アーサー王伝説-Chronicle of Arthur

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※このページは、「不連続な間奏曲」のSTILL LIFE様より、いただいたものに勝手にスタイルシートを導入したモノです。
 と、いうより「アーサー王のコンテンツ閉鎖する」と仰ったので「じゃ要らないページ下さい! 下さい! くれ!」と、無理言って(半ば脅して?)戴いて来たものです。
 ありがとうございます。STILLさん。


サー・ガウェイン〜変貌する英雄


名前 ガウェイン(Gawain)。ラテン語読みはワルガヌス(Walguanus/Walwanius)。フランスでは主にゴーヴァン(Gauvain)と呼ばれる。
出身地 オークニー
係累 ● ジェフリ・オブ・モンマスによれば、父はロージアンの王ロト、母はアーサーの妹でアンナ。兄弟はモードレッド。

● トマス・マロリーによれば、父はロージアンとオークニーの王ロト、母はアーサーの異母姉モルゴース。兄弟にアグラヴェイン、ガヘリス、ガレス、モードレッドらがいる。アーサー王の甥であり、最も信頼する騎士でもある。

● 妻の名前はフロリー、ラグナルなど話によって違う。息子にフロレンス、ロヴェル、ガイングライン。マロリー『アーサー王の死』でフロレンスとロヴェルはアグラヴェイン、モードレッドらとともに王妃とランスロットの密会の場を抑えようとして、ランスロットの返り討ちにあう。ガイングラインはラグナルの息子。
外見 おそらく、スコットランド出身者らしく赤毛であろう。T・H・ホワイトの『永遠の王』では直情径行・体育会系のごつい兄ちゃんだったが、フランス騎士物語では浮名の絶えない彼のことだから、案外母方の血をひいた器量良しかもしれない。
性格 円卓の騎士多しといえども、これほど毀誉褒貶の激しい人も少ない。"黄金の舌のガウェイン"とその礼節を讃えられるかと思えば、マロリーには気性が激しく復讐心が強いと非難されてもいる。主にイギリスの物語では聖母マリアを崇拝する、処女を守る騎士とされるいっぽう、一部のフランスの物語では王の威を借りて好きに振舞う好色で粗暴な人物に描かれることもある。これはおそらく、元々イギリスの物語だったアーサー王伝説がフランスに伝わり、発展していくなかで、騎士道と宮廷恋愛の理想形であるランスロ(=ランスロット)や、聖杯を探求する敬虔なキリスト教徒ペルスヴァル(=パーシヴァル)・ガラハッドらの登場によって、相対的にガウェインの地位が低下したことによるのであろう。
フランスでもクレチヤン・ド・トロワは、成長する騎士ペルスヴァルと対比させて、地上の栄光を体現した、完成された騎士としてゴーヴァン(=ガウェイン)を配置している。・・・が、惚れっぽいのにはどうも、弁護の余地がないようである。
紋章 グリフィン。楯には"聖母マリアの星"つまり五芒星が描かれている。
特技 午前9時から正午まで、午後3時から日没までは力が倍になる。アーサーは愛する甥のために、トーナメントの開始時間を午前9時にしたという。
起源 ガウェインはすでに、ジェフリ・オブ・モンマス『ブリタニア王列伝』(AD1130〜1135頃成立)から、ワルガイヌスの名で、アーサーの甥として登場している。が、起源はそれよりも古く、ウェールズの英雄グワルフマイ(Gwalchmei="五月の鷹"の意)や、アイルランドの英雄クーハラン(Cuchulainn)が祖型とされる。
中世イギリス騎士物語の最高峰と讃えられる『ガウェイン卿と緑の騎士』(AD1370〜1390頃成立)の含む首切りゲームの主題は、アイルランドの叙事詩『ブリクリウの祝宴』をその源流に持つ。この古詩では、宮廷の宴会に現れた見知らぬ黒衣の騎士が宮廷の騎士たちに、首を順番に切りあうという奇妙な決闘を申し込む。黒衣の騎士は、まず先に自分の首を切り落とさせ、何もなかったように頭を拾い上げると、翌日自分が挑戦者の首をはねると告げて立ち去る。翌日まで踏みとどまった挑戦者はクーハランひとりであった。黒衣の騎士はクーハランの首を斧の背で打つにとどめ、彼の勇気を讃えるのである(充分痛いだろという突っ込みは不可)。そして『アーサー王と緑の騎士』においては、ガウェインがクーハランと同じ役割を担っている。
備考 ● 愛馬の名前はグリンガレット(Gringalet)。

● 初期の騎士物語においては、エクスカリバー(Excalibur)の所持者はガウェインであるとされている。

● 果物好き。特に梨と林檎が好物なのは有名。宿敵ペリノア一族のサー・ラモラックを殺したのをその従兄弟に恨まれ、グウィネヴィアの催した宴会で林檎に毒を仕込まれて暗殺されかけた。彼の代わりに毒林檎を喰って死んだ、心正しきパトリス卿の魂よ安らかなれ。

以下、私的駄文。

■トマス・マロリー『アーサー王の死』におけるガウェイン■

マロリーはイギリス人ですが、『アーサー王の死』を書くにあたって、御当地の騎士物語のほか、フランスで書かれたロマンスを逆輸入して下地にしています。したがって、フランスにおいては段々地位が低下していたガウェインは、どうも扱いがよろしくない、というのが定説のようです。

・・・そうかなあ。『アーサー王の死』のガウェインは充分格好良いと思うんだけど。
確かにしばしば非難めいた描き方はされているし、女に弱いのは相変わらずなんですが、マロリーの思惑はどうあれ素直にストーリーを追っていくと、個人的にはむしろ不当な非難が多いように思えてきます。

例えば、ラモラック卿殺害の件。
「立派な騎士を背後から殺した」と、ラモラック卿の母親やランスロットに手厳しく追及されていますが、ま、確かに背後からはまずかったですか。しかしそもそも、ラモラックにも落ち度がないとは言えません。敵の一族であろうが、相手に5人もでかい息子がいようが、恋愛は自由だと言い切られてしまえばそれまでですが、仇敵ロト王の元妃モルゴースと床をともにしているところに彼女の息子達に踏み込まれたとあっては、悲恋の人というより単なる間抜け感が拭えないです。武人ならもっと危機感を持てよ。サー・ラモラックといえばトリスタン、ランスロットと並ぶ円卓の騎士3強のひとりですが、一番目立った活躍がモルゴースとの情事とあっては、「立派な騎士だった」と連呼されてもさようですかという感じで。逆に家名を背負い、奔放すぎる母親を持って苦労する長男ガウェインに同情したくなります。

それからランスロットとの対立の件。
自分との不義が露見し、火刑台に連行される途中の王妃グウィネヴィアを助けるため、ランスロットは刑場に乗り込みますが、その際非武装で王妃に付き添っていたガウェインの弟ガヘリスとガレスを殺してしまいます。ガウェインは怒り狂って弟たちの復讐を誓い、アーサーが内心ランスロットとの和睦を望むようになっても許さず、反逆したモードレッドとの戦いで致命傷を負って死ぬ間際に初めて、ランスロットに王との和睦と帰参を請う・・・というのが親友との決裂のいきさつと結末です、が。

そりゃ怒るだろう。

実際のところ、事ここに至るまでガウェインは相当譲歩と我慢を重ねています。別の兄弟であるアグラヴェインや息子のフロレンス、ロヴェルらが王妃と密会するランスロットを捕らえる計画を立てた時は、理を説き情に訴えて止め、返り討ちにあっても「止めたのに聞かなかったのだから仕方ない」と悲しみながらもランスロットの今までの恩義を思って、恨みはしません。ガレスとガヘリスが殺されたと聞くまでは、ランスロットが王妃を救い出したと聞いて彼らの為に喜びを述べてさえいます。ランスロットに絶対の友情と信頼を置いていたればこそ、ガレス達の殺害を自分への許しがたい裏切りと感じたのでしょう。


結局、何故ガウェインの評価が低いかというと、彼を動かす倫理と価値観は、中世騎士道及びキリスト教より以前のものだから、なのではないかと思われます。
彼が復讐心を発揮するのは主に、血族が不当に侮辱や危害を加えられたと感じたとき、のようです。騎士道においても生まれの良さ、すなわち血統はたいへん重視されますが、ガウェインの血族に対する意識はむしろ、古代のケルトの戦士たちの自分の氏族に対する意識とより似ています。
また彼は聖母マリアを崇拝してますが、そもそも聖母信仰は、キリスト教定着の結果生じた、土着の女神信仰の変形です。死後、アーサーの夢に現れたガウェインは大勢の女性たちを引き連れており、「この方たちは生前、正当な言い分のある争いごとで自分が代理人となって闘って差し上げた貴婦人で、彼女らの祈りのお陰で私は王に忠告するために来ることを許された」と説明していますが、この女性たちは元来は、英雄の守護女神だったのではないでしょうか。

ガウェインは本当の意味では、キリスト教の神を信じてはいないのかもしれません。とすれば、彼が聖杯探求に失敗した意味も分かるような気がします。



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