フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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金の小刀と銀の小刀


 タイトルを見て、「アレ? なんか聞いたことあるような…」と、思ったかもしれません
 そう、コレは、あのイソップの物語「金の斧と銀の斧」にそっくりな物語なんです。


 むかしむかし、あるところに一人の善良なる羊飼いがいました。
 羊飼いは、川べりに腰を下ろして、木の枝を削って杖を作ろうとしていたのですが、ふと手が滑って、大切な小刀を水中に落としてしまいます。困っている羊飼い。と、そこに現われたのは、にこやかなスマイルでさんさんと輝く太陽の神アアトでした。
 (…アアトで読み方はあっているんだろうか。)

 この太陽の神様、「カレワラ」では月ともどもポホヨラの魔女にとっつかまって、岩屋に幽閉されてる、あの太陽のようです。
 エジプトなど暖かい地方では太陽の神様はとてもエライのですが、太陽の光の弱い北国では、ほとんどパシリ扱い。太陽を擬人化しただけの存在のようです。
 で、この時も、ふらふら〜っと出て来て、気さくに羊飼いに話し掛けたのです。
 「オヤ羊飼い。どうしたの?」
 「はあ。…小刀、水の中に落としちゃって…。」
太陽は、ハッハッと笑ってこう言いました。「では私が拾ってきてあげよう。」…と、川の中にザンブラ(!)。太陽が水ン中に入って大丈夫なのでしょうか。それとも、北国の太陽は燃えていないから平気なのでしょうか。(※太陽と月は金属で出来ている、という話がカレワラにも出てくる)

 しばらくして、太陽は浮かんできました。
 「お前が落としたのは、コレかな?」
と、差し出したのは金の小刀
 そりゃびっくりします。自分が落としたのより、明らかに立派なんですもん。正直な羊飼いは、イイエ違いますと言いました。
 すると太陽は再び、水の中にもぐっていきました。もちろん、次は銀の小刀を持って来ます。
 これも違う、と言いますと、太陽は三度目にふつうの小刀を持って出てきました。この小刀が銅だったのか鉄だったのかは分かりませんが、とにかく羊飼いは、「ああ! これです」と、言って、自分の本当の小刀を手に入れます。

 すると太陽はにこやかに、「正直者にはこれもあげよう」と、金の小刀と銀の小刀をくれて、空に去って行ったそうです。
 めでたし、めでたし。

 イソップ物語なら、そのあと嘘つきが同じことを試して失敗するンですが、フィンランド神話には続きは無いようです。
 泉の女神様ではなく通りすがりの太陽っていうところがナイスな設定だし(その脈絡のなさが)、斧じゃなく小刀っていうところが、なんか分量的にも損した気分にさせてくれます。

 そういえば、「カレワラ」の中でも、太陽はレンミンカイネンの母のお手伝いをしたり、道を教えたりとパシリ役をやらされていました。
 フィンランドの太陽神って、実はかなり人付き合いのいいお世話焼きさんなのかもしれませんね。



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