20世紀の残像。
もはや誰も取り外す意志を見せず、朽ちるに任せてある自動販売機。
これでいいのか、森永。
何を売っているのか、ジュースの缶も日焼けとサビでよく見えない。
「MORINAGA Drinks」や、「Sweet Kiss」などのロゴが見えるのみだ。ボタンの感じもひどく懐かしい。
時代的には自動販売機の初期だろう。私たちの世代が少年時代のものか、もっと古いかもしれない。昭和40年代くらいだろうか。
試しに100円を入れてみたい気もしたけど、ほぼ確実に飲み込まれるだろうからやめておいた。そのまま戻ってくればいいけど、そのへんの通り道も詰まってそうだ。
森永の自動販売機は今でもあるんだろうか? ほとんど自販でジュース類を買うことがなくなったので、全然分からない。
パックの牛乳なんかは飲むことがあるし、いつも飲んでる黒豆ココアも森永だけど。
昔でいうと、高校時代、紙パックの森永コーヒー牛乳「piknik」を飽きるほど飲んだ記憶がある。あの四角くて小さいパックのやつを、毎日のように購買で買っていた。
最近の森永の活躍ぶりを私は今ひとつ掴んでいないのだけど、たぶん森永もこの自販の存在を掴んではいないのだろう。電話で教えてあげたら回収に来るだろうか?
いやいや、そんな無粋なことをしちゃいけない。これは20世紀の遺物として長く後世に伝えなければ。
これをきっかけに、昭和の残像写真をもっと撮りたいと思うようになった。古ければ何でもいいといのではなくて、私が少年の頃、新しいものとして感銘を受けたものが時代を経て古びたものがいい。作られたレトロでも、保存された昭和でもなく、そのまま取り残されたもの。
自動販売機でいうと、昔流行った電子ルーレットで当たりが出るともう一本というタイプのものを見つけたい。あれは楽しいシステムだったのに、最近すっかり姿を消してしまった。
あと、ビンのコーラとかペプシで、自販に栓抜きが付いてるやつとか。ああいうのも絶滅はしてないと思う。
またひとつ、これで写真を撮る楽しみが増えた。
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