■アーサー王伝説-Chronicle of Arthur |
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伝承に加わった時期リスト
【前提】
アーサー王伝説とは、何百年という時間をかけ、主にイングランドとフランスで多数の著者によって書き綴られてきた「作品群」のことです。
多数の著者がおのおのの好みに従って伝説を付け加えたり書き換えたりしてきたため、筋書きは採用する原典によって異なります。また、現在「円卓の騎士」として知られるメンバーも、もともとアーサー王伝説と関係ない伝説の主人公だったものが後から組み込まれた場合がほとんどです。
…というわけで、
各々のメンバーがいつ、どの作品からアーサーの仲間になったのかをリストアップするのが、本ページの目的となります。
【出発点】
アーサーの名前がはじめて歴史として記録に残されるのは1100年ごろに書かれたと見られる著者不明の「ウェールズ年代記」。そこには「カムランの戦いでアーサーとメドラウトが死亡した」と書かれている。つまりアーサー王と最も縁が深く、最も早くから関連づけられた登場人物は、他でもない、のちに相打ちとなる甥モルドレッドということになる。ただし、「ウェールズ年代記」の簡素な記録には二人が敵味方のどちらだったのかも、血縁者だったのかどうかも記録されていない。二人を敵同士かつ伯父と甥の関係にしたのは、ジェフリー・オブ・モンマスの「ブリタニア列王史」が最初である。
このメドラウトの例を基本に、以下、初期の方からアーサー王に付き従っている仲間たちを一覧化してみる。
作品年表についてはこちらも参照のこと。
関係づけられた年代 | 登場作品名 | 関係づけられた人物 | 来歴 |
1100年代 | ウェールズ年代記 | モルドレッド | カムランでアーサーとともに戦死したとされる のちに「アーサーを裏切った甥」という設定に変貌 |
1100年代 (マビノギオンとどっちが先か微妙) |
ブリタニア列王史 ※断片的な伝承をもとにほぼ創作で アーサー王伝説の骨子を創り上げた |
カイ | アーサーの宮廷で執事をしている |
ベディウェア | 献酌侍従 | ||
ガウェイン | アーサーの甥(妹の息子) | ||
イヴァン | 最後の戦い後も生き残り、自分の領土を治める | ||
ロト | アーサーの妹アンナと結婚、ガウェインとモルドレッドの父 | ||
グウィネヴィア | アーサーの妃、モルドレッドと不倫 | ||
マーリン | 森の賢者ムルジンをアーサー王伝説に取り込んだのは この作品が最初 |
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ボールス | ホエルスという名前で出てくる人物がボールスの原型とすれば ここが初出。アーサーの甥または従兄弟となっているが系譜不明 |
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1100年代 (ブリタニア列王史とどっちが先か微妙) |
マビノギオン ※口伝を文章化したのがこの時代。 元ネタはさらに年代を遡る可能性あり |
カイ | アーサーの宮廷で執事をしている |
ベディウェア | 献酌侍従 | ||
ガウェイン | アーサーの甥 | ||
グウィネヴィア | アーサーの妃、不倫話は特になし | ||
イヴァン | 泉の貴婦人や白い獣との冒険物語 もともと別の伝承だったのをアーサー王伝説にくっつけたようだ |
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パーシヴァル | 聖杯伝説の主人公 アーサーはあんまり関係ない 聖杯探求の物語をアーサー王伝説に取り込んだ最初の物語 |
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エーレク | 探求の旅の主人公 アーサーはあまり関係なく、もともと別の伝説だった可能性あり |
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1100年代半ば | マリー・ド・フランスの詩など もともとアイルランド伝承 |
トリスタン | トリスタンの悲恋物語ももともとアーサー王と関係なかったものが 伝説の一部として組み込まれていく |
1170年ごろ | ランスロまたは荷馬車の騎士 | ランスロット | ランスロット初登場。 グウィネヴィアの不倫相手がモルドレッドからランスロットに変わる |
主要人物でだいたいこんな感じ。あとのメンバーは「フランス流布本サイクル」と呼ばれる同人誌百花絢爛の時代に何処かの誰かが考案したのがそのまま採用されて現代に流通しているものと思われ。
流布本サイクルの中で水増しされてる仲間は数が多すぎて追いかけるのが大変です・・・・・。
【一言】
各所で不当にdisられまくっているケイ卿は実はアーサー王との付き合いが長い古株。
ちょっと短気だけど他の部下に比べたら全然普通だろっていうか常識人じゃん。なんだかんだで最後まで付き合ってくれるわけだし、もっと扱い良くてもいいと思う!
ベディウェアとガウェインも同じく付き合い長い。ランスロットなんて有閑マダムが「わたくし美形騎士と王妃の不倫物語が読んでみたいわ」ってリクエストしてお抱え作家に書かせて生まれたキャラなもんだから、そりゃ最初から忠誠なんか誓わねーし裏切るに決まってるがな。
円卓崩壊は、アーサー王の人望が無かったからというより、後世の人間が無茶な期待を寄せて各々別の伝説の主人公だった連中をムリくり円卓に突っ込んだせいだと思うんだ。ベンチャー企業の社長ばっかりで財閥作れって言われてるようなもんで、そら無理だ(笑) まあ…女あてがっとけば何とかなるトリスタントとか…天然だけど悪気のないパーシヴァルとかは… 後々の無茶な円卓メンツの中では御しやすいほうだと思うんだよね。