フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第44章
Neljasviidettä runo


 こうして、ようやくカレワラへ帰り着いたワイナミョイネンですが、あの無くしたカンテレのことが、まだ忘れられません。
 サンポといいカンテレといい、自分たちで作ったモンなんだから、も一回つくればいいじゃん、って思うでしょう。ところがどっこい、そう簡単にはいかないんですね。気分がノッた時とか、たまたま巧くいった時じゃないと、魔法の工芸品(いわゆるアーティファクト)は、作り出すことが出来ないのです。

 「むー…。しかし海に落ちちまったしのぉー。なあ、イルマリネンよ。」
 「……。」
海で揺さぶられて以来、イルマリネンはヒドい船酔いで寝込んでいました!
 「ったく、仕様がないのぉ。おい、イルマリネン、おい」
 「ううー…。船が…波が…。あ、足元がグラグラする〜…。」
 「シャンとせんか馬鹿者。熊手作ってくれんかの? ほれ、お前が昔、レンミンカイネンの死体あつめ(第15章参照)に作ってやったようなヤツ」

 ふらふらしながらも、イルマリネンはジジイ所望の大熊手を作ってやります。ジジイはそれ持って、喜び勇んで海に出かけました。
 …子供の潮干狩りじゃあるまいし…。^^;

 しかし、海は広いモンです。
 いくら魔法の熊手だって、そう簡単に沈んだ楽器をひっかけられるワケではありません。出てくるのは長靴やら空き瓶やら海草やら、もーハズレもんばかり。
 「ちぇ。面白くないのぅー。また人魚でもひっかかれば面白かったのにのぅ。」
ジジイ…。

 がっかりしたワイナミョイネン、おうちへ帰ろうと熊手かついで森を歩きだします。
 と、そのとき、なにやら悲しげな声で泣くものがあることに気が付きました。
 「ん? この声は。」
泣いていたのは、白樺の木。
 「どぉーしたんじゃ、白樺よ。」
親切装ってちかづいたジジイに、木は言います。
 このまま生きてたって…どーせ人間に枝を切り取られ皮を剥がれて燃やされるしかない人生よ。生き長らえたとしても、年をとれば中に空洞が出来、枝ぶりは悪くなって痩せて行くだけ。ああ、生きるって、なんて空しいことなんだろう…。
 えらい哲学的な木です。そんな、木のくせに生きることを儚んでどうするんだ、って気がしなくもないですが。まぁ、木というものにも色々あるんでしょう。
 ワイナミョイネン、にっこり微笑みます。
 「なぁんじゃ。だったらワシがお前さんを使ってやろう。後世まで残るような立派な道具に生まれ変われるなら、お前さんも幸せじゃろうて。」
 「えっ?…」
 「だからな。…ワシの大望のために死んでくれい!

ざしゅっ。

 「ふぉーふぉーふぉー。これでカンテレの本体は完成じゃなー!」
ジジイ…(泣)いつもながら、それって…。(非道)

 カンテレの釘はカッコウの歌から。カンテレの弦は乙女の髪から。こうして、ジジイのNEW装備、魔法のカンテレは誕生します。
 ジジイが歌うとき、その歌声は野山をとろかし、あらゆる生命を聞きほれさせます。サンポのお陰で土地も潤ったし、ジジイはこのまま、野山で静かに余生を暮らしていくのでしょうか。
 いや、そうだったら、カレワラ物語はハッピーエンドで終わるんですがね。

 ナレーション;魔女の怨念…、恐ろしき復讐は、密かに始まろうとしていた―――。


{この章での名文句☆}

強固な老ワイナミョイネンは
そこで靴を脱いで小走った、靴下を取って歩み寄った。


いや、本筋とはゼンゼン関係ないんですけど…。
ジジイが靴下脱いで若い娘に忍び寄って、髪の毛くれっつーのは…なんつーか、変だよ絶対。



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