はじめに

1.当ホームページ作成にあたり

 インターネットにも不慣れでホームページの作成など考えてもいなかった私が新しいパソコン購入と、ホームページをいくつか開設している友人の存在でやってみようと思いたちました。私は建築設計を職業にしていること、また、鉄筋コンクリート造の自宅が2000年7月に完成?したのに伴い、建て主兼設計士である私が何を考え、我が家に何を求めたかをホームページに書き記せば、これから家を造ろう人々の多少の参考になればと思います。また、こんな設計士もいるのかと知ってもらえればいいと考えました。
 はじめに、慣れない手つきで“建築設計”でホームページを検索してみました。建築家らしくセンスのよいまた立派なページが多いように思えます。作品もすばらしい写真でした。また、最近テレビでも数々の住宅が紹介され、住宅雑誌でもさまざまなアイデアが盛り込まれ、敷地・立地条件・家族構成等よく考えられたプランや作品を目にすることができます。予算が無いのに建物の理想が余りにも高いので我が家を他の有能な設計士に依頼する手もありそうなんて考えもしましたが、わがままな建主に対しては、頑固な設計士しかいない。と一人ニ役を演じることとなりました。


2.頭の中での格闘

 わがまま建て主であり、設計士である私は我が家のプランの作成にあたり色々なアイデアと今までの経験をふまえ考えましたが、なかなかまとまりませんでした。プランがまとまってもコストがかかりそう。マイホームを夢見る人に建築設計と言う立場で接してきた私が自邸の設計にあたり、一生で一回限りの大事業。建主としての自分と、その要求にパンクしそうな設計士、格闘の上自分で出した結論は、既成概念を捨て、私の家、私の家族の家の追求を最優先とし、予算のことは、後で一級建築士水村進に考えてもらうことにしました。


3.建て主.としての要求 

  1. リビングは家族の集まる場であり十分なスペ−スをとること。
  2. 両親が泊まれる和室を設け、冬コタツにて団欒がとれること。
  3. 対面キッチンにて家事をしながら団欒に参加できること。
  4. 3人の子供の成長に対応できる個室を設けることと、両親の同居に対応できる個室も考えること。
  5. 車は2台置けること。
  6. 奥さんは草花が好きで、種から苗を作り、鑑賞できる場所の提供。
  7. 洗面所は広く十分なスペ-スがあること。
  8. 浴室乾燥機、トイレ2箇所、洗面2箇所、高断熱、高気密、高耐震
  9. 予算は公庫融資プラス親より借金、自己資金でまかない建築費を出来る限り少なくし、自分の手間も含め坪単価50万以下に押さえること。
  10. 追、建て主の職業を考え、品があり、夢のある住宅であること。

4.設計士としての努力

  1. 土地は47坪、第1種低層地域、建蔽率50%、容積率80%、の条件で設計で鉄筋コンクリート造地下1階地上2階屋上付きで条件をクリアー出来た。
  2. 公庫融資対象物件で高耐久、省エネルギー仕様住宅を満足することが出来た。
  3. 頭と手と足を使い努力したが、鉄筋コンクリート造、地下あり、延べ床面積52.5坪、坪単価50万円は不可能であった。建設業者に2480万、セルフビルド及び支給材料分100万、設計監理料(15%)を含めて完成、既存解体費用を除くと坪単価56万(消費税除く)以下となった。努力の末の結果だった。しかたない。
  4. 品は個々の価値観で分からないが、シンプルであり、夢がある住宅と自己満足している。

5.どこがローコストなのか

 実は一番書かなくてはいけない項目なのですが、大まかに言うと住宅としての機能性能を落とさず職人さんの手間を省くことを第一優先とし、何が必要で何がいらないか考え、設計することです。非常に抽象的ですが、そこには、哲学と、技術と、アイデアが必要なのです。製造業も同じだと思います。工夫次第で建材部品は標準品でも、外観、空間は特注品になるのです。多くの職人さんとの創意工夫で達成するものなのです。実はいろいろと詳細を書きたいのですが、コストとは建築仕様だけではなく建設地の条件も大きく左右する。地下工事では、地下水位の条件、残土処分の仕方、道路付け、生コンクリートの場所による価格差、建て主独自で出来るセルフビルド工事(カーテンレール、手すりの取り付け等)等で違い、コストを書いて誤解を生じてはいけないので、書くのをためらいましたが、雑誌等でも価格を載せてあるのが多いので大まかに載せることにしました。


6.建物の総評

 結果として、10%を超えての予算オーバーは、設計、監理を業としている者としてはしてはならないことです。実は、このような予算オーバーが出るということは、一般的には無いことです。図面があり、仕様書があり決まっての着工のはずですから。しかし、当初の金額は、鉄筋コンクリート造の住宅では、常識の金額外の価格なのです。契約の項目に追加金が生じた場合は、原価に経費を掛けて払うという項目を設けて建設会社に契約をしてもらいました。お互いの信頼関係の上での話で、完成するまで、金額がわからない、まさにひやひやの実験住宅でした。実際に建物を見ないと、また住んでみないとローコストで成功したのかどうかは分かりません。建て主としては、御世辞だと思いますが、友人からも驚かれますし、夢がある家と言われるので、満足しています。設計士としては、あまりの予算の無さに非常に苦労したのですが、建設会社の監督および多くの職人の方々の協力を得て、創意工夫したので、やりがいのある建物でした。