2005年3月9日
「川上貞奴邸
(かわかみさだやっこてい)
名古屋市東区
地図
撮影 MINOLTA DiMAGE7 UG

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日本の女優第一号である川上貞奴が、
大正時代、住んでいた邸宅を移転して
復元させた建物が今年の2月に完成した。
もうひと月経ったからそろそろ空いてるだろうと
行ってみたら、これが大盛況。
京都の観光地くらい混んでいて驚く。
外観はこんな感じ。
大正時代としてはかなり異彩を放っていたで
あろう、和洋折衷の建物だ。
けど、なんで名古屋の東区あたりに
住んでたんだろう。
こちらが正面玄関。
二葉町にあったことから、二葉館と呼ばれたそうで、
この建物も、正式名称は「文化のみち二葉館」
というようだ。
入館料は200円と良心的。
駐車場も30分までは無料。
30分あれば充分だろうと思ったら、
微妙に戻りきれず300円払うことに。
しまった。
予想以上に見所が多かった。
入り口入ってすぐのところ。
もちろん、靴は脱いでスリッパで上がる。
土足であがるほど西洋的ではない。
入ってすぐやたら人が多い。
人が少ないときと多いときでは
受ける印象がかなり違う気がする。
大広間も階段も満員御礼。
当然のようにおばさま、おばあさまが多い。
というかほとんど。
あとは、おじいさまたちと。
あまりカップルで来るようなところではないか。
そもそも川上貞奴自体知らないかもしれない。
まずは和室から。
けっこう広い。
落ち着いた雰囲気で、清潔感がある。
まだできてひと月だからきれいだけど、
自由にあがって歩けるだけに、
あれだけ毎日人が訪れると、
すぐに畳とか荒れてしまいそう。
調度類もなかなかいいものなのだろう。
着物や三味線は実際に使っていた
もののようだ。
ここは川上貞奴が夫の川上音二郎と
死別した後、電力王と呼ばれた
福沢桃介とともに暮らした屋敷で、
福沢桃介は福沢諭吉の婿養子なので、
貞奴はいわゆる愛人ということになる。
ただ、金はかかってるけど成金趣味ではない。
嫌みのない金持ちというか、質素なところは
意外と質素だったりする。
奥にある二畳の小部屋。
なんだかとても落ち着きそうな部屋だ。
ここで本を読んだり、手紙を書いたりしてた
のかもしれない。
蛇口が金色。
まさか金か?
いやいや、これは真鍮だろう。
こういうさりげないところに金をかけている
ところにやるなと思わせるものがある。
貞奴邸の移り変わりと復元の説明書き。
昭和26年まで貞奴はここに住んだ後、
所有者が代わり、その所有者が名古屋市に
寄付をして、市がいったん建物を解体した後、
この場所に当時の姿を復元した、
という経緯らしい。
13億円もかかったとか。
入館料200円では元を取るのに何年かかるか。
二階へ上がる螺旋状の階段。
これは豪華なつくりになっていた。
赤じゅうたんを敷いてあるだけでなく、
真鍮制の留め金で留めてある。
福沢桃介の書斎を再現してあるのだと思う。
かなり雑然としている。
文学青年風というのでもなく、
田舎の学校の教師風というのでもなく、
サラリーマン風でもない。
なんとなくとらえどころのない机周りに感じた。
やっぱり作り物だからだろうか。

と思ったら、どうやら作家城山三郎の書斎風景
らしい。これはかなり意外。
あまり文学者らしくないように感じた。
二階の狭い渡り廊下。
懐かしい感じがする。
昔の家はそういえばこういうふうに狭かった。
二階の壁の一部をあえてむき出しにしてある。
何重にも壁が塗られて作られてるのが
分かるように。
これは工事にも相当金がかかったに違いない。
当時も、現在も。
今どきの欠陥住宅とはかけ離れたつくりだ。
当時こんなコンセントがあったとは思えないけど、
これは愛嬌。
この金色カバー、うちにも欲しいぞ。
二葉館といえばステンドグラス、
といっていいほどこの館のシンボルのひとつ。
大正時代当時のこのあたりに、
こんなハイカラなものはなかっただろう。
別のステンドグラス。
明治時代になって入ってきたステンドグラスも、
大正時代ではまだ一般家庭では稀だった
んじゃないだろうか。
今でも本物のステンドグラスがある家
というのもそうないと思うけど。
川上貞奴パリ万博公演のときのポスターと、
そのときの着物。
マダム貞奴と呼ばれ、ポスターには、
「Sada Yacco」と書かれている。
貞奴関係の資料を展示してあるケースの前で
説明する女性ガイドと、それに耳を傾ける人たち。
私も写真を撮りつつ、紛れて少し聞いていた。
団体客のツアーガイドさんだろうか。
ここ専属のガイドはいないと思うけど。
写真や本などが展示されていた。
ふーん、なーるほどなぁ。
などとのんきに感心していたもんだから、
駐車場が間に合わなかったんだ。
部屋数は10くらいあるから、
30分で見ようとするとひと部屋3分以内
ということになる。
そうなるとけっこう慌ただしい。
ゆっくり全部回って写真を撮って、
45分くらいでちょうどいい感じ。
オマケ。
白壁町あたりの武家屋敷跡。
ここは名古屋城から近いところで、
かつての武家屋敷が並んでいたあたりになる。
街並み保存で、こういう黒塀だけは残してある。
門も少し。
けど、塀の中をのぞくと、
普通のマンションだったりする。


 けっこうよかった、川上貞奴邸。予想以上に。
 何回も行くようなところじゃないけど、あれなら評判が評判を呼んで、しばらくは活気を呈するだろうと思われる。
 一年くらい寝かせたら、のんびり見て回れるようになるかもしれない。
 週末はもっと大勢の人が訪れて、押すな、押すなになりそう。
 近くに住んでる人にちょっとオススメしたいスポットだ。

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