■その他のゲルマン関連伝承 |
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最初に、物語をいくつかの段階に分ける。
序章は、ジゲバント王がノルウェーの王女を妃とし、息子ハーゲンをもうけるまで。
第一部は「ハーゲンの部」と名づけ、ハーゲンがグリフィンを倒して3人の王女を救い自国に戻り、結婚するまで。
第二部は「ヒルデの部」と名づけ、ハーゲンの娘ヒルデが勇士ヴァーテによってヘッテル王の国へ連れ去られ、結婚するまで。
第三部は「グートルーンの部」と名づけ、ヒルデの娘でハーゲンの孫、表題の王女グートルーンへの求婚と戦い、ラストシーンまで。
以下、この4つの分類で話ををすすめる。
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この中で、「ハーゲンの部」については、関連する伝承は古北欧語の資料の中には見出されていない。
あるのかもしれないが、専門家が書いてないものをオレに見つけろっちゅーのはムリな話で(笑)
グリフィン討伐、攫われた王女の救出や、その王女との結婚など、かなりメルヘンチックな内容なので、後世の詩人による創作かもしれない。
「ヴォルスンガ・サガ」との類似点も多いが、そもそも「ヴォルスンガ・サガ」からして、その時代にあった基本的な要素を盛り込んだお徳用パックな物語なので、ヴォルスンガ・サガが直接、この物語の元になっていると言い切るのも、疑問だ。
むしろ、同じ「アンブラス写本」に納められた、「エーレク」や「イーヴェイン」の影響ではないか、と思われる部分も多い。
最初の紹介のページにも書いたが、この「グートルーン」は、16世紀に書かれたアンブラス写本一種類しか、テキストが残されていない。つまり、その前段階となったであろう話は、一切残されていない。
「ハーゲンの部」のエピソードが、どのあたりの時代に付け加えられたのかは、確定できない、というわけだ。
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続いて「ヒルデの部」だが、これには、かなり古い時代の資料が見つかっている。
まずは8世紀の「ウィドシス」。ハーゲンはホルムルギール人の王ハガナ、ヘッテルはグロメン人の王ヘオデン、ヴァーデはヘールジンゲ人の王ワーダ、として登場する。
もう一つは9世紀の「デオールの嘆き(哀歌)」。これは、ヘーレンダという詩人のために主人の寵愛を失った、デオールという詩人のグチ(笑)なのだが、デオールはヘデニンガス、つまりヘッテルの一族、と名乗っている。ヘーレンダはホラントと同義の名前であり、歌の巧いホラントに職を取られたー、と愚痴るヘッテルの親戚と読むことも出来る。
・・・だから、何? と、言われても困るが・・・。
ところで、他の北欧神話には、ホラントやヴァーデの名前は出てこない。たとえばエッダの中には、既にヒルデブラントもスィーズレク(シドレク=ディートリッヒ)も、登場することと比べてもらいたい。
古くからある伝承であることはほぼ確実なので、、アイスランドで書かれたエッダなどの資料に登場しないことは、この伝承の成立場所が南方(たとえばドイツやオランダ周辺)だったことを示唆していると考えられる。
その、古いドイツの伝承にはどんなものがあるのか、というと、12世紀のランプレヒトの叙事詩「アレクサンダーの歌」と、いうものがある。
この叙事詩では、ヒルデの父・ハーゲンとヴァーデが戦い、ハーゲンが命を落としたことになっている。グードルーンでは、ハーゲンとヴァーデは和解し、その次の世代で、ヘッテル王が、娘グードルーンを略奪したハルトムートの父親、ルートヴィヒによって討たれる。
花嫁の父が婿に殺される、という、いかにも北欧チックな悲劇は避けたかったのだろう。ここにも、この作品の詩人の徹底した平和主義と人道的嗜好が伺える。
もう一つは、イーディッシュ語で書かれた「ホラント公」という作品。ヘッテル王はエテナという名前で登場し、ホーラントやヒルデなど同名の登場人物が多いようだ。
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続いて「グートルーンの部」に入る。
この部分について、古い原型の存在は明らかにされていないが、さらわれた姉妹の救出、さらわれた先での労働内容が洗濯である、など、幾つかの似た要素を含む話として、「ジュデリ」「海辺の洗濯女」という作品タイトルが挙げられていたので、ここに記しておく。
そしてもう一つは、低地フランク語による「クードルーン歌謡」である。
実は、この部分についても、はっきりと関連のある資料は見出されていない。
こちらは、ヴァイキング時代の吟遊詩人による歌謡の特徴を強く出しているようだが、「グートルーン」に影響をもたらしただろうと見られている。
さらに、「オルランド・フリオソ」(「狂えるオルランドゥ」のイタリタ語タイトル)との関連も、示唆されている。
こんなところでいきなり、オルランドゥ氏に会ったのでチトびっくり。東京で実家周辺の人に出会う、みたいな。(どんな喩えだ)
似ているところ半分、似てないところ半分、という感じで、関係があるというよりは、「共通した元ネタからヒントを得たのではないか」と、いう予測くらいのものである。
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以上、関連するとされる伝承を列挙してみた。
はっきり言ってしまえば、「ヒルデの部」以外は、はっきりした元ネタが分からないわけで(笑)
原語で見ると、韻の踏み方などかなりの割合で「ニーベルンゲンの歌」の真似をしているとのこと、あるいは、詩人は、自身の力で多くのエピソードを新たに付け加え、この作品を作り上げたのかもしれない。
ギリシア神話からの流用と思われるグリフィンなどの存在、ハーゲンの国が北欧でもドイツ周辺でもなくアイルランドであることなども、考察すれは深くなりそうだが、生憎、今のところ資料を持っていないので、今回はここまで。