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「ニーベルングの指輪」あらすじ

第三日  神々の黄昏

GÖTTRDÄMMERUNG


と、いうわけでいよいよ最後の日。
神々が滅びることはすでに予言され、神々の長たるヴォータンも既にその運命を受け入れている。だからここから先は、その滅びの種となったラインの黄金が、元の場所へ戻ってゆく道筋だけである。


プロローグ ワルキューレの岩山

夜明け前。運命の3女神、ノルンたちによる、これまでの話と、これから起こる出来事の予言。ヴォータンは、かつて契約のルーネが刻まれた槍をつくるため、宇宙のとねりこ、世界樹の枝を折り取った。だがそのためにとねりこは枯れ、知恵の泉も枯れ果てた。その槍がジークフリートに折られたあと、ヴォータンは腐りかけた宇宙とねりこ(ユグドラシル)を切り刻み、薪としてワルハラの周りに積み上げた。その薪の炎で神々の世界を焼き尽くすため。
槍の魔力によって繋ぎ止められていたローゲは自由となった。ヴォータンは槍の破片をローゲに突き刺し、その胸からは炎が噴出すだろう。とねりこの薪はローゲの火を得て燃え盛り、ワルハラは燃え尽きるだろう、という。
ノルンたちのよる運命の綱は切れてしまう。もはや告げられる未来のなくなったことを知った彼女たちは、大いなる母、エルダのもとへと沈んでゆく。

朝日が昇る。冒頭の暗いシーンとはうらはらに、晴れやかな表情のジークフリートとブリュンヒルドがあらわれる。ブリュンヒルドは乙女としての力を失い、もはやただの人間である。彼女は、自分とともに空を翔る力を失った名馬グラーネをジークフリートにゆずり、そのかわり愛の誓いとして、呪われたニーベルングの指輪を受け取る。
彼女は、晴れやかに去っていくジークフリートを見送るのだった。


<注釈>

「さくばんは おたのしみでしたね」

…と、いうわけで、夜の間の出来事は飛ばされているのです。(笑) 朝のシーンからして、エッダの「シグルドリーヴァの歌」と同じできごとがあったのだと思われる。


第一幕 グンターの館・ワルキューレの岩山

場面はギービヒ一族の館。当主グンター、異父兄弟ハーゲン、二人の妹グートルーネが登場する。ハーゲンの父は小人アルベリヒで、黄金の魅力により誘惑された王妃が生んだ息子だ。
グンターは、頭の回る弟ハーゲンを信頼している。しかして、自分の名声をさらに高めるにはどうすべきか、と、彼に問う。ハーゲンは答える、まだ手に入れていない、王者に相応しき宝、それはグンターの妻とグートルーネの夫だ。
ハーゲンは、グンターがブリュンヒルデを妻として迎え、グートルーネがジークフリートを夫として迎えるべきだと勧める。彼はこれまでの経緯を知っており、二人に、それらの人物のことについて説明する。
さらにハーゲンは、グートルーネがジークフリートを虜に出来るように、自分が手に入れたホレ薬を盛ることを提案する。そうすれば、ジークフリートはグートルーネの言うなりになり、ハーゲンのために花嫁を手に入れてくるだろう、と。

と、そこへ都合よくジークフリートがやってくる。彼はグンターに、戦うか、友となるか、と問うが、グンターは勿論友となろうと言い、自ら、彼の臣下になろうとまで言い出す。しかしジークフリートは逆に、この城に仕官しにやって来たのだった。ハーゲンは、隠し事を知らぬジークフリートから、指輪はブリュンヒルデが持っているということまで聞き出してしまう。

そこへ、例のホレ薬を仕込んだ酒を手に、グートルーネがやってくる。ブリュンヒルデの名を呟きつつ酒を口にするジークフリートだったが、酒を飲んだとたん、あっさりブリュンヒルデのことを忘れ、グートルーネの虜となってしまう。
薬の魔力で熱烈な恋に落ちたジークフリートは何もかもグンターの言うなりになり、全く記憶を失ったまま、グートルーネを妻にもらいうけることを条件に、ブリュンヒルデを手に入れてくることを誓ってしまう。グンターとジークフリートは義兄弟のちぎりを交わすが、ハーゲンはその中に加わらない。
それは、彼がいずれジークフリートを裏切るであろうことの象徴だった。


所変わって、ブリュンヒルデの館。
ひとりジークフリートを待ちながら指輪を眺めていたブリュンヒルデは雷鳴の音を聞く。懐かしいその音とともに現れたのは、かつてともに戦乙女として戦場を駆けた妹のひとり、ヴァルトラウテだった。彼女は、父ヴォータンが折れた槍を手にワルハラへ戻って来たこと、が破滅を決意し、王座のまわりに薪を積み上げたこと、二羽のカラスたちを放ち、良き報せを待っていることを告げる。神々の世界を滅びの呪いから解き放つには、ブリュンヒルデの手に入れた指輪、すなわちアルベリヒによって盗み出された黄金を、ラインの娘たちに返さなくてはならない。
しかし彼女は、神々や世界がどうなろうとも、ジークフリートの愛の証を捨てられるわけがない、と、妹を拒む。ヴァラトラウテは悲しみながら去っていく。

そこへ誰かがやってくる気配がする。ブリュンヒルデはジークフリートだと思い喜ぶが、それは、見知らぬ男だった。ジークフリートは、魔法の頭巾の力でグンターに姿を変えていたのだ。
彼女を組み伏せ、その手から、かつて自分が与えた指輪を奪い、身を守るすべをなくさせるジークフリート。これがヴォータンの仕打ちなのかと嘆くブリュンヒルデ。あくまでグンターとして彼女を迎えるジークフリートだったが、初夜の晩、彼はノートゥングを二人の間に置き、手は出さなかったのだった。


<注釈>

「ギービヒ」は、ギューキのこと。グンター(ギュンター/グンテル)の一族は、「ニーベルンゲンの歌」では、ブルグント族となっているが、「ヴォルスンガ・サガ」ではギューキとなっている。ちなみに「シドレクス・サガ」では、エルムンレク王をそそのかす悪大臣ギヒコが出てくるが、このギヒコも本によってはギービヒと書かれている。
グートルーネは「エッダ」ではグズルーン、「ニーベルンゲンの歌」ではクリエムヒルトと呼ばれている。

大まかなシナリオは「ニーベルンゲンの歌」や「ヴォルスンガ・サガ」などで見られるものだが、ここからの展開は早い。ジークフリートをどうやって探せばよいのか相談しているときにジークフリート本人が訪ねてくるあたりは、かなりのご都合主義具合。グートルーネの母が盛るべきだったホレ薬をグートルーネ自身が盛るし、薬を飲まされたあとブリュンヒルデを手に入れにいくまでの流れはほとんど喜劇だ。しかもジークフリート、竜の血をなめたはずなのに、小人ミーメの心の声はわかったはずなのに、ギービヒの城ではあっさりと騙されてしまう…。

この物語のジークフリートは、王の息子でありながら父なる王も国も既に無く、父の遺産を取り戻すことは考えていない様子でグンター王のもとにやってきている。父を倒した相手が誰だったのかを知らず、その敵討ちすら考えていない。そこが不自然でならないが、ワーグナーの物語では後半エピソードは端折られまくりなので、それも致し方ないのかもしれない。


第二幕 グンターの館

グンターたちが求婚に赴いている一方、館に残っていたハーゲンのもとには、父である小人アルベリヒが訪れていた。
小人の息子ヴォータンが自らの英雄として生んだのがジークフリートだとすれば、アルベリヒにとっての英雄はハーゲンだった。ハーゲンは強く、大胆で利口な男、だが竜を倒すほどの力は無い。
アルベリヒはハーゲンに告げる、神々は闇との戦いで早や未来を悲観している、指輪を奪え、ともに世界を支配しよう…。
指輪は今や、その価値を知らぬジークフリートの手にある。価値を知らぬからこそジークフリートには指輪の呪いが利かない。

指輪を取り戻すことを自分に誓えというアルベリヒに、ハーゲンは、己自身に誓うと言う。アルベリヒは消える。
おりしもジークフリートが、一足さきにウォルムスに戻ってきたところ。彼は首尾よくブルュンヒルデを手に入れたこと、彼女は今、グンターとともにこちらに向かっていることを知らせると、グンターによって妻とすることを許されたグートルーネとともに、早速、館へ入っていくのだった。

ハーゲンは、一族郎党に婚礼の準備をせよ、と高らかに告げる。婚礼準備の中、ブリュンヒルデを伴ったグンターが到着する。ここではめでたく二組の結婚が行われる、グンターとブリュンヒルデ、ジークフリートとグートルーネ。
ジークフリートの名を聞いて、はっとして顔を上げるブリュンヒルデ。彼女は、かつて愛を誓い合った恋人が、別の女性を妻としていることを知る。しかもその手には、グンターが奪っていったはずの指輪があるではないか。
彼女は半狂乱になり、指輪はグンターが奪ったはずのものなのになぜジークフリートが持っているのか、と叫ぶ。ジークフリートはその指輪を自分のものと思っている。グンターは指輪のことは何も知らない。ブリュンヒルトは、求婚にやってきた男が実はジークフリートだったことを知り、人々に偽りの婚礼について告発する。しかし、ホレ薬のせいで記憶を失っているジークフリートは、グンターとして訪れた初夜の晩、二人の間は剣で分かったのだから、彼女の体に手を出してはいない、と思っている。もちろん、かつてブリュンヒルデの処女を奪い、戦乙女としての魔力を無くしたのはジークフリートなのだからブリュンヒルデの言うことのほうが正しいのだが、ジークフリートは何も思い出せないのだ。
二人は人々の前で槍に裁きを願う。神々の名において、嘘をついたほうの身が滅びるようにと。

婚礼の宴のはねたのち、悲しみに暮れるブリュンヒルデに近づいたのは、何もかも承知の上のハーゲンだった。聖なる誓いは破られた、ならば裏切り者は生かしておくべきではない。裁きを願った槍は、裏切り者を倒すだろう―― そう囁いた彼は、ブリュンヒルデから、ジークフリートの弱点を聞き出す。
それは、決して敵に背中を見せることは無いからという理由で守りの呪文をかけられていない、ジークフリートの背中の一点だった。

ハーゲンとグンターはジークフリートの殺害を計画し、彼を狩りへと誘い出す。


<注釈>

「その指輪を捨てなければ、世界は破滅する…」指輪物語の世界を思い出す場面だ。だが、ブルュンヒルデはその指輪の意味を知っているはずなのに、ジークフリートにもらった指輪だからと、決して手放そうとはしない。
指輪が、世界を、家族を破滅に導く呪いを持つと知りながら、自分勝手な愛を貫き手放そうとはしないブリュンヒルデ。ここにもワーグナーの考える破滅的な愛を感じる。

「ニーベルンゲンの歌」ではジークフリートが指輪を奪うのはブルグントの城。
「ヴォルスンガ・サガ」ではジークフリートが与えるのは指輪ではなく腕輪で、腕輪を奪うのは炎に包まれた城の中。奪われた指輪/腕輪を持っているのは、どちらもクリエムヒルト。
ブリュンヒルトを陥れるための小道具に使われるのみで、ここまで重要な役割は果たさないはずだった。また、他の伝承では、背中の弱点を教えるのも、クリエムヒルトである。

竜の血を浴びて無敵になるというモチーフが使われなかったために、ジークフリートの弱点は「血を浴びることのなかった背中、菩提樹の葉が落ちた部分」ではなく「敵に向けることのない背中」である。また、ジークフリートを守っているのはブルュンヒルデの魔力ということになっている。

グンターがハーゲンに言われてジークフリート殺害を決意する理由も少し弱い。
大衆の面前で恥をかかされたからなのか、ブリュンヒルデを先に手篭めにしていたと知ったからなのか、ニーベルンゲンの指輪を手にしていたからなのか… 義兄弟の契りを交わし、花嫁を手に入れるために尽力した人物の殺害を決意するのが早すぎて、二人とも物凄く情のない人間に見える。

ジークフリートもジークフリートで、ブリュンヒルデがこれほど嘆いているのに、ホレ薬のせいで全く記憶をなくしているからといって全く思いやりがないのは、いささか軽すぎる。(少なくともヴォルスンガ・サガでは、少しずつ記憶を取り戻しており、後々で後悔する彼の姿が見られる)


第三幕 森の中・グンターの館

いよいよ最終幕。
再び登場した水の乙女たちは、ハーゲンらとともに狩りにやって来たジークフリートに、指輪を頂戴とねだる。しかしジークフリートは応じない。乙女たちは指輪にかけられた呪いを教え、呪いによって指輪を手にするものは死にいたること、ラインの流れだけが呪いを浄化することを教えるが、これは恐れを知らぬジークフリートにとって逆効果。彼は、そんな呪いがあるのならノートゥングの剣で断ち切ればいい、と、けんもほろろにつき返す。

乙女たちは去り、ジークフリートは、ハーゲン、グンターと合流する。何か獲物は見つかったか、と問うグンターに、彼は、川に三羽の小鳥がいて、自分は今日殺されるだろうと歌っていた、と告げる。ジークフリート殺害を目論むグンターはぎくりとするが、ハーゲンはそ知らぬ顔である。このとき、ジークフリートは、いつもよりはしゃいでいた。
「あなたは鳥の言葉が分かるようだが、どうやってその言葉が分かるようになったのか」と問うハーゲン。ジークフリートは、かつて竜を倒したこと、ミーメを殺したことなどを語り出す。
ハーゲンは、酒の中に薬草を搾って入れ、手渡す。それは過去を思い出せる霊薬、ホレ薬の魔力を消して、彼自身に、失われたブリュンヒルデとの過去を蘇らせるためのものだった。
酒を飲み干したジークフリートは、語り出す。語りながら思い出していく。そして口にする、ブリュンヒルデとの過去を… 木から、ヴォータンの放っていたニ羽の鴉、吉報を待つ神々の最後の使者が飛び立つ… その声に思わず振り返ったジークフリートの背中に、ハーゲンは深く、かつてジークフリート自身が誓約した槍を突き刺した。
崩れ落ちるジークフリート。慌てるグンター。ハーゲンは去り、ジークフリートは、ブリュンヒルデの名を口にしながら息絶える。


館で夫を待っていたグートルーネは、人々が運んできた夫の亡骸を見て失神しかかる。非難されたグンターは、それをしたのはハーゲンだと罪を転嫁。だがハーゲンは堂々として、神聖なる誓いを破った者には当然だ、むしろ自分は、その報酬として指輪をいただいてもいいくらいだと言う。
ハーゲンは、異を唱えたグンターを一刀のもとに斬り殺し、指輪を奪おうとするが、ジークフリートの死体がまるで生きているようにそれを拒み、恐れのあまり指輪を奪えない。

そのとき、ブリュンヒルデが現れた。
彼女は、かつて自分がジークフリートと永遠の契りを交わしていたことを語る。グートルーネは、ジークフリートに記憶を消す薬を飲ませ、自分に誘惑させたハーゲンの企みを知り、自分が利用されていただけなのだと知る。
ブリュンヒルデは、指輪をラインの娘に返し、自らは、愛馬グラーネ、ジークフリートの遺体とともに荼毘に付されることを望む。かつて妹に懇願されても手放さなかった指輪をラインに返すことを決意するは、もはやジークフリート亡き今では、その愛のしるしであった指輪ももはや意味を成さないということなのか。

ジークフリートの死体に威嚇されて遠ざかっていたハーゲンだったが、指輪を受け取るためライン河からあらわれた水の乙女たちを見てうろたえ、指輪に飛びつこうとする。河は彼もろとも指輪を飲み込んでしまう。
ブリュンヒルデとジークフリート、そしてグラーニを包み込む炎はギービヒの館を燃やし尽くす。そしてまた天上では、ワルハラの宮殿に火が放たれようとしていた。

ワルハラは、かつて運命の女神たちの予言したとおりに、明るい焔に包まれて崩れ落ちていく。神々と英雄たちは去った。
こうして、物語は終わりを告げる。


<注釈>

「ニーベルンゲンの歌」では、水の乙女たちが未来を警告する相手はハゲネ。ここではジークフリートはせっかくの乙女たちの忠告を信じないが、「歌」のハゲネは、疑いつつも、頭から否定したりはしなかった。エルダの忠告を聞かないオーディン、水の乙女たちの忠告を聞かないジークフリート、この物語の中では女たちの忠告を否定する男たちが破滅する姿が繰り返される。
それにしても、なぜハーゲンは、ジークフリートを殺したその時に指輪を奪ってしまわなかったのか。かなり謎である。

いきなりキレてグンターを殺してしまうという展開も、他の伝説には存在しない。グートルーネがブリュンヒルデに「私こそ彼の本当の夫」と言われてあっさり身を引くのもこの物語だけで、本当はグートルーネも「私こそが」と言い返し、女の争いに発展する。かなりストーリーがはしょられているので、このへんは、かなりあっさりだ。(お陰でグートルーネのキャラが薄い…)

ブリュンヒルデがジークフリートと心中するのは、エッダやサガにも見られるが、グラーニまで焼いてしまうのは、おそらく、オーディンの息子バルドルの死も交じっているのだろう。


* 何か一言 *


一応、きれいにまとまってはいるのだが、最後のほうの展開の速さは異常。(笑)
下敷きになってる物語を知らなければ、何がどうなっているのかわからないんじゃないだろうか。

ストーリーを早回しでなぞっているので、人間たちのキャラクター的な魅力の掘り下げは、元となっている各種の伝承に比べれば浅い。
また、多くの矛盾点が存在する。
ジークフリートは、神々にかけられた滅亡の呪いを引き受けて、かわりに死んだとブリュンヒルデは言う。そして彼女は指輪を捨てる。
なのに結局、神々が滅亡してしまう。それに、そもそもジークフリートは、恐れを知らぬゆえに指輪の呪いを受けないことになっていたのではなかっただろうか? 意味がわからない。これではジークフリートは死に損だ。

せっかく指輪がラインに戻され、呪いは浄化されたはずなのに、なぜワルハラは炎上するのか。(ヴォータンの放った鴉は、指輪がラインの乙女たちのもとに戻ったことを継げたはずなのに)
せっかく指輪を手にするチャンスなのに、最後のシーンで、アルベリヒが登場しないのは何故か。

神々は滅び、英雄も死に、結局何が残ったのか、何が救われたのか?
各キャラクターは、自分のやってることに一貫性が無く、単に運命(決められた筋書き)に踊らされているだけで、自分自身の意志は無い。自分たちが何を求めているのか、何のためにそこにいるのか、何をしているのか、またはさせられているのか…を、全然知らない。知ろうとしている気配もない。
神話ファンにとって、この物語があまり高評価たりえないのは、こうした部分のストーリーの弱さ、登場する神々そして人間たちに力強さが欠けていることにある。

愛を求めた人は、誰もがみな、愚かだった。ただ一人、権力と世界支配の夢を最初から最後まで一貫して追い続けた、醜い小人アルベリヒが実は最も賢かった。この物語の示唆するところは、愛は滅びしかもたらさなかったということ。私はそう思ったが、ヴォータンよ、あなたはいかがお考えになるだろうか…。

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