■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
そうこうしている間に、騎士たちの、美女争奪一騎打ち大会が始まってしまった。
厳正なるクジ引きの結果、一番手に選ばれたのは、騎士アストルフォ。”大金持ち”の”美男子”で”独身”だが、派手好きで自意識過剰なところのある人物。(…要するに、ちびまる子ちゃんの花輪君なのではないかと思われる。)
しかも弱い。
そんなアストルフォが挑戦したのだから、負けるのは当然である。
「Ohベイベ、何てことだ。この僕が負けるとは。今日はついてないよMyゴッド」
「……。(いつものことだろが、お前は)」
人々の冷たい視線を受けながら、貴公子・アストルフォは、しおしおと捕虜席に。
普通、こんな弱っちいド派手な男には惚れないはずである。ところが、これを見ていたアンジェリカは思った。
「マア。なんて良い男v 顔はすてきだし、若いし、金持ちだし。」
そしてしもべ巨人たちに、「お前たち。あの方を丁寧に扱っておあげ。」と、言いつけたのである。
女ってそんなもん。
清純そうに見えても、内心、計算づくめよ! 顔がよくて財産持ってて御しやすそうな独身男は、いいカモにしか見られないんだって。騙されてはいかんよ、男性諸君。(←お前は何者だ)
一番手が倒れ、次の挑戦者が進み出る。二番手は、荒くれ者のサラセン人、フェローだった。
そう、この一騎打ちは勝ち抜き制。シャルルマーニュ側の騎士は次から次へと出てくるが、アンジェリカ側の騎士、ウベルト(本名;アルガリア)は、たった一人なのである。当然、いつかは勝てる。誰もがそう思っていた。
ところが、話はそう簡単ではない。姉のアンジェリカが魔法の指輪を持っていたように、弟の手にも、ベンリな魔法アイテムがあったのだ。
何を隠そう、それは槍。突いた者を確実に馬から突き落とす、という、無敵の魔法が、かけられていた…!
サギじゃん。
突けば、必ず相手が馬から落ちるんだから。いいのかそんな話。
フェローの場合も、そうだった。ぶつかり合うや否や彼は馬から突き落とされ、派手に地面に転がった。あの強いフェローも落ちた?! と、人々びっくり。
普通は、ここでおしまいである。だが、フェローは自分の負けを認めなかった。「ふざけんな! 貴様、降りてきてもっと戦え!」と、剣を抜いたのである。
抜かれたら抜き返すのが騎士の礼儀。馬に乗ってない相手に馬上から戦うのは卑怯だし、剣に対し槍で戦うのも無作法。…と、いろいろ面倒な仕来りがある。
仕方なく、アルガリアは剣を抜いてフェローに立ち向かうのだが、これがまた、あまりにも、強い。魔法の槍が無いと勝てないのだ…。アルガリアはたちまち降参して、フェローに姉をやると約束してしまう。
早ッ。
二人目にしていきなり降参かよ。
魔法の槍が無ければ、ただの人?
それを見て、アンジェリカは激怒した。
「何? この私に、あんな無骨そうな野蛮人の嫁になれというの? とんでもないわ、アルガリア! やってらんない。私行くから、さようなら」
と、指輪の魔力でドロン。姿を消してしまった。
場内騒然。どういうことだと問い詰められたアルガリア、馬に飛び乗り姉のあとを追いかけて逃亡。当然、フェローもおっかける。その他、挑戦の順番を待っていた騎士は、ポカンとしている。
「あ、あのー…、私はどうすれば?」
アストルフォは、置いてきぼりをくらってしまったのだった(笑)
「しょうがない。ここは、気を取り直して、予定通りの試合を行おう。」
盛り下がった場をとりつくろうために、シャルルマーニュが提案する。自分の槍を、さっきの戦いで折られてしまったアストルフォは、アルガリアが残していった槍を手に試合にのぞむ。
すると、どうだろう。
それまでサエない弱っちい騎士だったアストルフォが、まるで別人のように強いではないか?!
槍に魔法がかかっているんだからそれも当然なのだが、本人ふくめ、周りの誰も、この秘密を知らない。魔法使いマラジジが不在だからだ。
…いい加減、誰か、彼がここにいないことに気がついてやりなよ。
+++
さて。その頃、はるか後にアルガリアと戦うはずだった、くじ運最悪のオルランドゥはというと。
彼は本気で、かーなり姫君にホレていた。マジだったのだ。「お前はオレの運命の女だ!」と、言わんばかりに。
その、意中の美女が逃げてしまったと聞くや、彼は顔色を変えた。「逃げただと。…そんなことは許さない。あいつは俺のものだ。地の果てまでも追いかけてモノにしてみせる!!」
リナルドもまた、同じ想いだった。
「逃げたってことは、フェローが嫌だったんだろ。だったらオレのほうが見込みありそうだよな?」
かくて、王様主催の武術大会をうっちゃって、色恋沙汰に走った男が三人。消えた姫君を追って、森の中では、フェロー、オルランドゥ、リナルドによるサバイバル追いかけっこが始まったのである。
そんなんでいいのか君たち。騎士ってそんなもんか?
…騎士道の全盛期シュタウフェン朝の時代はもはや遥かに遠く。
まぁな。この時代の騎士物語じゃあな。
これはルネッサンス期の騎士道物語なので、はっきり言って、ギャグなのだ。許してあげてほしい。
なお、魔法の槍をなくしたアルガリア王子は、おっかけてきたフェローにさっくり殺されてしまい、この後のエピソードには、登場しない…。
悲しいことです…。
[アンジェリカ物語はまだまだ続く!]