クイズと著作権

第4章 ネタ元の著作権


 本来は、「クイズと著作権」は前の第3章で終わらせるつもりだったが、読者の方から鋭いご意見をいただいたので、その点について新たに章を起こして論じていくこととしたい。よって、今後も何か突っ込みがあれば、随時書き足していくこととするので、終わり無き論考となるやも知れません。

 さて、その鋭いご意見とは次のようなものである。

 「新聞や雑誌も著作物である。よって著作物であるネタ元から抜き出してクイズを作ったものは二次的著作物となるのではないか」

 いつもの如く結論から申し上げれば、この場合は二次的著作物と解することには私は否定的である。

 確かに、ある著作物を翻案したりして別の著作物を創作すれば二次的著作物となる。例えば、ある小説を原作として漫画にした場合などが典型例である。しかし一方で、アイデアそのものや事実そのものは著作物ではないので、例えば「ペニシリンを発明したのはフレミングである」という事実は普遍の事実であって、このことを誰かが雑誌に書いたからと言っても、それからクイズを作った人が著作権侵害として訴えられるというものではない。と言うのも、ペニシリンを発明したのはフレミングである、というのはそれを雑誌に書いた人が創作したものではなく、普遍の事実だからである。新聞記事も雑誌記事も確かに著作物ではあるが、問題を作る時に参照するのは、あくまでその一部分であって、その一部分が事実の核心の部分であろうから、そこには記事を書いた人の個性は現れていない(=著作物ではない)と考えることができる。

 なぜに新聞記事・雑誌記事が単なる「事実の羅列」ではなく著作物となりえるかということを考えてみると、そこで取り上げている事実を著者の個性を伴って表現しているから、というのが理由だろう。その裏返しが訃報は事実の羅列(誰がいつどこでどんな理由で何歳で死んだ)であるというものだ。我々は、著作物たる新聞記事を通じて事実を知るということが言えるが、その著作物からと言うよりも、その中に含まれている事実からクイズ問題というものを創作していくわけだから、著作物から二次的著作物を創作している、とは言えないのでないだろうか。

 クイズとは事実を扱うものである。事実を扱わないクイズというのは、例えば「どう思いますか?」等が考えられるが、こういった問いかけは普通は「クイズ」とは言わない。未来はまだ「事実」ではないが、十分に確からしいことが判明したものは「事実」と見なすことによって出題に踏み切ることが出来る。例えば、2008年の夏のオリンピックが開催される都市は?という問題でまだ開催されていないのだから、何があるか分からない、その時までに地球が滅んでいるかも知れない、などと言い出せばその場からつまみ出されるだけである。

 ここで微妙なのは、例えば「三四郎」の名字は何?という問題で、確かに「小川」というのは事実でもあるが、夏目漱石の創作でもあるわけで、こういった場合は「引用」である、という理屈が通じるような気がする。

 さて、以上の論は、クイズ以外のものからクイズを作るという場合のこと。では、他人のクイズからクイズを作った場合はどうなるだろうか。例えば、「ダウンタウンは松本と浜田の二人。松本市は長野県、では浜田市は何県?」という問題から「ダウンタウンは松本と浜田の二人。浜田市は島根県、では松本市は?」という問題を作れば、これは著作権の侵害となる確率は高くなるように思う。つまり、元ネタであるクイズの問題の個性が、後の問題の作成に依拠したと十分に考えられるからである。しかも依拠したのは、例えば松本市が長野県に在るという事実だけでなく、ダウンタウンの名字と浜田市・松本市を創作的に結びつけている点であることからも、十分に二次的著作物性が首肯されよう。

 でまあ、結局は、HPでも述べていはいることだが、個別具体的に問題ごとに判断していくべきこと、であるということだわな(青木幹雄の口調で)。

 さて、いよいよ次の第5章(準備中)では、更に読者の方からの御意見を紹介し、遂にこの論考の正体に迫ります!


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