「鍛冶屋ヴェルンド」のほうが慣れているんだけど、一般にはヴィーラントらしいです。
当時、鍛冶の技術ていうのは限られた者だけしか手に入れることの出来ない秘儀中の秘儀で、これを手に入れたものは一生を約束されるくらいのスゴい技でした。「シドレクス・サガ」では、ヴィーラントも、秘境の山に篭もって、小人たちのもとで厳しい修行をしています。
ちなみに彼、鍛冶屋だけど王子らしいですからね。お父さんは巨人、ジイちゃんが妖精王らしいですよ。
まるで「ポポロ●ロイス物語」のよーだ(笑)。異種族間の結婚もOKだったんですね。ってことは、ヴィーラントの息子のヴィテゲは妖精族+巨人族+人間…? うーん、惜しい! あと竜族の血が入れば完璧だったのに!(コラ)
最初の妻ヘルヴェルも人間じゃない(ヴァルキューレ)だし。
そりゃ息子も人間離れするさ! はっはっは。
と、まぁ軽いノリは置いといて。
ヴィーラントの物語には色々と面白い要素が出てきます。たとえば、鍛冶屋アーミットとの仕事勝負する話。足の腱を切られて無人島に幽閉される話。脱出のためイカロス伝説のごとく翼を製造する話。ヴィーラントの弟が、息子の頭の上にリンゴ乗っけて打ち抜く話。
どこかで読んだことがあるような、懐かしいような、それでいて怖いようなモチーフがてんこもり。
日本で読まれている童話って、もしかするとほとんど北欧神話が元になっているのかもしれません。
基本的にイイ人なんですが、嫁にくれるといった王女を嫁にしてくれなかった挙句、騙して足の腱を切りやがったので、復讐の鬼と化している場面もあります。
王様の息子を殺して、頭蓋骨で杯作ったり。
姫さまをおびき寄せ、酔わせて手篭めにしちゃったり。
でも、姫さまが自分の子供を宿したと知るや、やっぱりいい人に戻っちゃうんですよね。城から逃げるとき、「彼女に辛く当たらないで下さい、生まれてくる子供を苛めないで下さい」ってお願いしてから空の彼方へ去っていく。
のちに、姫さまと息子をひきとって、一緒に暮らすようにもなります。
「王よ、我が花嫁であるあなたの娘を、どうか慈しんでくださるよう。
そして、生まれて来る私の子には手を下さないとお誓いください。」
…と、まあ、人様の子供を殺して、その頭蓋骨から歯から血から加工した、鬼のような人とは思えないほど人間的なセリフを口にします。このとき、半神の伝説の英雄は、ただの人間になってしまったのかもしれません…。
その後の彼は、息子のヴィテゲにいろいろ贈り物をしているところからして、マイホームパパだったのでしょう。
一人息子が「鍛冶屋になくかなりたくない。戦いにいきたい!」と、言い出したとき、やたら嬉しそうに名刀ミームングを差し出していますからね。(それって親バカなんじゃー…。)
色々と辛いメにもあってるヴィーラントだけど、実のところ、素敵な家族に囲まれて幸せな人だったんじゃないでしょうか。やたらと悲劇的な結末を迎える人の多い、ゲルマン伝説の中ではね。