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Rilke  "Klage"

なげき


O wie ist alles fern
und lange vergangen.
Ich glaube, der Stern,
von welchem ich Glanz empfange,
ist seit Jahrtausenden tot.

ああ、すべては、なんと遠く
ひさしく過ぎ去っていることか。
わたしがいま、その輝きを
受けているあの星は、
何千年の昔から死んでいると私は思う。

Ich glaube, im Boot,
das vorüberfuhr,
hörte ich etwas Banges sagen.

いま過ぎていった舟の中で
不安な気配がかたるのを
聴いたように私は思う。

Im Hause hat eine Uhr
geschlagen . . .
In welchem Haus? . . .
Ich möchte aus meinem Herzen hinaus
unter den großen Himmel treten.
Ich möchte beten.

Und einer von allen Sternen
musste wirklich noch sein.

家の中で
時計が鳴った……
どの家だろう……
わたしは自分の心からふみだして
大きな空の下に立ちたい
わたしは祈りたい。

すべての星のうち、どれかひとつは
まだ本当に存在するにちがいない。

Ich glaube, ich wusste,
welcher allein
gedauert hat, -
welcher wie eine weise Stadt
am Ende des Strahls in den Himmeln steht . . .

どの星が、いまも
孤独に永らえているのかが
わたしには判ると思う―――
その星は、白い都のように
ひかりのむこうのはての、大空の奥に出ている。


和訳/「リルケ詩集」 生野幸吉(白鳳社)
Rainer Maria Rilke, 21.10.1900, Berlin-Schmargendorf


■この詩の鑑賞■

 夜空の星を見上げる。なんともロマンチックなイメージがある。しかし実際のところ、それらの星は地球から何千光年と離れており、いま見えている光は実は何千年も前のものなのである。
 もしかすると、その星は既に死んでいて、最後に発した光が、まだ地球に届いていないだけかもしれない。
 星さえも不死にはなれず、時の流れは、天の輝きをも支配する。

 そんなことを思いながら、リルケは空を見上げて、「あそこに輝く星はみんな死んでいる。まだ生きている星はどれなんだろう」と、探すのである。
 天才的なひねくれ具合だと私は思う。

 星は希望の象徴でもある。
 暗い夜空に死んだ青白い星たちが浮かぶ中、たった一つ、まだ命ある輝きを探そうとする、詩人のひたむきな視線を感じたとき、…ぞっとすると同時に、何か胸に押し寄せる切なさのようなものを、感じないだろうか。



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