フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第32章
Kahdesneljättä runo


 奴隷として売られて来たクッレルボは、イルマリネンの奥さんの指示で、牛の放牧へ行くことになります。
 イルマリネンは鍛冶仕事で忙しいし、クッレルボは鍛冶屋の弟子として雇われたわけではありませんから、家の雑用係です。雑用は奥さんの取り仕切るところ。

 ちなみに、この奥さん、前編でイルマリネンとワイナミョイネンが取り合いをしていた、あのポホヨラの美女です。魔女ロウヒの娘のひとり。あのときは初々しい乙女でしたが、ここでは、いっちょまえに主婦の顔になっています。(って、映像があるワケじゃないんだけどね^^;)

 牧者は、当時は軽蔑されていた職業。その職業についたみすぼらしい少年を見て、彼女は、悪戯心を起こしちゃいます。
 本人は魔女ロウヒの娘さんですから、かなりいい家柄の生まれです。でもって、名高いイルマリネンの嫁になっているのですから、鼻高々でしょうよ。…どうしてそう、身分の高い人ってムチャしたがるんだろう。彼女は、お弁当として渡すパンの中に、こっそり、あるモノを仕込みます。

 石。

 って、それ、むちゃくちゃ嫌がらせじゃん!!!
 そんなモン、微笑みと一緒に手作りパンに交ぜこまんといてくださいよ、奥さん! ほ…ほんまにこの人、なに考えてんだろ。

 それを、何も考えずに受け取ったクッレルボもクッレルボだ。石入りのパンなんて、重いから気が付くだろう、普通。
 「さあ、行ってらっしゃい。お弁当は、仕事が一息つくまで食べちゃダメよ。」
と、彼女は、クッレルボに呪いをかけ(守りの呪文と書かれているが、サボったら柳にするだの何だのというあたり、脅しくさい)、牛たちには、乳がよく出るように、熊にやられないようにと魔法をかけて、送り出します。

 奥様は魔女なのです。

 この章は、ほとんどが呪文で締められているので、あらすじとしては短い…。
 はてさて、石のイタズラの結末やいかに?!


{この章での名文句☆}

夏の乙女、最良の女性よ、南風の乙女、自然の夫人よ、
松の乙女、善良な主婦よ、杜松の乙女、綺麗な処女よ、
わたしの家畜を見張ってください。…


イルマリネンの妻が家畜を送り出すとき唱える呪文。
ここでは、自然界のあらゆる場所に宿る精霊達の名前が唱えられています。
それぞれの精霊の持つ、さまざまな人格や特性が伺える一節。



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