今日の夕方前、突然雨が降ってきた。
雨音に気づき、ベランダに出てみると、空は晴れているのに、かなり激しく雨が降っていた。
天気雨とは珍しい。
なんだか、見慣れたベランダからの街並みも、いつもと違う色合いをしていた。
遠くに見える名古屋駅のツインタワーも、普段は灰色に見えるのに、今日は妙に白っぽかった。
空に向かって生えた骨みたいに。
天気雨といえば「トラの婿入り」を思い出す。
いや、もちろん日本では子供の頃から「キツネの嫁入り」と教えられてきた。
それ以外に知らなかったし、考えたこともなかった。
それが、この前、韓国ドラマ「夏の香り」を観ていたら、天気雨はキツネの嫁入りかトラの婿入りかって話を主役の恋人たちがしていて、それ以来ちょっと気になっているのだ。
トラの婿入り?
初めて聞いたぞ。
韓国ではそうなのか?
と思って検索してみたら、「夏の香り」しか引っかかってこなかったところをみると、あのドラマのオリジナルなのだろうか。
少し気になる。
トラの婿入り……。
キツネが嫁入りするのがうれし泣きというのはなんとなく分からないでもないけど、トラが婿入りするのにうれし泣きというのはやや不自然かもしれない。
主夫の悲哀のようなものか?
それまで頭の中にまったくなかったことが何かのきっかけで引っかかって、それ以来ずっと引っかかり続けることがある。
たとえば、かつて好きだった子の好きな色が紫だったりオレンジだったりすると、それまで好きでも嫌いでもなかった色が気になったりするとか、自分の無意識の口癖を真似されて、それ以来その言い回しを避けるようになるとか、友達が言い間違えをしたものを見るたびにそのことを思い出すとか。
私はたぶん、この先もずっと天気雨に出会うたびに、トラの婿入りという言葉を思い出すことになるのだろう。
観たドラマのことは忘れてしまっても。
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