SANYO DSC-SX150にて撮影

2003年 10月13日(月)



 非凡と平凡の間で言葉が危うく揺れている。
 作詞とボーカルを担当している川嶋愛は間違いなく才能がある。非常に分かりやすい形でそれは現れているので誰にでも分かる。レコード会社が取り合ったというのも納得できる。
 ただ、その才能が絶対的なもので、聴く人間の人生の根幹にまで関われるかどうかとなると少し疑問な感じがする。言葉や世界の広がりと深みがあるようでない、ないようである、という微妙な部分でとどまっている。
 本人はそんなことまで望んでいないのかもしれないけど。
 若さは言い訳にはならない。才能というものは年齢と共に成長するものではないということは天才尾崎豊を見れば分かる。

 人は何故曲を作り、人前で歌を歌うのか?
 自分の中からこみ上げてくる思いと、人に何かを与えたいという願いが一つになったとき、歌は生まれるのだろう。
 才能の量が問題ではない。でも、結果として聴く人間により深い感動を与えた歌い手が勝ちなのだと私は思う。
 もちろん人によって趣味は違うし、歌に求めるものも違う。だから万人にとっての歌である必要はない。でも自分の歌を求め、必要とする人に多くの思いを与えらたら勝ちだし、与えられなければ負けなのだ。
 ヒットするかどうかなんてことはそれほど重要なことではない。

 IWiSH、あるいは川嶋愛はこの先どこまで行けるだろう?
 たとえば10年生き残れるだろうか?
 20年先はどうだろう?
 それはまったく分からない。
 現時点では、絶賛したい気持ちと危うさを感じる気持ちと、個人的には半々といったところだろうか。
 歌い方と声に関しては教えられてどうこうなるものではない天性の才能に恵まれている。
 歌詞と曲作りに関しては、もう一つ確信が持てない。
 単独で聴いているとすごくいいような気がするけど、ミスチルの桜井くんやスピッツのマサムネくんなどと比較するとやはり明らかに落ちる。言葉の多彩さという点でも、歌詞の密度という点でも、ドラマ作りという部分でも、シーンの描写力も。
 松任谷由実や中島みゆきにも遠く及ばない部分がある。
 ただ一つ確かなことは、長くトップであり続けるためにはラブソングだけでは駄目だということだ。
 好きだとか恋だとか愛だとか別れだとか、そんな単純なラブソングだけではいつか行き詰まり飽きられる。
 長く一線で活躍してるアーティストは例外なく多彩な曲を作っている。
 そのへんの危うさを宇多田ヒカルや倉木麻衣やZARDのような先例を見てるだけに感じないではない。

 アルバム『伝えたい言葉〜涙の落ちる場所〜』に関してはかなり出来はいいと思う。
 最近の新人(といっても本当の意味での新人ではないけれど)デビューアルバムとしては完成度は高い。
 ヒット曲とアルバム曲に極端な差がなく、平均的にいい曲に仕上がっている。
 ドラマ「14ヶ月」の挿入歌「ふたつ星」はドラマの時はそんなにいいと思わなかったけどアルバムで聴くととてもいい。今一番気に入っている。

 なにはともあれ、IWiSHにはこれからもいい曲、いいアルバムを作って欲しい。
 私としては小松未歩以来の大期待のアーティストの登場だから。


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