルト歴史地図  ジョン・ヘイウッド  東京書籍(2003)

ケルトとは何か、ケルト民族とは何者か? という、あらゆる漠然とした疑問の答えが、この本に。とてもよくまとまっていて、痒いところに手が届く一冊です。
地図が多いのも便利。視覚的に、ケルト民族の分散と歴史が理解できます。
ケルト=妖精物語 ではないし、ケルト人=イギリス人 でもない。消えていったのは神々ではなく、神々は生き続けているのに人々と言葉が死んでいく。そしてケルト人がフランスにも住んでいることが分かれば、なぜアーサー王の伝説がフランスやドイツにもあるのかということが理解できます。


ケルト神話と中世騎士物語  「他界」への旅と冒険  田中 仁 中公新書(1995)

騎士文学についての言及は最後のほうに少しだけ。ほとんどはケルト世界における「他界」の位置づけや解釈です。
ケルトの伝承は、キリスト教の僧侶たちによってはじめて文字にされたわけですが、まずケルト世界とキリスト教のかかわり、融合の過程についてから優しく解説してくれているのが嬉しい。ケルト的な「天国」「地獄」の概念と、妖精たちの住む「他界」のイメージの重なり合いや変化。色んな意味で新しい視点に気づける一冊でした。


ケルトの神話―女神と英雄と妖精と  井村君江 ちくま文庫(1990)

何も知らない人でもさらりと入れて読める本。主なケルトの神々のリストや属性の紹介、ケルト神話の基本などが書かれています。
装丁が美しく、お値段も手ごろ。ケルトにハマる人はきっとこういうところから入っていくのでしょう。


ケルト民話集  フィオナ・マクラウド 荒俣宏 訳  ちくま文庫(1991)

アイルランドでもウェールズでもなく、スコットランド・ケルトで紡がれる、独特の世界観と物悲しいストーリー。
「幻想」という言葉の中に潜む、もう一つの意味を、暗がりの中に青い月の光で映し出したような作品集。
資料にはなりませんが、スコットランド・ケルトの雰囲気を掴むのにいい本かも。


図説 ケルトの歴史 文化・美術・神話を読む 鶴岡真弓・松村一男 河出書房(1999)

タイトルどおり、実に幅広い。「社会科の資料集か、これは?!」…と、思うくらい写真も豊富。
ケルト人がどこから来たのか、どういった文化を築いてきたのか、など。神話と歴史のカラミを書いてくれているので、視野が広がるでしょう。ただ眺めているだけでも楽しい本です。


ケルト神話物語 山本史郎・山本泰子 原書房(1998)

名前や地名が、よく知られているものとかなり違っています。クーフリンがクーフラン、ゲイ・ボルグがガエ・ボルガになっているあたりまでは、まだ分かるのですが、人名のカタカナ表記が相当変わっているため、かなり読みづらいです。重要っぽい単語が太字にされているのも、読み易くするためか、原文にない解説を間に挟むのも、本文とあんまり関係ない写真を文章のド真ん中に入れられるのも、かえってジャマ…。
あらすじを通しでなぞるにはいいですが、もうちょっとどーにかならんのでしょうか…。


ケルト妖精物語(1)、(2) ジョーゼフ・ジェイコブズ 原書房(1999)

小・中学生向け。簡単で面白い小説本。資料として使うよりは、お読み物にどうぞ。
ケルト・妖精でイメージされる童話・御伽噺そのまんまの世界が展開されている本です。


歴史

図説 スコットランドの歴史 リチャード・キーレン 彩流社(2003)

なんだか社会科の教科書みたいなタイトルですが、分かりやすく、お手ごろな一品。
「イギリス」というとき、あなたがブリテン島を思い浮かべるとしたら、それは少し違う。ブリテン島の北、三分の一は、「スコットランド」…そのスコットランドも「低地地方」ローランドと、「高地地方」ハイランドに分裂しています。ケルト世界の分断について考えさせられる一冊。

スコットランドの聖なる石 ひとつの国が消えたとき 小林章夫 NHKブックス(2001)

「ケルト」という言葉の意味を考えるとき、忘れてならないのがスコットランド。ブリテン島の北に位置するこの国が、どのようにしてイングランドの中に組み込まれていったのか、を知る上での資料。
古代ではなく近代の歴史のほうがメインの方が書いているようなので、神話側から見たときとは視点・評価が異なるかもしれないが、それも一つの面白さだろう。

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