フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第28章
Kahdeksaskolmatta runo


 ポホヨラの軍勢の追いかけて来るどよめきは、大地を揺るがさんばかり。レンミンカイネンは大慌てで茂みに飛び込みますが、乗って来た馬がありません。
 後ろを振り返れば、村中がどよめいています。戻ることは出来ず、かと言って、走って逃げるのではすぐに追いつかれてしまうでしょう。
 「チ。仕方がない」
魔法で鷹に姿を変えて、空に舞い上がったところ、背中に何かの気配を感じます。

 振り返ればそこには、血のように赤い目をしたもう一羽の鷹。その顔は、殺されたポホヨラの主人そっくりです。
 「おい…先ほどの…試合を、覚えているか…。」
でも、無視。
 
怨念とか、最期のなんたらとか、どうでもいいらしいですレンミンカイネン。と、いうか、彼にとっちゃあ自分より弱いものは蚊トンボほどの価値も無い?
 魂振り絞って現れたポホヨラの主人ほったらかして、とっとと自分の家まで逃げてしまいました。(旦那さん、可愛そう…これで出番終わりですか?)


 大慌てで家に戻って来た息子を見て、レンミンカイネンの母は、ああ、やっぱり何かあったんだな、と察知します。
 「お前、一体何をやらかしたんだい。」
 「それが…。」
レンミンカイネンは、深く溜息。彼にしては珍しく、口篭もりながら母に真実を告げます。
 「オレ、殺っちまったんだよ。…ポホヨラの主人をさ」
 「何だって?! あの、ロウヒの旦那をかい!」
これには母もびっくり。まさか、そこまでやっちゃうとはね!

 「どうりで、ポホヨラのほうが騒がしいわけだよ! お前、とんでもないことしでかしちまったね! ポホヨラの連中は、お前の首を取るだけでは飽き足らないだろうよ。私たち家族や一族まで皆殺しになっちまう!」

 そう、女主人の旦那を殺したのですから、ポホヨラとアハティ(レンミンカイネンの住んでいる場所)は全面戦争突入間違いなしです。
 「ったく…。お前は、何て考え無しな子なんだい!」
 「すまねぇ、お袋。けどオレ…どうしたらいいか…。」
おいおい、いきなり弱くなっとりますがなレンミンカイネン。前前から思ってたんだけど、もしかして…

 マザコン?(ザクッ←レンミンカイネンに刺された音)

 …えー、本人に刺されてしまったということは多分図星だったのだろう、ということで(笑)、母は、レンミンカイネンに逃亡の手段を教えてくれます。

 「あのロウヒから逃げるんだ。普通の方法じゃあ駄目だよ。魔法の通じない、辺境へ逃げるしかないね。お前、そこが平和すぎるからと言って逃げ出したりするんじゃないよ?」
 「ああ、分かった。で、どこなんだ。そこは。」
 「あんたのお父さんがその昔、大きな戦から逃れるために隠れた島さ。あの人の遺した船に乗って行きなさい。3年−−−、そう、3年経ったら、またここへ戻って来るんだよ。いいね。」

 ここへ来て、亡き父大活躍。船には何か魔法でもかかっていて道しるべになっていたのか? その島とは、一体どこにあったのか? そのへん、もっとツッコんでみたいものですが。
 それにしても、レンミンカイネンの親父って…どんなだったんだろうね。

 この章はちょっと短くて、ここで終了。続く29章は、レンミンカイネン・旅立ち編です。


{この章での名文句☆}

最悪のところなら分かっている、
そこで死滅が口で捕らえるだろう、無惨な終末が襲うだろう。

よっぽど追っ手が怖かったのでしょう。
それにしても、ジジイといい、この人といい、フィンランド人って諦め早すぎ。
勇ましくキメるところはとことんキメて、諦めはアッサリと、嘆きの台詞は大げさに…。
おもろい国民性です。^ ^;



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