■ディートリッヒ伝説-DIETRICH SAGA |
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ヒルデブラントの親戚一同が皆してやたらと熱いことは、各人物紹介でも書いたとおり。
兄弟・甥っこだけではなく、もちろん、息子も、熱いんです。
師匠の奥さんの名前は、ウオテ。「シドレクス・サガ」には登場しないようですが、「クリエムヒルトのバラ園」など、「ヘルデン・ブッフ」からの出典の話には、ちらほらとお名前が見えます。
家に帰る=「ウオテ夫人のもとへ帰る」
一服する=「ウオテ夫人の腕に抱かれる」
故郷=「ウオテ夫人のいるところ」。
オイオイ。それでいいのか師匠。恋愛結婚か。それとも見合いか。
主君の追放とともに国外に出るときなんか、きっと大変だったと思うんですよね。ご夫人と、幼い息子を残しての旅立ち。息子がまだ幼かったということは、師匠、晩婚でしょうか。ま、頑固一徹・使命一筋の武人が、そんな早く結婚するとも思えませんが。
そんなわけで、息子さん・ハドゥブラント(一人っ子?)。
ヒルデブラントが、ディートリッヒとともに亡命したときはまだ子供でしたが、帰ってきたときは既に成人して、ベルンの町を立派に治めていました。しかし、あまりに長い年月がたちすぎて、父親の顔が分かりません。
「ヒルデブラントの挽歌」など古いバージョンの伝説では、ヒルデブラントのほうも息子が分からず、本気で殺しあってしまうという悲劇になりますが、「シドレクス・サガ」では、そんな悲しいことにはなってません。
師匠は、エルムリッヒ亡き後の国の様子をさぐるため、フン族の格好をしています。それで、ハドゥブラントは、父親をフン族だと誤解して、異国人に自分がタメ口きかれていることに、いきなりキレだすのです。
ハドゥブラント「何と偉そうなのか、この、老いたるフン人めが。」(剣を抜く)
ヒルデブラント「年上のものに対する口のききかたを教えてやろう。」(剣を抜く)
熱いです。親子の戦い。
しかしやはり師匠は強かった。若い息子を組み伏せて、剣つきつけながら、自分の正体を明かします。
ヒルデブラント「わしの名を教えておいてやろう、若者よ。わしはヒルデブラント。お前の父親だ」
ハドゥブラント「…! 嘘だ、父は、フン族の国で死んだと」
ヒルデブラント「嘘ではない。ならば、お前の母ウオテ夫人に問うてみよ。お前が生まれたときは、ちょうど三日月の美しい夜だった。お前の右のお尻には生まれつき大きなアザがあって、左ふとももの付け根には」
ハドゥブラント「う、うわぁーーーー(真っ赤) す、すいません父上!!」
部下一同(…そうだったのか…。)
仕置完了。
血みどろでもどってきた息子に母はびっくり。ウオテ夫人は、「ああ! なんてこと、いったい誰がこんな酷いことを?!」。息子は笑顔で答えます。「いや、なに。大したことはありませんよ。ちょっと親父のげんこつを喰らったまでです。」「親父…? はっ、まさか、あの人が?」
ヒルデブラント「ただいま。帰ったよ」 ウオテ「あなたぁ〜!(号泣)」
いや、家族ドラマはいいのですが、さっきから忘れられてますディートリッヒ。
「…邪魔しちゃまずいかな…(ぽりぽり)」奥さん連れて戻ってきたばかりのディートリッヒ。この時点では、まだ子供いません。ヒルデブラントにとっては、ディートリッヒも息子のひとりみたいなもんでしょうか。
いや。いいですよね。父と息子の物語。