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Hesse  "Ravenna"

ラヴェンナ


私もラヴェンナに行ったことがある。
ささやかな死んだ町で、
書物にもよくしるされている
数々の教会とたくさんの廃墟がある。

町を通り抜けて、振り返ってみると、
街路はいたく陰気で湿っている。
千年のよわいを重ねて、ひっそりと語らず、
到るところこけむし、草がはえている。

[独逸語]
Ich bin auch in Ravenna gewesen,
Ist eine kleine, tote Stadt,
Die Kirchen und viel Ruinen hat,
Man kann davon in den Büchern lesen.

Du gehst hindurch und schaust dich um,
Die Straßen sind so trüb und naß
Und sind so tausendjährig stumm,
Und überall wächst Moos und Gras!

[英語]
I have also been in Ravenna;
it is a small, dead town,
and has churches and many ruins
that one can read about in books.

You walk about and gaze around:
the streets are so gloomy and wet,
and so mute with the weight of a thousand years,
and everywhere grows moss and grass!


さながら古い歌のようだ――
その調べを聞いても誰も笑わず、
みな耳をかたむけ、聞いたあとでも、
夜中までみな物思いする古い歌のようだ。

[独逸語]
Das ist wie alte Lieder sind,
Man hört sie an und keiner lacht,
Ein jeder lauscht und jeder sinnt
Hernach daran bis in die Nacht.

[英語]
It is as old songs are:
people hear them but no one laughs,
and each listens and each reflects
upon them until deep in the night.


【2】

ラヴェンナの女たちは、
深いまなざしとやさしい身ぶりをしていて、
古い町と城壁の昔のことを、
よく知っている。

ラヴェンナの女たちは、
おとなしい子どものように泣く、深く小声で。
笑うと、悲しい歌詞に対する
朗らかな曲のように思われる。

ラヴェンナの女たちは、
子供のように祈る、やさしく、満足しきって。
彼女らは愛のことばを語ることが出来るが、
欺いていることを、自分で知らない。

ラヴェンナの女たちは、
異様に、深く、ひたむきにキスする。
彼女たちはみな、人生のことといえば、
われわれは死ななければならない、ということしか知らない。


和訳/「ヘッセ詩集」 高橋健二(白鳳社)
Alfred Valentin Heus(1877-1934), op. 8 no. 1.
Othmar Schoeck(1886-1957), op. 24b no. 9 (1906-15).

オンラインテキスト>>http://www.recmusic.org/lieder/h/hesse/ravenna.html


■この詩の鑑賞■

 ラヴェンナといえば、ディートリッヒ・フォン・ベルンが本拠地とした町・ベルンの古名。「ラーベンシュラフト(ラヴェンナの戦い)」と、いう叙事詩作品が存在する。
 この「ラヴェンナの戦い」は、大敗を喫し多くの味方を失うという悲しい物語だが、それ以外にも、このラヴェンナという地を巡って語られる物語は多い。
 また、物語上の英雄であるディートリッヒのモデルとなった歴史人物、テオドリクも、実際にこの町を生涯の故郷とし、骨をうずめている。

 そんな、歴史ある古い町のことを、「今は過ぎた栄光の場所」として描いたのが、この詩である。

 「書物によくしるされている」ことを、読書家だったヘッセはもちろん、知りすぎるほど知っていただろう。
 そこで行われた架空の戦いのことも、歴史上の出来事も、そして、その町を愛した祖先たちのことも。
 時を越えて語り継がれるラヴェンナの物語を通して千夜を一夜に思えば、ヘッセの生きた時間から現代までは、ほんの瞬きするほどしか経っていない。


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