シャルルマーニュ伝説
-The Legends of Charlemagne

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つっこみルネッサンス

リナルドの冒険


 リナルドさんは、エイモン公と結婚したシャルルのもう一人の妹(姉?)の、4人の息子のうちの1人である。
 オルランドゥ(ロラン)より若く、先に戦場に出たセンパイの名声を聞いて育ち、心の中に、自分もそんなふうになりたい! と、いう気持ちがあった。
 名声ったって…国内のサラセン人をぶん殴って得た名声なんだが^^;

 さて、強くなりたいと、森など歩き回っていた不審人物・リナルド。あるとき、誰も乗っていない馬が、甲冑と剣を積んで木陰に休んでいるのに気がついた。
 彼はそれを見て、ラッキーとばかり、甲冑を着込み、馬に乗った。
 貴族のぼんが、落ちてるものを拾うのか?
 どうやらフランスの王族は野に生きる根性の血筋らしい。

 しかし最後の理性と言うかなんというか、彼は、剣だけは手にしなかった。誰か高名な騎士から奪うまで、剣は手にしないという誓いをたてていたからだ。(要するに、えり好みである。)

 馬に乗ったまま、ぽくぽく行ってると、行く手に見知らぬご老人があらわれた。
 「騎士さん騎士さん。あんた、いい馬は欲しくないかね。この先の森に、とんでもない暴れ馬が住んでいる。こいつの名はバヤールといい、出会った者は、その強靭な足腰で、残らず蹴り殺されるという。」

 ちなみに、そこの森はアルデンヌの森といって、昔からたくさんの冒険が行われてきた場所である。
 馬は元はスペインの英雄・アマディスのものだったが、現在は悪い魔法使いの呪いにかけられて、暴れ馬になっているのだ。そして、この馬をモノにするときこそ、魔法使いの魔法が破られる時。馬を手にすることが出来るのは、アマディスの血を引く、アマディスのように勇敢な騎士だと予言されていた…。

 騎士さんは、こういうノリが大好きである。
 「ぃよっしゃア! オレがその馬を手に入れてやる!」
 と、ばかり、リナルドは何も考えず馬入手のため走って行ってしまった。
 後ろでほくそえんでいるのは、あの魔法使い。…何を隠そう。リナルドに馬を与えた、この老いぼれ魔法使いこそ…

 リナルドの従兄弟、魔法騎士マラジジだったのだ!

 えっ、お約束的に、馬に呪いをかけた魔法使いじゃないのかって?
 ……そう、違うのだ。彼は正真正銘、リナルドの親戚・マラジジさん。立派な騎士になりたいという従兄弟のために冒険をお膳立てして、木の下にわざとらしく馬と甲冑(冒険の道具)をそろえたり、自ら変身して尤もらしく伝説を語ってみたりしたのだった。
 言ってみれば、アーサー王伝説の魔法使い、マーリンの役回り。
 というか、RPGでありガチな、最初の冒険を言いつける村長的役回り。

 マラジジの冒険アフターケアには漏れが無い。
 リナルドが、馬じゃなくサラセン人騎士と出くわしてケンカになったときも、農夫に変身して通りかかり、「ハイハイ。ケンカはおよしよ、お2人さん。これから馬を捕まえに行くんなら、2人いたほうが便利だよ」と、うまく仲直りさせて協力させることに成功。まさに、ダンジョンの途中にセーブポイントをおいて回るかのごとく。
 とても甲斐甲斐しい魔法使いなのだ。

 なお、戦いの後には友情が芽生えるのがお約束である。
 リナルドは、サラセン人の戦士イゾリエと友達になり、いっしょに馬・バヤールを探しに行くことにした。ちなみにバヤールとは、「鹿毛(バイ)の馬」を、意味する。
 鹿の毛を持つ馬とは、体は褐色で四肢の下部や長毛(たてがみや尾)が黒いもののことを言うらしい。見た目的にけっこうポピュラーなかんじの色。

 その、問題の馬は、森の奥深くにいた。そして、ものすごい勢いで木々に突進し、障害物はすべて跳ね飛ばして真っ直ぐに突っ走っている。
 見事だが、とてつもなく気性が荒く、人間を見るといきなり、木をふっ飛ばしながら襲い掛かってきたのだ!

 …イノシシ?
 ……もののけ姫に出て来そう。


 思わず槍を構えるイゾリエ。だが、槍は小枝のように吹っ飛ばされてしまう。これには騎士たちもビビってしまった。馬をおとなしくさせるには、組みしいて屈服させなければならない(Byマラジジ)のだが、こんなん近づいたら殺されるっちゅーねん。
 それでもイゾリエがんばる。国で待ってるおっかさん。オレが…オレが栄光を見せてやるよ…
 「うおおー、来いッッ!」
剣を抜いて立ちはだかるイゾリエ。だが馬は、激しい勢いで突進して来る…

 どかっ …あぁあああ…

 「イゾリエぇぇ!!!」
 脳天に蹴りをくらって吹っ飛ばされ、倒れたイゾリエは脳挫傷・全身強打で即死。そのとき、リナルドの中で何かが弾けた。
 友の死にシャウト/肩をふるわせつつ涙/秘められた力が覚醒…お約束。

 「うおお! お前の仇は、オレが討つー!」
涙をふりはらい、少年は今、大人になった。(どんな話だよ)

 全身の力をこめて、バヤールに殴りかかるリナルド。
 「オレの拳を受けてみろォォォ!」
素手で馬を殴り飛ばす騎士なんて、あんましいないと思うだが…

 バヤールも負けていない。
 「ぶひひ、ひひーん!(汚らしい手で触るなッ)」
強烈な蹴りで応酬する。戦いは苛烈を極め、人と馬は血ィだらだらの状態でもみあいつづけた。
 (頑張れリナルド! 立て。立つんだ、ジョー!)
木陰から、そっと見守るマラジジ。そして、長きに渡る戦いの果てに、決着の時が訪れた…。

 リナルドが、ついてにバヤールを地面に押し倒したのだ。
 組み敷かれたバヤールは、もはやリナルドに抗うことはしなかった。愛撫されて嬉しそうにいななき、彼の所有物になることを受け入れたのだ。(…いや、馬ですけど。)
 リナルドは、死んだ友・イゾリエの馬具をひきついで、この馬につけ、乗って帰ったという。

 …イゾリエ。哀れだ。

+++
 やがてリナルドは、シャルルマーニュの騎士たちの中で、ロランに次ぐ英雄へと成長していくが、その活躍の陰には、必ず、このバヤールがいた。バヤールは全身全霊を込めて主人に尽くし、決して他の主人は認めようとしなかったのである。

 この、愛馬バヤールとの熱い友情物語もアレでナニでソレだが、リナルドらぶな人は、実は他にもたくさんいるのだ。
 たとえば、弟くんたち。何かと兄さんのあとをついてまわり、兄さんのためにあれやこれやと。兄さんの短気で一族がヤバくなった時も、ついてゆきます何処までも。
 いやー、男にばかりモテモテだねぇ…リナルド…。



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